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投稿日: 弁護士 沼口 格

インターネット上で食品を販売する際に必要な許可と法律上の注意点

昨今、新型コロナウイルス感染拡大による影響を受け、自宅で食事をする頻度が増えたことから、インターネット上で食品を販売する企業も増加しています。インターネットで食品販売を開始するにあたり、どのような許可が必要で、どのような法律に注意が必要なのか理解したいという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、食品衛生法に基づく食品販売に必要な許可、食品表示法に基づく栄養成分表示や期限表示などについて解説します。

食品衛生法とは

まずは、食品販売を行うために理解しておくべき食品衛生法の概要と留意点について説明します。

1.食品衛生法とは

食品衛生法は、飲食により生ずる危害の発生を防止し、食品の安全性を確保するために、食品と添加物などの基準や表示等を定めた法律です。同法第1条には、同法の目的として、以下のように定められています。

食品の安全性の確保のために公衆衛生の見地から必要な規制その他の措置を講ずることにより、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、もつて国民の健康の保護を図ること

食品衛生法の規制対象は、医薬品や医薬部外品を除く、営業目的で販売・使用される全ての飲食物です。

2.食品用の容器包装や器具も注意が必要

食品衛生法は2018年に改正され、食品用の容器包装や器具について、安全性が評価された物質のみ使用可能とするポジティブリスト制度が導入されました。この改正は、2020年6月1日から施行されています。

この改正に伴い、安全性が確保されていない原材料を使用した容器包装等を用いることは禁止されました。容器包装を用いた食品を販売する際は、必ず厚生労働省が公開している食品用器具・容器包装のポジティブリストを確認しましょう。

3.食品衛生法違反

食品衛生法違反となる主なケースとして、以下のような場合が挙げられます。

  • 同法第6条から同法第10条等で販売を禁止されている食品を販売した場合
  • 食品及び食品添加物の基準や規格に違反した場合

違反が発覚した場合、まず各都道府県より口頭もしくは書面にて、改善指導が行われます。その後も改善がみられない場合、営業停止処分等の行政処分が言い渡されます。
行政処分に従わずに営業を続けた場合、3年以下の懲役又は300万以下の罰金が課されます(同法第81条)。

食品販売に必要な許可と資格

食品販売を開始する際に必要となる食品衛生法に基づく許可と資格について説明します。

1.食品衛生法に基づく営業許可

食品衛生法には、営業許可を受ける必要がある業種として、飲食店営業、菓子製造業、そうざい製造業、清涼飲料水製造業等、特定の業種が要許可業種として定められています。2018年の改正により、食品の製造、加工、調理、販売等を行なう全ての事業者を対象として、HACCPに基づいた衛生管理を求めることになりました。HACCPとは、国際的に認められている衛生管理手法のことです。HACCPの導入に伴い、2021年6月1日より、要許可業種以外の業種も、原則として管轄の保健所への届け出が必要となりました。行政が全ての食品事業者を把握して、指導していく必要があるからです。

2.食品衛生責任者

食品販売を開始するにあたり、食品衛生責任者の資格が必要となります。
食品衛生責任者とは、食品の製造・販売、飲食店で食品に関する事業運営を行うための資格です。食品衛生責任者は、取り扱う食品や施設の衛生管理において、中心的な役割を担います。
営業許可施設ごとに食品衛生責任者の配置が義務付けられており、営業許可の更新時には、実務講習を受講することが求められます。

3.食品衛生管理者

乳製品や食肉製品、食用油又は添加物などの製造や加工を行う営業施設には、食品衛生管理者を配置する必要があります。食品衛生管理者は食品衛生責任者とは異なり、食品衛生法第48条の規定により、食品衛生法施行令第13条に示す食品を製造又は加工する事業施設ごとに配置しなければいけない国家資格者です。
この資格は厚生労働省が管轄するものであり、更新は不要ですが、法令の変更などを随時確認する責任があるため、注意が必要です。

食品表示法に基づく栄養成分表示

食品売買する際、容器包装に入れられた加工食品には栄養成分表示が義務付けられています。食品表示法と栄養成分表示について説明します。

1.食品表示法について

食品の表示について一般的なルールを定めている法律として、食品衛生法、JAS法、健康増進法の三法があります。以前は、目的の異なる三法それぞれに表示のルールが定められていたため、制度が複雑でわかりにくいことが問題点として指摘されていました。そこで、食品の表示に関する規定を統合して包括的かつ一元的な食品表示制度とするため、食品表示法が制定されました。

食品表示法の目的は、販売用の食品に関する表示について、基準の策定その他の必要な事項を定めることにより、その適正を確保し、もって一般消費者の利益の増進を図るとともに、食品衛生法、JAS法、健康増進法とあいまって国民の健康の保護及び増進並びに食品の生産及び流通の円滑化並びに消費者の需要に即した食品の生産の振興に寄与することにあります(同法第1条)。

2.栄養成分表示とは

栄養成分表示とは、食品表示法に基づき容器包装に入れられた加工食品に、熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウム(食塩相当量で表示)の5つの項目を表示することです。これら5つの項目は、生命の維持に不可欠であるとともに、糖尿病や高血圧など日本人の主要な生活習慣病と深い関係があるといわれています。そのため、栄養成分表示は、健康維持のために不可欠な情報源であるといえます。2020年4月1日から、新しい食品表示制度が完全施行となり、包装容器に入れられた一般加工食品及び添加物に対して栄養成分表示が義務付けられました
具体的な表示の方法やルールについては、消費者庁の公式サイトをご確認下さい。

