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弁護士 後藤 亜由夢

顧問弁護士の選び方と注意点・5つのチェックポイントについて解説

近年、企業を取り巻く法的リスクが多様化・複雑化する中、顧問弁護士と顧問契約を結び、リスクマネジメントに取り組む企業が増えています。顧問契約は、法律の専門家に自社のビジネスや方針を理解してもらうことができるため、企業の法的な問題に関する相談を日常的・継続的にできるという点が大きなメリットです。

顧問弁護士との契約を検討しているけれど、どのような基準で選べばよいかわからないという疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、顧問弁護士を選ぶ際の基準やチェックポイント、顧問料の安さだけで顧問弁護士を選ぶリスクなどについて解説します。

企業法務に関する実績があるか

顧問弁護士を選ぶ際、最低限チェックしたいのは、企業法務に関する経験が十分かという点です。テレビCM等で有名な法律事務所だからといって、企業法務の経験が十分とは限らないため注意が必要です。むしろ、テレビCMは企業ではなく一般消費者をターゲットにしているため、テレビCMを頻繁に行っている法律事務所は企業法務に精通していない、ということが多くあります。
弁護士は広範囲かつ高度な法律の専門知識を持つスペシャリストで、様々な法的問題を取り扱うことができますが、最近は特定の分野に特化して活動する弁護士も増えています。特に東京などの都心部においては、それぞれの専門を持つ法律事務所が存在します。そのため、自身のニーズに合う法律事務所を探すことが必要不可欠です。
例えば、刑事事件における有利な証拠収集を得意とし刑事事件を専門にしている法律事務所もありますし、離婚やDVなどの家庭内の紛争(家事事件)を専門に扱う法律事務所、知的財産権に関する問題などの特定の分野に特化した法律事務所も存在します。
企業法務についても同様であり、専門に扱う事務所が存在します。企業法務には、企業活動の中に潜む法的リスクを予見する能力が必要ですが、リスクを予見する能力を身につけるためには、専門知識だけではなく、様々な企業法務の案件の経験とビジネスの理解が必要となります。また、企業活動に関わる法律や規制の制定・改定は頻繁に行われているため、最新の法規制や判例に関する知識のアップデートする能力も求められます。加えて、弁護士は法の専門家ではありますがビジネスの専門家ではないため、そもそも会社のビジネスの理解力に乏しい弁護士も多数存在します。

したがって、顧問契約を検討する際は、企業法務を専門としており、十分な経験と実績を持つ法律事務所を選ぶことが大切です。
企業法務を得意としている法律事務所かどうか判断するためにはホームページをチェックして、実績やサービス内容を確認するとよいでしょう。企業法務を得意とする法律事務所の公式サイトには、契約書の作成・リーガルチェック、債権回収、労働紛争・訴訟対応、株主総会運営、内部統制システムの整備等、企業法務に関する項目が記載されているはずです。また、ホームページのチェックの際は、どのような弁護士が所属しているかまでチェックするのが重要です。

顧問料とサービス範囲は適切か

顧問弁護士の顧問料は法律事務所によって異なります。企業法務を得意とする法律事務所の多くは、会社の規模やサポート範囲に応じて、複数の顧問契約のプランを用意しています。以前は日本弁護士連合会の報酬基準規定で事業者向けの弁護士顧問料の最低金額は月額5万円と定められていたため、今でも月額の最低料金を5万円と設定している法律事務所が多いです。もっとも、最近は月額1万円以下の顧問料の法律事務所も登場しています。
顧問料が安い場合、顧問料の範囲内で受けられるサポートの範囲が非常に狭く、サポート範囲外の依頼をすると追加料金がかかるという料金システムになっている可能性が高いです。予算に余裕がなく、顧問料はできる限り安く抑えたいと思われる方も多いかと思いますが、顧問料だけではなく顧問料の範囲内で受けられるサポート範囲も必ず確認することが大切です。

自社のニーズに合うか

顧問弁護士を選ぶ際は自社のニーズに合うかという視点も大切です。自社のニーズに合うかという視点を持つためには、自社のビジネスを進める上で、どのような法的問題やリスクと直面する可能性があるのかを考え、その法的問題等を専門的に扱っている事務所を検討するとよいでしょう。

例えば、金融業界やヘルスケア業界など業界独自の法規制が多数存在する業界の場合、当該業界の状況や法規制に精通した弁護士を選ぶことが重要です。顧問弁護士が、業界の実情やビジネス内容、関連法規について十分に理解できていないと、自社のビジネスに潜むリスクを指摘したり、的確なアドバイスをしたりすることができないからです。

