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更新日: 投稿日: 弁護士 中村 望

取引先からの入金が遅延した際のリスクと対処法

新型コロナウイルス感染症の影響が長引く中、取引先の資金繰りが悪化した等の理由により、売掛金が回収できないという問題に直面する企業も増えているのではないでしょうか。

取引先の財務状況が悪化して支払いが遅れている場合、倒産の可能性も視野に入れて、迅速な対応が取れるよう事前に準備しておくことが大切です。

今回は、取引先からの入金遅延の原因とリスク、取引先からの入金遅延が発生した場合の対応手順、取引先の入金遅延によるリスク回避策などについて解説します。

【解説動画】TSL代表弁護士、中川が取引先からの入金遅延!対処法とリスク回避策について解説

入金遅延のリスクとは

まずは、取引先からの入金遅延が発生した場合のリスクと入金が遅延する原因について説明します。

1.入金遅延とは

当月末締め・翌月末払いなど、一定の期間内の取引金額を後日まとめて精算する取引のことを掛取引といいます。企業間の取引では、商品やサービス等の受渡しの度に決済するのではなく、企業間の信頼に基づき、掛取引が用いられることが一般的です。
掛取引では、以下の債権と債務が発生します。

  • 売掛金:商品やサービスの販売代金で、商品等を提供する側が請求できる債権
  • 買掛金:商品やサービスの販売代金で、商品等の提供を受ける側が支払う債務

未回収分の売掛金が支払い期日を過ぎても支払われないと、入金遅延の状態となります。

2.入金遅延のリスク

①売掛金管理業務が滞る

取引先からの売掛金の入金が遅延すると、取引先への入金督促や回収業務が発生して、経理担当者に負担がかかります。時期によっては、会計監査や確定申告などの法的に期限がある業務が滞るおそれもあります。

②財務状況悪化のリスク

主要な取引先からの売掛金が回収できないと、キャッシュフローが滞り、財務状況が悪化するおそれもあります。その結果、企業の成長戦略に必要な投資ができなくなり、ビジネスチャンスを逃す可能性もあります。
また、主要な取引先が倒産して売掛金が回収できなかった場合、連鎖倒産の危機に追い込まれるという最悪の事態に陥る可能性も否定できません。

取引先からの入金遅延の原因

取引先からの入金が遅延した際、まずは原因を把握することが大切です。典型的な原因に
ついて説明します。

1.事務処理上のミスによる遅延

自社の経理担当者による事務処理上のケアレスミスによる請求漏れや、営業が経理に請求書を渡すのを忘れていたなど、社内での事務処理の不備が原因で入金遅延が発生する場合があります。また、取引先の経理担当者による支払業務に不備がある可能性もあります。
まずは社内で事務処理の不備がなかったかを確認し、不備がなかった場合は取引先の担当者に連絡して入金遅延の理由について確認するとよいでしょう。

2.支払い期日の認識違いによる遅延

支払いサイト(取引代金の締め日か支払日までの期間)が記載されている契約書を締結している場合、その支払いサイトに従って支払いが行われるはずです。しかし、契約書を締結していない場合、双方の支払期日の認識が違っている可能性も考えられます。
双方の認識違いを防ぐためには、支払い期日をメールや書面等、確認できる形で残しておくことが大切です。

3.資金不足による遅延

事務処理上のケアレスミスや支払い期日の認識違いの場合、取引先の担当者に連絡することにより支払いをしてもらい、解決する可能性が高いです。しかし、取引先の資金繰りの悪化が原因で支払いが滞っている場合は、支払いをしてもらえない可能性もあります。この場合、取引先が倒産する可能性も否定できないため、早急に対応を検討する必要があります。まずは、取引先の現在の営業状況や、倒産手続を申し立てているかどうか等を確認し、できる限り早い段階で適切な対応を行うことが大切です。

取引先からの入金遅延が発生した場合の対応手順

取引先からの入金遅延が発生した際、とのように対応するべきなのでしょうか。具体的な対応の手順について説明します。

1.遅延の理由を確認

取引先から入金遅延が発覚した際、最初に行うべきことは入金遅延の理由を確認することです。前述した通り、社内での事務処理のミスなどにより入金遅延が発生している可能性もあるので、まずは社内での請求処理等に不備がないかを確認しましょう。
社内での事務処理に不備がないことが確認できたら、取引先の担当者に連絡して、支払期日までに入金が確認できなかった旨を伝え、入金が遅れた理由を確認して下さい。その際、いつまでに支払いをしてもらえるかを確認し、新たな支払予定日を設定することが大切です。

2.新たな支払予定日に入金を確認

新たな支払予定日を設定した場合、支払予定日に入金されているか必ず確認しましょう。取引先の担当者が指定した支払予定日を過ぎても入金がない場合は、再度、連絡して、遅延の理由と支払予定日を確認しましょう。

