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投稿日: 更新日: 弁護士 後藤 亜由夢

整理解雇の手順|解雇要件や退職金手当の支払いなど中小 企業が注意すべき点を解説

2020年の新型コロナウィルス蔓延の影響により、資金繰りに苦しむ企業が増えています。実際、新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けて倒産した企業が、2020年2月の一件目を皮切りに、11月には全国で700件に達したと報道されました。このような状況において、従業員を継続して雇用し続けることが困難な状況に陥り、やむを得ず整理解雇を検討する企業も多いのではないでしょうか。
しかし、整理解雇をする際、従業員も会社の状況を理解してくれるはずだと考えていると、後々トラブルに発展する可能性があります。

今回は、整理解雇の概要、リストラとの違い、整理解雇が法律上認められる条件、退職金の支払いの必要性、従業員を整理解雇する際の手順や注意点などについて解説します。

整理解雇とは

整理解雇という言葉の意味について漠然と理解しているけれど、他の解雇との違いや、いわゆるリストラ等との違いがよくわからないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。まずは整理解雇の意味など、基礎的な内容について説明します。

1.解雇の種類

解雇は、以下の3つの種類に大別されます。

  • 普通解雇:従業員が労働契約に違反したことなどを理由として、会社が労働契約を解消する解雇
  • 懲戒解雇:従業員が重大な就業規則違反や秩序違反をしたことを理由に、懲罰として労働契約を解消する解雇
  • 整理解雇:会社が経営不振に陥った際に、人員削減のために会社都合で行う解雇

整理解雇は、一人だけではなく複数の従業員が同時に解雇される場合が多い解雇の類型です。また、普通解雇・懲戒解雇は、従業員側に解雇される理由があるのに対し、整理解雇は従業員に非がないのに会社都合で解雇される点が大きく異なります。非がない従業員を会社都合で辞めさせることは、従業員の生活や将来に大きな影響を及ぼす可能性もあります。それだけに、整理解雇をする際には厳しい条件があり、条件を満たさない整理解雇は解雇権の濫用や不当解雇として問題になります。

また、従業員を解雇する際は、各解雇の要件を満たした上で、30日以上前に解雇を予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければならないと定められています(労働基準法第20条)。整理解雇の場合も、この解雇予告の規定に従わなければいけません。

2.いわゆるリストラの違い

整理解雇とリストラという用語は、同じような意味で用いられることもありますが、厳密に言うと全く同じ意味ではありません。
リストラは、事業の再構築(リストラクチャリング:Restructuring)のことをいい、その再構築の手段として、経費削減、不採算部門の縮小整理、整理解雇等が行われます。つまり、整理解雇はリストラの手段の一つということになります。

正社員をリストラする際に良く用いられる方法として、希望退職者の募集、退職勧奨、整理解雇の3つが挙げられます。

希望退職者の募集は、退職金増額などの好条件を設けて社内で退職を希望する従業員を募集し、応募した従業員と会社との合意によって雇用契約関係を終了させるものです。早期退職制度などの名称で実施されることもあります。大企業ではリストラを行う際、最初に希望退職者の募集を実施することが多い傾向にあります。なぜなら、従業員の申し出による退職という形をとるため、不当解雇等が問題になる、社会的な非難を受ける等のリスクが少ないというメリットがあるからです。

一方で、希望退職者の募集は、一般的に退職金の割り増しなどコストがかかるため、中小企業では実施することが難しいことも多いです。そのため、中小企業がリストラを行う際は、退職勧奨や整理解雇から実施するケースが少なくありません。退職勧奨は、会社が従業員に退職を勧め従業員がこれに応じて雇用契約を終了させるもの、整理解雇は従業員の同意なく会社から一方的に雇用契約を終了させる手段です。

