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投稿日: 更新日: 弁護士 橋本 大輔

顧問弁護士の必要性・顧問弁護士のいない会社が抱えるリスクとは

最近は大企業だけではなく中小企業の中にも顧問弁護士の必要性を感じて、顧問弁護士と契約を結ぶ企業が増えています。一方で、顧問弁護士が必要となる場面が具体的にイメージできない、顧問弁護士がいないとどのようなリスクがあるのか理解できないという方もいらっしゃるようです。
そこで今回は、顧問弁護士の必要性、顧問弁護士のいない会社が抱えるリスク、顧問弁護士が必要となる具体的な場面などについて解説します。

顧問弁護士が必要だと言われる理由

顧問弁護士の必要性について具体的なイメージが持てないという方もいらっしゃるかと思います。まずは顧問弁護士が必要だと言われている理由について説明します。

1.問題が起きてから弁護士を探すのは大変

企業は日々の活動を行う中で、個人情報や企業秘密の漏洩、知的財産権の侵害などで、ある日突然、訴えられるリスクを抱えています。また、最近は、セクハラやパワハラなどのハラスメント問題でうつ病などの精神疾患を罹った従業員が退職後に企業を訴えるケースも増えています。

企業がある日突然法的トラブルに直面した際、顧問弁護士がいない場合は慌てて弁護士を探すことになりますが、弁護士を探すのに時間もかかりますし、すぐに対応してもらえない場合も多々あります。一方、顧問弁護士と契約している場合、顧問弁護士に連絡すれば迅速に対応してもらえます。また、自社のビジネスや方針を理解している顧問弁護士が対応するため、より自社の方針に沿った解決が望めます。

2.法的リスクを未然に防ぐことの重要性

顧問弁護士が必要となるのは法的トラブルに巻き込まれた時だけではありません。顧問弁護士が真価を発揮するのは、自社が将来直面する可能性のある潜在的なリスクを洗い出し、リスクを未然に回避する予防法務と呼ばれる分野です。

法的なトラブルが起きてから対応した場合、多大な時間とコストを費やさなければならないケースも多いですし、社会的な信頼を失い、企業の業績に悪影響が及ぶ可能性もあります。顧問弁護士と信頼関係を構築し、自社のビジネスを理解してもらった上で法的なリスクを指摘してもらい、予防策を講じることで、将来的な法的リスクを回避することが可能になるという大きなメリットがあるのです。

顧問弁護士の必要性は会社の規模とは無関係

「企業に顧問弁護士が必要というのは理解しているけれど、会社の規模が小さいうちは必要ないのでは?」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、問弁護士の必要性の程度は会社の規模とは関係なく、むしろ中小企業こそ顧問弁護士は必要だとも言われています。その理由について説明します。

1.顧問弁護士が必要なのは大手企業だけではない

顧問弁護士というと社会的にも名が知れた東証一部上場企業などの大企業が不祥事などに備えて必要としているというイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、大企業よりも中小企業の方が売上も従業員数も少ない分、法的トラブルに巻き込まれた際のダメージは大きく、急激に経営状況が悪化するケースも少なくありません。そのため、法的トラブルを未然に防ぐためのリスクヘッジとして、顧問弁護士の力を借りながら予防法務に取り組む必要があるのです。

また、近年、コンプライアンス(倫理法令遵守)という概念が社会的に浸透し、法律やガイドラインの整備も急速に進む中、規模に関わらず全ての企業がコンプライアンス強化への取り組みを求められています。

2.特に必要性が高いのは業界特有の法規制が厳しい業種

金融業界、医薬品業界、不動産業界、IT業界など業界特有の法規制が厳しい業種では、顧問弁護士の必要性が特に高いといえるでしょう。例えば、IT業界には、ソフトウェア開発、WEBサイト構築、通信プロバイダなどさまざまな業種がありますが、それぞれが特有の法律問題を抱えています。不正アクセス禁止法、プロバイダ責任制限法、個人情報保護法、著作権法、下請法など、企業活動を行う上で注意が必要な法律も多数あります。日々の業務に追われる中で、これらの法律を意識してリスクを回避することは、法律の専門家の力を借りないと非常に難しいでしょう。自社の業界に強い顧問弁護士と契約を結ぶことで、自社のビジネスや業界内での立ち位置を理解してもらい、法的なリスクを回避するための対策を講じることが可能になります。