  1. 3.法的手段の検討

何度連絡しても入金されない場合は、取引先の財務状況が悪化していて支払いができない状況に陥っている可能性もあるため、できる限り早めに売掛金回収に向けた適切な法的手段を検討することが大切です。
売掛金の回収の流れの一例として、次のような手順で行うことがあります。(事案に応じて適切な方法をとります。)

  1. 内容証明郵便を送付
  2. 仮差押えによる保全
  3. 支払督促

売掛金回収のための法的手段についてはこちらの記事にまとめていますので、詳しく知りたい方は参考にしていただければと思います。

取引先の入金遅延によるリスク回避策

取引先の資金繰りが悪化して倒産に追い込まれた場合、売掛金を全額回収することは難しいケースも少なくありません。そのため、取引先の入金遅延によるリスクを最低限に抑えるための対策を講じることが大切です。具体的にどのような対策が有効なのか説明します。

1.契約書の見直し

取引先の資金繰りの悪化が原因で入金遅延が発生した場合、将来支払われる予定の売掛金の支払い期限が来るまで請求できないと、売掛金を回収できないリスクが高くなります。そのような事態を回避し、速やかな売掛金回収を実現するためには、契約書に、期限の利益喪失条項を規定することが大切です。

期限の利益とは、簡単に言うと、返済期限が到来するまでは支払いをしなくてもよいということに伴う債務者側の利益のことをいいます。期限の利益喪失条項とは、一定の事由が起きた際に、期限の利益を主張できなくなる旨を規定した条項のことです。

期限の利益喪失条項を規定しておくことにより、取引先の財務状況が悪化して倒産の可能性があるなどの場合に、支払期限が到来していない売掛金についても迅速に回収に向けた措置をとることが可能になります。

2.与信管理

与信管理とは、売掛金回収不能のリスクを回避するために、新規の取引先との取引を開始する前に支払い能力の有無を分析することをいいます。分析の手法は、以下の3つに大別されます。

①定量分析

定量分析は、企業の決算書を確認して、財務分析を行う手法です。分析の資料としては、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書などがあります。定量分析を行うためには、専門知識が求められるため、専門の調査会社に依頼して行うことが多いです。

②定性分析

定性分析は、経営の方針、離職率、企業内の状況など、決算書以外の情報を元にした分析のことです。定量分析を補うことを目的として用いられます。

③商流分析

商流分析は、支払いまでの期間、支払方法、商品の納品方法など、取引全体の流れに問題はないか、業界の慣習に沿っているか等の分析のことです。

取引先が中小企業の場合、公表されている情報が少なく、情報が集めにくいため、与信管理に必要な分析が難しい場合も多いです。

3.売掛保証サービス利用を検討

与信管理が十分にできていないために売掛金回収に関するリスクを抱えている場合、売掛保証サービスの利用を検討してもよいでしょう。

売掛保証サービスとは、取引先の倒産等により売掛金が回収できない場合に、保証会社が売掛金の支払いを保証するサービスです。売掛保証サービスを利用することにより、確実に売掛金を回収できるため、売掛金の回収不能によるリスクを回避することが可能になります。売掛保証サービスを利用するためには毎月のコストが発生しますが、売掛金の督促や回収、与信管理等に費やす時間も削減できるため、人件費削減や業務の効率化にもつながります。
売掛保証サービスを利用する際には、事前に保証会社による取引先に対する審査があります。新規取引先と取引をするかの判断をする際、その審査結果を参考にしている企業もあるようです。

4.ファクタリングサービス利用を検討

売掛金の未回収により資金繰りが悪化している場合、ファクタリングサービスの利用を検討してもよいでしょう。

ファクタリングとは、企業が保有している売掛金等の債権を期日前に買い取るサービスのことです。将来的に得られる利益を確実に現金化することが可能なので、資金調達手段の一つとして利用する企業も増えています。

ただし、ファクタリング業者を装って、貸金業登録を受けていない悪徳業者がファクタリングサービスを提供している事例も少なからず報告されているので、利用する際は十分注意して下さい。

まとめ

今回は、取引先からの入金遅延の原因とリスク、取引先からの入金遅延が発生した場合の対応手順、取引先の入金遅延によるリスク回避策などについて解説しました。

取引先からの入金が遅延した際は、理由の確認、内容証明の送付、法的手段の検討等の順で速やかに対処することが大切です。倒産の可能性がある場合は、確実かつ迅速に売掛金を回収するために債権回収に精通した弁護士に相談することをおすすめします。

東京スタートアップ法律事務所では、豊富な企業法務の経験を持つ弁護士が、取引先の倒産時の売掛金の回収や取引先の倒産に備えたリスクマネジメント等のサポートを行っております。お電話やオンライン会議システム等での相談にも応じておりますので、お気軽にご連絡いただければと思います。

弁護士中村 望 東京弁護士会
現在弁護士数が増え続けている中で、問題解決のクオリティが非常に重要。依頼者の方からの連絡に迅速に対応したり、何でも気軽に相談できる雰囲気づくりをしたりすることで、依頼者の方との信頼関係を築き、依頼者の方の希望に沿った問題解決をできるように心がけている。