また、AI(人工知能)、IoT、自動運転など、革新的な新技術を活用したビジネスに取り組む場合、アイデアを実現しようと取り組んでいたら、知らない間に法規制に抵触していたというケースもあります。そのようなリスクを防ぐためにも、顧問弁護士に自社のビジネスモデルを説明し、適法性をチェックしてもらうことが非常に重要です。ただし、新しい分野に関する法律やガイドラインは十分に整備されていない場合も多いです。現在の法規制での適法性の判断が難しい場合、グレーゾーン解消制度や新事業特例制度を利用して適法性を確認するという方法もあります。グレーゾーン解消制度や新事業特例制度は、2014年1月から施行された産業競争力強化法により、企業が計画中の事業内容に即した規制改革を進めるために創設された制度です。これらの制度を利用するためには、申請書類の作成が必要となります。申請書の作成にあたり、顧問弁護士に自社の事業計画を理解してもらい、現行の法規制に抵触しないか事前に確認してもらうことが理想的です。また、申請書の法的リスクに関する項目を弁護士に作成してもらうことも効果的です。
もっとも、新しい分野に関する業界知識を持つ弁護士は少ないため、そのような弁護士を探すことは、通常の法律事務所の中からでは難しいかもしれません。この点、スタートアップ企業やベンチャー企業のサポートを得意としている法律事務所なら、新しいビジネスモデルの適法性判断の経験と実績を持つ弁護士が在籍している可能性が高いです。

また、海外進出を検討中の場合、進出先の国の法律や国際社会を規律する国際法に照らし合わせたリーガルチェックが不可欠です。自社が海外進出を検討している場合は、国際法務に強い法律事務所を顧問とすることを検討し、進出を考えている国の法務に精通している弁護士が在籍しているかを確認しましょう。

ビジネスに対する考え方や価値観が合うか

顧問弁護士には、ビジネスに対する考え方や価値観を理解してもらう必要があります。弁護士はリスクを避けようとするのが一般的であるため、保守的な考え方を持つ弁護士が多いのが実状です。もっとも、ビジネスを行うには時にはリスクを負う必要があるため、企業法務を専門に扱う弁護士には、ビジネス感覚や柔軟性のある考え方も必要です。
例えば、現在企画中のサービスに法的なリスクがあることが発覚したとします。前述のとおり、弁護士はリスクを回避する傾向にあるため、「法律に抵触する可能性があるので、この企画は中止してください」と助言をする弁護士が多いと思います。しかし、特に新しい分野にチャレンジする場合や、ベンチャー企業やスタートアップ企業などが新しいビジネスを行おうとする場合においては、時には敢えてリスクを取るという選択が必要な場面もあります。この点、企業の法的リスクを指摘しつつ、ビジネスの中止を提案するのではなくリスクを回避しながら実現できる代替案を提案してくれるような弁護士なら、理想的なビジネスパートナーとして企業の発展に貢献してくれるでしょう。
また、顧問弁護士とは長期間に渡って信頼関係を構築していくことになるため、人としての相性も大切です。相性が良いかをすぐに判断するのは難しいかもしれませんが、ブログやSNSで情報発信をしている弁護士なら、その内容に共感できるか否かが一つの判断基準となるでしょう。

コミュニケーションがスムーズに取れるか

顧問弁護士とスムーズにコミュニケーションが取れるかという点も大切なポイントです。スムーズなコミュニケーションを実現するためには、主に以下のような要素があります。

  • 説明のわかりやすさ
  • レスポンスの速さ
  • コミュニケーション手段

各要素について順番に説明します。

1.説明のわかりやすさ

顧問弁護士とスムーズにコミュニケーションを取る上で、説明のわかりやすさは非常に重要な要素です。難解で複雑な法律の問題をわかりやすい表現で説明する能力は弁護士として当然求められる能力だと思われるかもしれませんが、実際は、難解な法律の専門用語を使って理解不能な説明をする弁護士も存在します。弁護士の説明が理解できないのは自分の知識不足のせいだなどと思ってはいけません。ほとんどの場合、弁護士の説明の仕方に問題がある場合が多いです。特に顧問弁護士を検討する最初の段階で説明がわかりにくい弁護士は、コミュニケーション能力に問題があるケースがあるため、慎重に判断する必要があります。
説明のわかりやすさを見極めるためには、実際に会って話をするのが一番確実ですが、弁護士がブログやSNSで情報発信している場合は、その文章がわかりやすいかを確認するのも一つの判断基準となるでしょう。