3.創業間もないベンチャー企業にも顧問弁護士は必要

会社を設立したばかりで従業員も少ない段階では、まだ顧問弁護士は必要ないだろうと思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、企業活動を行う中で、法律関係のトラブルにいつ直面するかは予測できないので、できる限り早めに顧問弁護士との契約を検討することをおすすめします。

特に、AI(人工知能)、ロボット、自動運転、ドローン、フィンテック、IoTなど、最新のテクノロジーを活用した分野のビジネスに取り組んでいる場合、現状では法律やガイドラインが十分に整備されていませんが、今後、急速に整備が進む可能性があるため注意が必要です。ベンチャー企業の魅力は新しいビジネス分野に果敢にチャレンジできることですが、自社のビジネスに関連する法規制について理解していないと、知らない間に法律違反を犯すおそれがあります。そのようなリスクを回避するためにも、最新のビジネス分野に精通した顧問弁護士に相談しながらビジネスを展開することが望ましいでしょう。

法務部門を持つ会社に顧問弁護士は不要?

自社内に法務部門を設けている企業や、企業内弁護士を雇用している企業の場合、顧問弁護士は不要なのでしょうか。自社内に法務部門を設置していても顧問弁護士と契約を結んでいる企業が多い理由や法務部門と顧問弁護士の違いについて説明します。

1.顧問弁護士と契約を結んでいる企業が多い理由

法務部門を設けている会社の中には、定期的に外部の顧問弁護士を招いて自社の抱える法律に関する問題を話し合う機会を設けているという会社も多いです。顧問弁護士は社内の法務部門のスタッフや企業内弁護士と違い、社外の組織の人間なので、第三者視点から自社の人間が気づかない問題を指摘することが可能です。自社以外の企業とも契約を結び日々の業務の中で経験を積んでいる顧問弁護士からアドバイスを受けることは、社内に法務部門を持つ企業にとっても有益なのです。特に、新しい事業やサービスを立ち上げる際は、内在する法的リスクやリスク回避策について多角的に検討するために、最新の法規制や他社における類似の事例等に関する見識を備えた顧問弁護士に相談する企業が多いようです。

2.法務部門と顧問弁護士の違い

社内の法務部門と顧問弁護士の主な違いを表にまとめてみました。

社内の法務部門 顧問弁護士
自社の業務に関する理解度 社内の人材なので、自社の業務や業界に関する理解度は高い 社内の法務部門と比較すると、理解度は低い
企業法務の経験・知識 個人差が大きく、経験・知識不足の場合もある 企業法務のプロとして豊富な経験を持つ弁護士が多い
必要なコスト 従業員一人あたり年間数百万円の人件費 毎月の顧問料(中小企業の相場は月3~5万円程度)

企業法務は、企業が抱えている潜在的なリスクを予見する能力等の高度なスキルが求められる分野です。自社の業務や業界に関しては、社内の資料等を用いて顧問弁護士に説明すれば理解してもらえる可能性は高いですが、企業法務に求められる高度なスキルは一朝一夕で身につくものではありません。法務部門の人材の実務経験やスキルが不足している場合は、法的リスクを回避するために十分な役割を果たせない可能性が高いので、顧問弁護士と契約して、いつでも相談できる体制を整えておくことをおすすめします。
顧問弁護士と契約を結ぶと毎月の顧問料がかかりますが、社内の法務部門の人材を雇用する場合と比較すると、大幅にコストを抑えながら、質の高いサポートを受けることが可能です。顧問弁護士の費用の相場や料金体系について詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしていただければと思います。

法務部門がなく顧問弁護士もいない会社が抱えるリスク

社内に法務部門がなく顧問弁護士との契約も締結していない会社はどのようなリスクを抱えることになるか知りたいという方もいらっしゃるかと思います。具体的な事例を挙げながら説明します。

1.労使トラブルのリスクが大きい

近年、職場内のハラスメント行為によるメンタルヘルスの不調、退職金や残業代の未払い、リストラなどによる不当解雇等の問題で元従業員から訴えられる企業が増えています。2016年に日本弁護士連合会が実施した「第2回中小企業の弁護士ニーズ全国調査」の結果、法律に絡む困りごとの第1位は「雇用問題」(37.1%)でした。