3.食品表示法違反

食品表示法違反の典型的な例としては、原産地または原産国・内容量・名称の誤表記または欠落がある場合などがあります。違反が発覚した場合、消費者庁より改善指示及び指導が行われます。違反した者に対しては、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金が科されるという罰則規定も設けられています(食品表示法第17条)。また、消費者利益の保護を目的とし、違反事実が公表される場合もあります。
ただし、消費者庁による改善指示や指導に速やかに従うことにより、罰則や公表の対象となることを回避できる可能性はあります。

食品表示法に基づく食品の期限表示

食品売買する際、全ての加工食品には期限表示が義務付けられています。食品表示法に基づく食品の期限表示について説明します。

1.消費期限と賞味期限

全ての加工食品には、一部の商品を除き、賞味期限か消費期限のどちらかを必ず表示する必要があります。

①消費期限とは

消費期限とは、規定の方法で保存した食品が、腐敗や変敗などの品質の劣化に伴い、安全性に欠けるおそれがないと認められた期限を年月日により表示したものです。
開封せずに規定の方法で保存してある状態であれば、食品衛生上に問題がないと認められたものなので、消費期限を過ぎた食品は食べないように廃棄などする必要があります。
一般的に、調理済の食品、生菓子、食肉など、急速に品質が劣化する食品については、消費期限を表示します。

②賞味期限とは

賞味期限とは、規定の方法で保存した食品に望まれる全ての品質が十分保たれると認められた期限を年月日により表示したものです。賞味期限が過ぎた食品であっても品質が保たれている場合はあり、賞味期限が過ぎたからといって、必ずしもその食品を食べると安全性に問題があるというわけではありません。
一般的に、スナック菓子、缶詰、即席麺などの比較的穏やかに品質が劣化していく食品については、賞味期限を表示します。

2.期限切れの食品を販売するのは違法?

賞味期限や消費期限が過ぎた食品を販売することは、食品表示法及び食品衛生法では特に禁止されていません。したがって、賞味期限や消費期限を過ぎても、食品の安全性や衛生上の問題がなければ販売することは可能です。
ただし、賞味期限や消費期限を過ぎた食品は、品質が劣化している可能性があり、「人の健康を損なうおそれのあるもの」という法律上の禁止事項に抵触する可能性があるため注意が必要です(食品衛生法第6条)。消費期限を過ぎた食品については特に注意が必要です。

食品の種類別の必要な許可や届け出

実際にインターネットで食品販売を始めるにあたり、必要となる許可、資格、届出について、商品の種類別に説明します。

1.一般的な食品

調理済の食品、食肉、乳製品などの生鮮食品等は、食品衛生法に基づく営業許可と食品衛生責任者の資格が必要となります。缶詰、スナック菓子等の、パッケージ済みの加工品類については、許可や資格が不要なものもあります。

2.農作物

インターネットで農作物を販売する場合は、食品衛生法に基づく営業許可や資格は基本的には不要です。ただし、農作物をジャムなどの加工品として販売する場合は、許可や届出が必要となることがあります。加工品の種類や管轄の保健所によって異なるため、事前に管轄の保健所に問い合せておくとよいでしょう。

3.サプリメントや健康食品

サプリメントや健康食品については、パッケージ済みの加工品類であれば、食品衛生法に基づく営業許可や資格は必要ありません。ただし、健康食品を自宅で製造する場合は、食品衛生責任者の資格が必要となります。
また、サプリメントや健康食品を販売する際は、健康増進法、医薬品医療機器等法、景品表示法、特定商取引法など、複数の法律に注意する必要があります。注意が必要な点は、販売する健康食品の種類などによって異なるため、事前に管轄の保健所や各都道府県の薬務課で相談することをおすすめします。

4.酒類

酒類を販売する場合は、アルコール度数や加工方法によって必要な許可や資格が異なります。アルコール度数1以上の酒類やワインが入ったボトルを加工して販売する場合、みりんを取り扱う場合などは、管轄の税務署で、酒類の販売業免許を取得する必要があります。ブランデーやウイスキーなどを使用した菓子類については、酒類の販売業免許が不要な場合もあります。

5.輸入品

輸入した食品や酒類を販売する場合、日本と外国では、使用が認められている添加物等の種類や基準値が異なるという点に注意が必要です。海外では広く販売されていても、日本への輸入は禁止されている食品もあります。
また、国内で販売するために海外から食品を輸入する際は、検疫所への輸入の届出が必要となります。

まとめ

今回は、食品衛生法に基づく食品販売に必要な許可、食品表示法に基づく栄養成分表示や期限表示などについて解説しました。

食品を販売する際は、消費者の安全を確実に守るためにも法規制を遵守することが大切です。必要な許可や法規制について不明点や曖昧な点がある場合は、独自で判断するのではなく、管轄の保健所や法律の専門家に相談しましょう。

東京スタートアップ法律事務所では、豊富な企業法務の経験を持つ弁護士が、新しいビジネスに取り組む企業を積極的にサポートしています。インターネット上で食品販売を開始する際に必要な許可や注意点等に関する相談にも応じておりますので、お気軽にご相談いただければと思います。

弁護士沼口 格 第二東京弁護士会
大学卒業後、特別養護老人ホームにて非常勤・一般職員として勤務した後、司法試験を志し法科大学院に入学し司法試験合格後弁護士となりました。 弁護士登録以降は債務整理、離婚、相続、成年後見、交通事故、残業代請求、建物明渡、賃料増減額請求、債権回収、刑事事件等個人のお客様から法人のお客様まで幅広い案件を取り扱ってまいりました。