希望退職者の募集、退職勧奨、整理解雇とより従業員の不利益が大きい手続に移行するに従い、法的リスクも高まります。違法な整理解雇と判断されると、損害賠償などにより会社の負担が増え、社会的非難を受ける可能性も高まるので、リストラの手段として整理解雇を選択する際は、十分な検討と適切な対応を行うための準備が必要です。

整理解雇が認められる4要素とは

整理解雇は、会社の都合により非のない従業員を一方的に解雇することから、厳しい条件が課せられています。整理解雇が認められるための要素について説明します。

1.人員削減の必要性

整理解雇が認められるためには、人員削減が経営上必要であると認められる必要があります。

もっとも、当該要素は、会社がもう倒産寸前でなければならない、というわけではありません。例えば、赤字経営が続いている、あるいは赤字になるおそれが極めて高いなど、経営が危機的状況であることを客観的に証明できれば、会社の存続が厳しい場合に限らず認められる可能性はあります。いずれにせよ、当該要素は会社の経営判断が尊重される方向で判断される場合が多いです。

2.解雇回避の努力を尽くしたこと

整理解雇を行う前に解雇を回避するための努力を尽くすことも、整理解雇が認められる要件の一つです。当該要素を満たすためには、解雇を回避するために考えられる対策を尽くしても整理解雇が避けられないと判断される程度の努力が必要です。具体的な努力の内容として、以下のような事が挙げられます。

  • 役員報酬を減額する
  • 新規採用を停止する
  • 希望退職者を募集する
  • 配転や出向をさせる

いずれにせよ、解雇を回避するための努力をしないまま整理解雇を行った場合、不当解雇と判断されやすいので注意が必要です。

3.解雇する従業員の選定の合理性

整理解雇の際は、解雇する従業員を公平に選ぶ必要があります。そのためには、解雇する従業員を選定するために客観的な基準を設けることが求められます。例えば、以下のような基準は公平で合理性があると認められやすく、過去にこれらの基準を適法とした裁判例もあります。

  • 成績や顧客満足度など業務成果
  • 欠勤や遅刻の回数など勤務態度
  • 扶養家族の有無など生活への影響

客観的な選定基準を設けずに整理解雇をした場合、裁判で不当解雇にあたると判断されたケースは少なくありません。また、客観的な基準であっても、年齢を選定基準とすることは合理性に欠けると判断されるおそれがあるという点は認識しておきましょう。

4.適正な手続き

整理解雇を行う際は、従業員に対して十分に説明し、可能な限り納得を得られるように手続きを進めることが必要です。

具体的には、決算資料を示すなどして会社の経営状況を伝え、整理解雇の必要性を説明することや、解雇の対象者や労働組合に十分説明をして協議を行うことなどが求められます。一回しか説明していない場合や、解雇の数日前に協議した場合では、説明や協議が不十分と判断されるおそれがあります。また、「決算資料を提示すると情報流出のリスクがあるのでは」などと心配される経営者もいるようですが、過去には、情報流出に対する懸念を理由として労働組合に決算書のコピーを禁止したことにより、整理解雇の説明や協議が不十分だと判断されて不当解雇とされた裁判例もあるので、注意が必要です。

整理解雇の適正な手順

整理解雇は、非のない従業員を会社が一方的に解雇することになるため、事前に十分な準備を行い、適正な手順に沿って進めなければ、後日大きなトラブルに発展するリスクが高まります。具体的な手順と注意点について説明します。

1.希望退職者の募集

整理解雇を行う前に、希望退職者の募集について検討しましょう。前述したとおり、整理解雇を行う前に解雇を回避するために努力を尽くすことが求められますが、希望退職者の募集はその努力の一つとして認められます。希望退職者には、退職金を増額するなどのプラスになる条件を付与することが多いです。この点、会社としてはコストがかかるため、中小企業にとってはハードルが高いと思われる方も多いようですが、退職金の増額などは、解雇される従業員の納得も得られやすいため、法的紛争に発展するリスクを軽減できるという大きなメリットがあります。法的紛争に発展した場合、対応にかかる負担や認められる損賠賠償額も大きくなる可能性が高いため、希望退職者の募集や退職金の支払に要するコストをはるかに上回る費用負担を強いられるおそれもあります

