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代表弁護士 中川 浩秀

顧問弁護士とは?役割や企業法務サポートの具体的な内容を解説

企業の事業活動に伴う法律問題が多様化する中で、法律やガイドラインの改正も頻繁に行われ、企業のコンプライアンスの重要性は高まる一方です。最近は、大企業だけではなく中小企業の中にもコンプライアンス向上を目指して顧問弁護士と契約を結ぶ企業が増えています。

一方で、「顧問弁護士の必要性がよくわからない」、「どのようなサポートを受けられるのか具体的にイメージできない」という方もいらっしゃるようです。

そこで今回は、顧問弁護士の役割、具体的な法的サポートの内容、内部通報制度の社外窓口として利用する場合の利益相反に関する注意点などについて解説します。

顧問弁護士の役割と業務内容

顧問弁護士は企業にとってどのような存在なのかイメージが湧かないという方もいらっしゃると思います。そこで、まずは顧問弁護士の役割や業務内容について説明します。

1.顧問弁護士とは

顧問弁護士制度は、企業が特定の弁護士と顧問契約を締結して毎月顧問料を支払うことにより、企業活動に関わる様々な法律問題について法律の専門家である弁護士から直接サポートを受けられる制度です。
顧問弁護士は、企業が法令を遵守した健全な活動が続けられるよう、その企業の業務内容や、業界内での立ち位置なども理解した上で企業が抱える法律問題の解決支援や法的なリスクマネジメントを継続的に行ないます。企業が法律問題に直面したり法律上のリスクを回避したいと考えたりした際にいつでも気軽に相談でき、法律のプロの視点から客観的なアドバイスを受けられることから、かかりつけ医に例えられることが多いです。

2.企業法務全般をカバー

顧問弁護士は企業活動に伴う法律にまつわる問題、すなわち企業法務全般をカバーするため、業務内容は非常に多岐に渡ります。
顧問弁護士の主な業務内容は以下のとおりです。

  • 人事・労務トラブル対策
  • 債権回収支援
  • 事業の適法性のチェック
  • 契約書のリーガルチェックや作成支援
  • 外部からのクレームへの対応・法的リスクマネジメント
  • 刑事・民事訴訟対応(原告側・被告側の双方)
  • 知的財産の保護に関する法的サポート
  • 内部通報制度の社外窓口

法律事務所によって月額の顧問料で対応可能な範囲は異なります。また、一定の工数を超えてくると別途費用がかかる場合もあります。別途費用がかかる場合でも顧問契約を締結していることで割引があるため個別で依頼するよりも費用を抑えられます。自社のビジネスの内容や経営方針を理解している顧問弁護士に担当してもらえることで安心感があると同時に時間の節約にもなります。

それぞれの業務の具体的な内容や比重は業種や会社の規模等により異なりますが、それぞれの一般的な内容について詳しく説明していきます。

人事・労務トラブル対策

2016年に日本弁護士連合会が実施した「第2回中小企業の弁護士ニーズ全国調査」の結果、法律に絡む困りごとの第1位は「雇用問題」(37.1%)で、2006年に実施した同調査で第1位だった「債権回収」を上回りました。
そこで、最も弁護士ニーズの高い分野である雇用問題に関するトラブルが発生した際、顧問弁護士からどのようなサポートを受けられるか説明します。

1.労働審判などの労務トラブル対応

多くの企業は、元従業員から不当解雇、退職金や残業代の未払い、セクハラやパワハラの被害などで訴えられるリスクを抱えています。個別労働紛争の迅速な解決を目的とした労働審判制度が利用されるケースもありますが、労働審判の申立てを受けた場合、期日までの短期間に答弁書を作成し、必要な証拠を集めるなどの準備が必要になります。
労働審判制度は基本的には労働者の保護を目的としているため、一般的に使用者側である企業にとっては不利だと言われています。

法律のプロである顧問弁護士のサポートを受けることで、迅速に答弁書の作成や証拠集めを進めることができます。また、慰謝料などの損害賠償金の支払いを求める申立人の主張に対して適切な反論を行ない、自社が受けるダメージを最小限に抑えることにもつながります。

2.就業規則や雇用契約書のリーガルチェック

労働審判などの労務トラブルに発展した場合のことを述べましたが、労使間トラブルを未然に防ぎ、労務管理を円滑に行うことも大切です。そのためには、就業規則や雇用契約書のリーガルチェックが重要な意味を持ちます