元従業員が会社に不満を持ち法的手段をとる場合、個別労働紛争の迅速な解決を目的とした労働審判制度が利用されるケースもあります。労働審判は基本的には労働者の保護を目的とした制度なので、一般的に使用者側である企業にとっては不利な傾向にあることで知られています。また、労働審判の申立てを受けた場合、期日までの短期間に必要な証拠を集めて答弁書を作成する必要がありますが、法的専門知識がないと法的根拠に基づいた答弁書を作成するのは非常に難しいです。答弁書の内容に不備があると、会社側は非常に不利な立場に追い込まれ、元従業員の要求通りに高額な慰謝料を支払わなければならない状況に陥ってしまう可能性があります。

2.契約書不備による取引先とのトラブル

顧問弁護士がいない企業は、契約書不備による取引先とのトラブルのリスクを常に抱えることになります。例えば、取引先から口頭で新規プロジェクトの依頼を受けて納期に間に合わせるために契約書を交わす前に人員を集めて作業を開始したのに、途中で取引先からプロジェクト中止の連絡があり、作業をした工数分の費用を支払ってもらえないというケースも考えられます。この場合、契約書が存在しないので、当事者間でどのような約束が交わされていたか証拠が残っていないことになり、法的手段で支払いを請求することは難しいです。取引先から費用を回収できないまま人件費を支払わなければならないため、大きな負担を強いられることになります。

契約書を交わしていた場合でも、ネット上から適当に探してきた契約書の雛形を流用している場合、問題が起きたときに契約書として全く機能しないケースも珍しくはありません。ネット上では契約書の雛形がたくさん見つかりますが、そのような契約書が実際に締結する契約に即した内容である可能性は低く、リスクを未然に回避するために必要な条項が網羅されていない場合も多いからです。契約締結の際には、顧問弁護士が作成した契約書を使用するか、契約の相手が出してきた契約書について顧問弁護士のチェックを受けることが大切です。

3.売掛金が回収できないリスクも

顧問弁護士がいない企業は、取引先から売掛金を回収できないというリスクも抱えています。前述の「第2回中小企業の弁護士ニーズ全国調査」の調査結果で法律に絡む困りごととして「雇用問題」(37.1%)の次に多かった回答は「債権回収」(30.3%)でした。
売掛金の入金遅延が発覚した際、迅速かつ適切な対応を行わないと、取引先の財務状況が悪化して回収できなくなる可能性もあります。売掛金が回収できないことは自社で費やしたリソースに対する対価が支払われないことを意味するため、企業の財務状況に直接的なダメージを与えます。

顧問弁護士のサポートが必要となる具体的な場面

顧問弁護士がどのような場面で必要となるのか具体的に知りたいという方もいらっしゃるかと思いますので、典型的な例を3つご紹介します。

1.問題社員に円満退職を促す時

近年、モンスター社員などとも呼ばれる問題のある社員を企業が解雇した後、解雇された社員が企業に対して「不当解雇だ!」などと訴えて多額の賠償金の支払いを求めるケースが増えています。

問題のある社員を放置すると他の社員へ悪影響を及ぼすことも多いため、企業としてはその社員に退職してほしいと考えるのは当然のことです。しかし、従業員の解雇は労働基準法などで厳しい制限が設けられているため、問題社員と企業側が直接対決すると将来トラブルに発展した際、企業側が不利な立場になる可能性もあります。企業が問題社員を退職に追い込むために地方への転勤や本人の希望に反する部署異動を命じるなどという手段を使うケースも多いですが、権利の濫用とみなされる場合もあるので注意が必要です。

問題のある社員に円満退職してもらうためには顧問弁護士の力を借りることが得策です。顧問弁護士のアドバイスを受けて、その社員の問題行動を指摘して改善を要求し、それでも改善がみられない場合は退職について冷静に話し合うという適切なステップを踏むことで、法的リスクを回避しながら問題社員の円満退職を促すことが可能になるのです。

2.法的手段による売掛金回収が必要な時

売掛金の入金遅延が発覚し、催促しても入金がない場合、取引先の財務状況が悪化して支払いが困難になっている可能性もあるため迅速な対応が必要です。取引先が倒産寸前の状況に陥ってからでは手遅れになり、売掛金が回収できない可能性があるからです。

売掛金を回収するための法的な手続きにはいくつかの方法がありますが、どの方法が適切なのか判断するためには法律に関する専門知識と債権回収手続きの実務経験が必要です。顧問弁護士なら法律の専門家であり債権回収の法的手続きの実務経験も豊富に有しているので、迅速かつ適切な法的手段を講じることができ、債権回収の可能性も高まります。