2.解雇基準の決定

前述のとおり、整理解雇の対象になる従業員を選定するには、一定の客観的な基準が必要です。具体的には、以下の点について話し合って決めておくとよいでしょう。

①整理解雇する人数

会社の経営状況等から余剰人数を分析して整理解雇の対象人数を決めます。対象人数が多すぎると業績回復に際して業務が滞り、少なすぎると十分な経営改善効果が期待できないため、シミュレーションを繰り返すなど入念な検討が必要です。

②整理解雇の対象になる基準

整理解雇の対象者を選定する基準を決定します。業績、過去の勤務状況、扶養家族の有無等の従業員側の事情に加え、業務遂行に必要な資格の有無等、会社側の実情を踏まえて、合理的で客観的な基準を決定します。

③整理解雇を実施する時期

整理解雇を実施する時期については、従業員が転職活動を十分できるように配慮して決定します。解雇する日から30日を切って解雇を告げると、解雇予告手当の支払い義務が発生するという点にも注意が必要です。

④従業員との話し合い方法

前述したとおり、整理解雇をする前には解雇対象になる従業員や労働組合に説明を尽くし、協議の場を持たなければなりません。一回限りの交渉や解雇直前の話合いでは説明が不十分と判断されやすいので、話し合いに関する方針や具体的な進め方についても事前に十分検討しておきましょう。

⑤退職金など解雇に伴う金銭面の対応

退職金について就業規則に規定があれば、規定に従って支払う必要があります。ただし、会社都合の解雇なので、従業員から納得を得るためには、通常の退職金に加え、退職金に勤続年数に応じた金額をプラスするなど優遇措置を取ることが望ましいでしょう。退職金規定がない場合、有給休暇の買い取り、給与の特別加算などの対応を検討してもよいでしょう。

3.解雇する従業員への説明の実施

整理解雇を実行する前に、従業員や労働組合に対して、経営状況や整理解雇の必要性を説明することが必要です。十分に時間をかけて、経営状態が悪化し、整理解雇が避けられないことを示す客観的な資料などを提示しながら説明しましょう。たしかに整理解雇は、従業員の同意が得られなくても、整理解雇の要素を満たせば会社側から一方的に雇用契約を解消することができる手続です。しかし、会社側としては、従業員の退職後の生活や不安感を考慮してあげるとともに、整理解雇の必要性、解雇する対象を選定した基準、解雇の時期など、可能な限り具体的に説明して、理解を得られるように努める必要があります。

4.解雇予告の実施・解雇予告手当の支払い

整理解雇は、上記の4要素を満たした上で、労働基準法で定められた解雇の手続きに則って行う必要があります。
具体的には、従業員を解雇する際は、会社から解雇日の30日以上前に解雇予告をする必要があります。解雇予告が解雇予定日の30日以上前にできなかった場合は、従業員に30日に足りない日数分の平均賃金を解雇予告手当として支払わなければいけません。解雇予告は口頭ですることができますが、後日のトラブルを防ぎ、解雇予告を行ったことの証拠化のためにも、解雇予告通知書という書面を労働者に交付することが望ましいでしょう。解雇予告通知書については詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしていただければと思います。

5.整理解雇の実施

従業員や労働組合に対して十分に説明を尽くし、協議を終えたら、整理解雇を実施します。具体的には、解雇予定日に整理解雇の対象者に書面で解雇辞令を交付します。口頭でも解雇は成立しますが、トラブル回避のために解雇辞令を書面で交付しましょう。これにより、整理解雇として、会社と従業員の間の雇用契約が終了します。従業員が有給休暇の消化中などで出社していない場合は自宅に郵送して下さい。