2.レスポンスの速さ

ビジネスにはある程度のスピードが求められる場面も多いので、レスポンスの速さも大切です。多くのクライアントを抱えている弁護士は一般的に多忙なので、「今すぐ相談したい」という要望には応えられない場合もあるかもしれません。もっとも、そのような時でもレスポンスが早めに返ってくると、その後の段取りがスムーズに進むと思います。そのような気遣いができる弁護士かどうかという点も見極めておくとよいでしょう。

3.コミュニケーション手段のバリエーション

最近は、働き方改革や新型コロナウィルスの影響もあり、テレワークを導入して、日常的にChatWorkなどのチャットツールやオンライン会議ツールを利用して、社内間や取引先とコミュニケーションを取る企業が増えています。弁護士業界でも、チャットツールやオンライン会議ツールの導入は進んでいますが、未だに電話とメールでの連絡しか受け付けていないという法律事務所も多数存在します。電話とメールのみでは、スムーズなコミュニケーションが取れない可能性も高いため、注意が必要です。
特に複数の従業員で情報共有が必要な案件の場合、電話とメールだけでは、十分なコミュニケーションが取れない可能性が高いです。顧問弁護士と契約する際には、対応可能なコミュニケーションツールについても確認しましょう。この点、スタートアップ企業やベンチャー企業を顧問として多数抱える法律事務所であれば、事務所内のITインフラも十分に整備されていることが多いため、自社で使用しているツールでコミュニケーションを取れることが期待できます。また、チャットツールの使用は、前述のレスポンスの速さにも大きく影響するため、顧問弁護士を選ぶ際は重要なポイントです。

顧問料の安さだけで顧問弁護士を選ぶリスク

前述の通り、最近は月額1万円以下という格安の顧問料金を設定している法律事務所も存在します。月額の顧問料が安いと、月の固定費を削減できるというメリットがあり魅力的に感じますが、顧問料の範囲内で受けられるサポートの範囲が非常に狭い場合も多く、十分なサポートを受けられない可能性が高いため、注意が必要です。
法的な問題に直面して相談したら、想定外の問題が発覚したため対応に時間がかかり、高額な追加料金を請求されるなどという可能性もあります。顧問料金内で受けられるサポートの範囲が狭いと、法的な問題が起きた際、最終的にどの程度の費用がかかるのか事前に把握できないというリスクがあるという点は認識しておきましょう。
また、顧問弁護士の役割の中でも最も重要なのは法的なトラブルに巻き込まれないよう事前に予防策を講じる予防法務です。しかし、月額1万円以下では具体的な予防法務に取り組むことは現実的に難しいかと思います。企業が労使間トラブルによる損害賠償請求や売掛金の回収不能などのトラブルに巻き込まれることはけして少なくありません。それらのトラブルに対する予防策を事前に講じる予防法務に取り組むことは、トラブルにより企業が被る損害を最小限に抑えることにつながります。顧問弁護士を選ぶ際は、顧問料の安さだけではなく、時間をかけて十分かつ具体的な予防法務に取り組むことができるかという点も確認することをおすすめします。

まとめ

今回は、顧問弁護士を選ぶ際のチェックポイントとして以下の5つの点を挙げて解説しました。

  • 企業法務に関する実績があるか
  • 顧問料とサービス範囲は適切か
  • 自社のニーズに合うか
  • ビジネスに対する考え方や価値観が合うか
  • コミュニケーションがスムーズに取れるか

東京スタートアップ法律事務所は多数のスタートアップ企業やベンチャー企業を顧問として抱えているため、十分な企業法務の経験を備えております。また、新たなビジネス分野の理解を得意とすると共に、チャットワークやSlackなどのチャットツールに加え、skypeやzoomといったWeb会議ツールにも対応しております。
各企業の予算やニーズに応じた顧問契約プランのご提案もしておりますので、顧問弁護士の契約をご検討中の方はお気軽にご相談ください。

弁護士後藤 亜由夢 東京弁護士会
2007年早稲田大学卒業、公認会計士試験合格、有限責任監査法人トーマツ入所。2017年司法試験合格。2018年弁護士登録。監査法人での経験(会計・内部統制等)を生かしてベンチャー支援に取り組んでいる。