3.契約書のリーガルチェックで不利な契約を回避

取引先と新たな契約を結ぶ際、契約書の内容について法的な問題がないか自社に不利な内容が含まれていないか確認することは将来的なトラブルを未然に防ぐために非常に重要なプロセスです。しかし、法律の専門知識が不足していると契約書の内容を十分に理解できないまま自社に不利な内容の契約を締結してしまい、トラブルが発生した際に大きな損害を被る可能性もあります。また、自社に不利な内容が含まれていることに気づいても、自社の立場が弱い場合は取引先との関係を維持するために、そのまま受け入れるしかないと考えてしまうかもしれません。

しかし、顧問弁護士に契約書のリーガルチェックを依頼すれば、自社に不利な内容を指摘してもらい、取引先に対して法的根拠に基づく契約書の修正依頼を行うことが可能になります。修正依頼をする際は、「弊社の顧問弁護士に指摘を受けましたので」と法律のプロの視点からの客観的な指摘であることを伝えることにより、立場の強い取引先にも納得してもらえる可能性が高まります。

4.顧問弁護士のサポートが必要な場面は多岐にわたる

他にも企業活動の中で、法的リスクを回避するために顧問弁護士のサポートが必要になる場面はたくさんあります。例えば、以下のような場面です。

  • 顧客や取引先からの悪質なクレームへの対応
  • 会社が訴えられた際の民事・刑事訴訟対応
  • 知的財産の保護
  • 新規制度導入時の制度設計支援

顧問弁護士の役割や具体的なサポートの内容については、こちらの記事にまとめましたので、参考にしていただければと思います。

会社の成長性の観点からみる顧問弁護士の必要性

顧問弁護士が力を発揮する典型的な場面について説明しましたが、顧問弁護士を有効活用することは長期的な経営の安定や会社の成長にもつながります。会社の成長性という観点からみた顧問弁護士の必要性について解説します。

1.健全な企業経営を続けられることの価値

人は健康であるときはその価値に気づかず、病気になって初めて健康であることの価値を知ると言いますが、企業経営についても同じことが言えます。企業は法的なトラブルに直面して初めて健全な企業経営を続けられることの価値を知るのです。

企業が直面する可能性のある法的なトラブルは多種多様ですが、中には企業の経営が一気に傾くような重大なトラブルもあります。例えば、昨今メディアなどでも話題になる個人情報漏洩の問題があります。企業による個人情報漏洩が発覚した場合、損害賠償責任を問われるだけではなく、企業の信頼が大きく失われることにより経営不振に陥るリスクもあるのです。

2.予防法務の視点を持つことが大切

法的なトラブルを回避して、健全な企業経営を続けるためには予防法務という視点から顧問弁護士を有効活用することが大切です。企業法務には、臨床法務・予防法務・戦略法務の3つの側面があると言われています。

  • 臨床法務:法的なトラブルが発生した際に対処すること
  • 予防法務:企業が抱える潜在的な法的リスクを回避するための予防策を講じること
  • 戦略法務:法律の専門知識を企業の経営戦略に活用すること

顧問弁護士というと、取引先や顧客から裁判を起こされるなどのトラブルに巻き込まれた時に相談する臨床法務のイメージをお持ちの方が多いかもしれませんが、トラブルが起きてから慌てて顧問弁護士に相談しても既に手遅れという場合もあります。顧問弁護士が真価を発揮するのは予防法務だという認識を持つことが、顧問弁護士を十分に活用するための鍵となります。顧問弁護士に自社のビジネスや業界内での立ち位置などを伝えた上で、自社が抱える潜在的な法的リスクを指摘してもらい、回避するために適切な対策を講じることが大切です。法的トラブルを回避することはトラブルにより企業が被る損害や従業員の負担を最小限に抑えることにもつながり、結果的に企業の発展を支える基盤が強化されるのです。

まとめ

今回は、顧問弁護士の必要性、顧問弁護士のいない会社が抱えるリスク、顧問弁護士が必要となる具体的な場面などについて解説しました。

企業が将来的に直面する可能性のある法的リスクを回避するためには、転ばぬ先の杖として顧問弁護士を活用するという考え方が大切です。

我々東京スタートアップ法律事務所は、各企業の予算やニーズに応じた顧問弁護士のプランを提供しています。顧問弁護士の契約をご検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください。

弁護士橋本 大輔 東京弁護士会
2013年慶応義塾大学卒。2014年司法試験予備試験合格。2015年司法試験合格。2016年弁護士登録。特に会社法・知的財産権・労務・事業再生等に明るく、企業法務案件全般に取り組んでいる。