6.退職手続きの実施

従業員を整理解雇したら、所定の退職手続を行います。具体的には、退職金の支払い、離職票の交付、ハローワークへの雇用保険被保険者資格喪失届の提出、年金事務所への厚生年金・健康保険被保険者資格喪失届の提出などがあります。社会保険や年金に関する対応も必要になるので、漏れがないように注意しましょう。

退職金や退職手当の支払いの必要性

整理解雇をする際に退職金や退職手当を支払うことは法律で定められた義務ではなく、必ず支払わなければならないものではありません。ただし、雇用契約や就業規則等の規定に退職金に関する定めがあれば、原則としてその規定に従って支払う必要があります

退職金の支払いの有無や算定方法は会社により異なりますが、会社都合による解雇の際に退職金や退職手当を支払う場合、通常よりも上乗せして支払われることも少なくありません。

退職金の金額を算定する際は、基本給1か月分に勤続年数と給付率を乗じて算出するという方式が用いられることが多いです。給付率も会社によって異なりますが、目安としては自己都合退職の場合は58%、会社都合退社の場合は67%程度が相場といわれています。この算定方式以外でも、従業員に非がないのに解雇するという整理解雇の特徴を踏まえ、退職金を増額するなどの優遇措置を講じるケースは多いです。

整理解雇をする際の2つの注意点

整理解雇を実際にするときは、上記の手順や前述した4つの要素を満たすことに加え、以下の2点にも注意が必要です。

1.整理解雇が禁止される時期を避けること

法律上、整理解雇が禁止されている期間があります(労働基準法第19条)。以下の2つの時期には整理解雇を行ってはいけません。

  • 労働者が業務または通勤を起因とする負傷や疾病(業務災害)の療養のために休業する期間およびその後30日間
  • 女性で産前産後休業を取得している期間およびその後30日間

解雇予告をした後、解雇日までの間に上記の解雇制限事由が生じた場合は、解雇予告期間が満了しても解雇できません。ただし、解雇制限期間が経過しても、業績など整理解雇の要件を満たしていれば原則として解雇の効力が生じます。
また、以下のケースに該当する場合は例外的に上記の制限を受けることはありません。

  • 業務上の怪我の治療中でも働いている場合
  • 出産予定日前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内でも働いている場合
  • 産後6週間を経過して従業員からの請求で働いている場合(労働基準法第65条第2項ただし書き)

2.男女の扱いに差をつけないこと

上記で、整理解雇する際の基準設定の必要性について前述しましたが、特に注意が必要なのは、性別を理由に差別的な取り扱いをすることは禁止されているという点です。

例えば、整理解雇の対象年齢を女性45歳以上・男性55歳以上とすることや、整理解雇の対象になる勤続年数を女性20年以上・男性30年以上とすることなど、男女の差を設けることは認められないので、注意して下さい。

まとめ

今回は、整理解雇の概要、他の解雇との違い、整理解雇が法律上認められる要素、退職金の支払いの必要性、従業員を整理解雇する際の手順や注意点などについて解説しました。

整理解雇は、会社の苦境の最中に行うことが多い上に、従業員との間でトラブルになりやすいため、入念な準備と検討を重ね、適正な手順に沿って進めることが求められます。

東京スタートアップ法律事務所では、法務・経営・会計のスペシャリストがノウハウを結集して、様々な企業の状況や方針に合わせたサポートを提供しております。整理解雇の際の従業員との交渉、トラブルに発展した場合の訴訟対応等にも対応しております。また、経営再建を目的とした施策に関するアドバイスを行うことも可能です。お電話やオンライン会議システムによるご相談も受け付けていますので、お気軽にご連絡いただければと思います。

弁護士後藤 亜由夢 東京弁護士会
2007年早稲田大学卒業、公認会計士試験合格、有限責任監査法人トーマツ入所。2017年司法試験合格。2018年弁護士登録。監査法人での経験(会計・内部統制等)を生かしてベンチャー支援に取り組んでいる。