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弁護士 宮地 政和

契約社員等の雇止め時の注意点|雇用期間満了通知書の文例等

厚生労働省によると、新型コロナウイルス感染症の影響により、勤務先から解雇・雇止めされた人の数(見込含)が2020年7月末時点で4万人を超えました。こうした影響は、宿泊業や飲食業の他、製造業にも及んでいることが指摘されました。

新型コロナウイルスの影響に限らず、景気や会社の業績の悪化によって、人件費削減の必要に迫られることはあるでしょう。その際、まずはアルバイトや契約社員等の期間の定めのある社員の契約を更新しないこと(雇止め)を検討することも多いと思います。

ただし、たとえ契約期間が満了した場合であっても、雇止めには一定の要件があり、必ずしも自由に行えるものではありません。また、雇止めの有効性等を争ってトラブルに発展するケースも多いところです。

そこで、今回は、雇止めをする際の注意点や雇止めの際に使用する雇用期間満了通知書の文例等について解説します。

雇止め時の注意点

期間の定めのある雇用契約は、期間の満了によって終了するのが原則です。しかし、以下のいずれかに該当する場合は、雇止めには合理的な理由が必要となるため注意が必要です。

  • 正社員との雇用契約と実質的に同等である(労働契約法第19条1号)
  • 契約更新に対する合理的期待がある(同法第19条2号)

そして、これらに該当するか否かは、以下のような事情を踏まえて判断されます。

①業務の内容

雇止めをする従業員が従事している仕事の種類や内容・勤務形態が正社員と同じ程度かどうか。

②契約上の地位の性格

労働条件や職務上の地位が正社員と同様かどうか。

③当事者の主観的な態様

継続して雇用されることを期待する従業員の認識や言動があったかどうか、採用する際に会社側から継続雇用する見込みがあるような説明があったかどうか。過去に一回も契約を更新したことがなく初めて雇用期間満了時に契約終了する場合でも、従業員が契約更新を期待することが合理的といえる場合は、雇止めが違法となることがあります。

④契約更新の手続きや実態

従業員の勤務年数、契約更新の回数、契約更新の際の手続きがどうなっていたか。最も注意が必要なのは、特段手続きを行わずに、慣例的に契約更新されている状況です。従業員に契約更新について過度な期待を抱かせないためにも、契約書に更新手続きを行う時期や手続きについても明記しておくことが重要です。

⑤他の従業員の状況

過去に同じような立場にある有期労働契約の従業員が雇止めされたケースがあるか。契約が更新されなかった前例が存在しない場合は、従業員の雇用継続の期待が高いといえるので、より慎重な対応が求められます。

⑥その他の事情

契約時にどのような経緯で有期労働契約を締結したのか、勤続年数の話はあったのか等。厚生労働省の「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」では、有期労働契約の締結の際に、更新の判断基準を明記することが求められており、採用時からこうした点を検討しておくことが重要です。

雇止めに関するトラブルが発生した場合

従業員から雇止めの無効を主張された場合、会社側としては、当該従業員と交渉し、場合によっては、当該従業員に数か月分の賃金を特別退職金(解決金)として支払う等して解決することを検討する必要があります。

そして、こうした交渉によって解決できない場合、労働審判という手続を利用して解決を目指すこともあります。労働審判は、原則3回の審理で労働問題を迅速に解決するための手続です。労働審判で従業員の主張が認められた場合、会社側は多額の解決金の支払いを求められる可能性があります。

なお、労働審判への対応方法や注意点については、こちらの記事をご参照下さい。

雇止めに関するトラブルを回避する方法

1.契約書に不更新条項の規定を設ける

有期労働契約の期間満了後は、契約を更新しない旨を定めた不更新条項を含む契約書を交わすことで、原則として次の契約更新時に雇用契約が終了します。ただし、不更新条項が定められた契約書を交わした場合でも、従業員の同意が本心ではない、あるいは契約内容に問題があると判断されると、雇用契約の終了が認められない場合もあります。

●過去の裁判例

①名古屋地裁平成7年3月24日判決

従業員が継続雇用を希望していることが明らかな場合は、不更新条項付の契約書に署名押印していても雇止めに関する合意が認められないとした。

②京都地裁平成22年5月18日判決

3年を超えて契約更新しないという契約不更新の契約内容が周知されていなかったこと等を理由として雇止めが無効と判断された。

③大阪地裁平成17年1月13日判決

不更新条項付の契約書に従業員が署名・押印し、さらに有給休暇を消化した、退職金相当額の手当を受け取った、不更新条項に関して異議を述べなかった等の事情により、不更新条項への合意は有効であるとして雇止めを認めた。

2.従業員と面談して契約不更新について説明する

契約書に不更新条項を規定するだけではなく、従業員に契約不更新について理解を求めるよう努めることが重要です。裁判例でも、会社が従業員と何度も面談を行って労働契約を更新しない旨を説明していたケースで、不更新条項が有効であるとして契約終了が認められた事例があります(東京地裁平成20年6月17日判決)。

また、契約更新の回数を予め決めておくことや、「今回の更新で最後とし、次回は更新しない」等を事前に説明しておくことも効果的です。従業員に説明する際は、誠実な姿勢で、契約更新をしない理由について明確に説明し、「説明不足による誤解があった」、「強制的に不更新条項に合意させられた」等と言われないよう十分注意する必要があります。

3.プラスアルファの便宜を図る

雇用期間満了による契約終了を、従業員の自由意思により真意で合意したと認められるためには、プラスアルファの便宜を図ることも有効です。具体的には、退職金に相当するような一時金を払う、有給休暇の完全消化をさせる、有給休暇が消化できない場合は買い上げするなどの対応が考えられます。雇止めされる従業員がこれらの条件を受け入れた場合は、雇止めに対する自由意思による同意があったと認められやすくなります。

雇止めの予告について

厚生労働省の「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」では、有期労働契約が3回以上更新されているか、1年を超えて継続的に雇用されている従業員の契約更新をしない場合、事前に契約を更新しない旨が明示されている場合を除き、少なくとも契約期間が満了する日の30日前までに、契約更新をしないことの予告をしなければならないとされています。

この予告を書面で行うことは法律上の義務ではありません。
しかし、予告をしたことを証拠化し、トラブルを防ぐためには、雇用期間満了通知書等の書面を交付することが望ましいといえます。

雇用契約期間満了通知書の文例等

××年×月×日
▲▲部▲▲課
▲▲▲▲様
東京都●●区●●町●丁目●番●号
●●株式会社
代表取締役社長 ●●●●(印)
雇用期間満了通知書
このたび、当社は、貴殿との××年×月×日付雇用契約に基づき、××年×月×日をもって雇用期間満了とし、下記理由により、以降は契約更新を行わないことを通知致します。
雇止めの理由(例:事業縮小のため、業務を遂行する能力が十分でないと認められるためなど)
以上

雇止めの理由に関する注意点

雇止めの予告後、従業員から雇止めの理由について証明書を請求された場合、会社側は、遅滞なくこの証明書を交付しなければなりません。
そして、この証明書に記載する雇止めの理由は、契約期間の満了とは別の理由とすることが必要です。具体的には、以下のような理由が考えられます。

  • 病気や怪我により就業できないため
  • 業務を遂行する能力が十分ではないと認められるため
  • 業務命令違反があったため
  • 頻繁な遅刻や欠勤があり改善されないため
  • 事業の縮小のため

解雇通知書の発行を求められた場合の注意点

雇止めした従業員が、会社に対して、解雇通知書の発行を求めることがあります。
しかし、適切に行われた雇止めは、解雇とは異なるものなので、会社は解雇通知書を発行する必要はありません。

雇止めした従業員から解雇通知書の発行を求められた場合は、契約書の内容や有期労働契約の内容などを説明した上で、「退職時証明書」や「雇止め理由書」を交付するといった対応が必要となります。

「退職時証明書」は、従業員から退職の理由等に関する証明書の発行を請求された場合に、会社が作成して交付することが義務付けられている書類(労働基準法第22条1項)です。「雇止め理由書」については上記の通りです。

また、雇止めした従業員から解雇通知書の発行を請求された場合は、本人にその理由を確認することが望ましいといえます。なぜなら、このような請求をしてくるのは、当該雇止めが実質的な解雇にあたり無効であるとして復職や賃金等を請求するための準備である可能性もあるためです。

その他、こうした請求をしてくる理由としては、雇用保険上有利な扱いが受けられる特定受給者資格を希望していることも考えられます。これは、雇止めの場合、一定の条件を満たすことで、特定理由離職者に該当し、特定受給者資格と同等の扱いを受けられる可能性があるためです。この場合には、ハローワークで雇用保険上の扱いを確認するよう促す等の対応が考えられます。

まとめ

雇止めに関しては、労使間でトラブルになることは少なくありません。トラブルを回避するためには適切な対応を行い、必要に応じて書面で証拠を残しておく等の対応が重要です。

東京スタートアップ法律事務所では、豊富な企業法務の経験に基づいて、各企業の状況に応じた雇用期間満了通知書の書き方や雇止めの際のトラブル防止策等のご相談に対応しております。また、雇止めを巡って従業員との間にトラブルが生じた場合の対応も可能です。お電話やオンライン会議システム等による相談も受け付けておりますので、お気軽にご連絡下さい。

弁護士宮地 政和 第二東京弁護士会
弁護士登録後、都内の法律事務所に所属し、主にマレーシアやインドネシアにおける日系企業をサポート。その後、大手信販会社や金融機関に所属し、信販・クレジットカード・リース等の業務に関する法務や国内外の子会社を含む組織全体のコンプライアンス関連の業務、発電事業のプロジェクトファイナンスに関する業務を経験している。