例えば、就業規則や雇用契約書に懲戒解雇の事由が明記されていない場合、従業員による業務上横領や部下への恐喝まがいのパワハラなどの悪質な行為が発覚した場合も懲戒解雇することが困難です。また、懲戒解雇の場合は退職金の支給は行なわない旨の規定を定めておかないと退職金の請求に応じなければいけません。

このように就業規則や雇用契約書は、起こり得る最悪のケースを想定した上で必要な条項を網羅する必要がありますが、そのためには法律の専門知識が求められます。顧問弁護士のリーガルチェックを受けることで、自社の利益を守るための就業規則や雇用契約書を作成することが可能になるのです。

迅速な債権回収支援

前述のとおり、「第2回中小企業の弁護士ニーズ全国調査」の調査結果で法律に絡む困りごととして「雇用問題」(37.1%)に次いで多かった回答は「債権回収」(30.3%)でした。
債権回収は迅速に行わないと企業の財務状況に直接的なダメージを与える場合もあり、顧問弁護士の役割として認知度も比較的高い分野です。そこで、債権回収において顧問弁護士から具体的にどのようなサポートを受けられるのか説明します。

1.法的手段による債権回収支援

企業間の取引では、月末締めで1ヶ月分を請求し、後から払ってもらうという掛売り方式という請求方式が採られていますが、掛売り方式には債務者である取引先の財務状況が悪化して売掛金が回収できなくなるリスクが伴います。

売掛金の入金遅延が発覚して催促後も期日までに支払いがない場合、顧問弁護士は、「期日までに支払いがない場合は法的措置をとる」という内容を記載した内容証明郵便を送付します。その後も入金がない場合、仮差押えによる保全、支払督促や訴訟提起などの法的手段を講じる必要があります。

最悪の場合、債務者側の企業が経営不振に陥って倒産し、売掛金が回収できなくなる可能性もあるので、法律のプロである顧問弁護士のサポートを受けて迅速に法的手段をとることは非常に大切です。

2.訴訟に発展した場合のサポート

支払督促をしても債務者が異議申立てをした場合、訴訟に発展する可能性があります。訴訟に発展した場合は、訴状を作成し証拠を整えて訴訟を提起し、法廷で法的根拠に基づく主張を行うことが求められます。

顧問弁護士に依頼して訴訟手続を行う場合、顧問料とは別に料金が必要となる場合が多いですが、顧問弁護士に依頼すれば、訴訟の際に代理人として裁判所への出廷などの訴訟手続を追行してもらうことも可能です。法律のプロである顧問弁護士が出廷して法律に則った正当な主張をすることにより、自社に有利な判決を獲得することにつながります。

契約書のリーガルチェックや作成支援

契約書のリーガルチェックや作成支援も顧問弁護士の重要な役割の一つです。具体的にどのようなサポートを受けられるか説明します。

1.不利な条件を回避するためのリーガルチェック

企業間で契約書を交わす際は、立場が強い方の企業が契約書を提示して立場が弱い方が内容を確認して押印するケースが多いです。そのため、中小企業が大手企業と契約を結ぶ際、その中小企業はその大手企業に不利な条件を押し付けられてしまう可能性もあります。

しかし、顧問弁護士が法律のプロの視点から契約書のリーガルチェックを行うことで、自社にとって不利な条項を発見し、相手に修正を依頼することができます。修正依頼をする際は、「弊社の顧問弁護士から指摘を受けましたので」と法律のプロからのアドバイスであることを伝えることで、立場の強い取引先にも納得してもらえる可能性が高まります。

2.必要な内容を網羅した契約書作成サポート

日々の企業活動の中で、売買契約、秘密保持契約、業務委託契約、製造委託契約、代理店契約、ライセンス契約など、さまざまな種類の契約書が交わされています。
契約書の種類ごとに留意するべき法律やガイドライン、必ず規定すべき重要な条項は異なりますが、それらを踏まえて過不足のない契約書を作成したり契約書の内容を確認したりするためには、高度かつ多岐にわたる法律の専門知識が必要です。

顧問弁護士は自社の業務内容や業界での立ち位置などを十分に理解した上で、自社で使用する契約書の雛形の作成を支援することが可能です。契約書に必要な内容が全て網羅されているか、法律上の問題がないかなどを細かくチェックした上でアドバイスを受けられるので、後々、契約書の内容を巡りトラブルが発生することを事前に回避することができます。

外部からのクレーム対応の法的サポート

外部からの悪質なクレーム対応の法的サポートも顧問弁護士の重要な役割の一つです。この点について、具体的に顧問弁護士からどのようなサポートを受けられるか説明します。

1.理不尽なクレーマーへの対応

理不尽極まりない要求や脅迫まがいの言動を繰り返す悪質なクレーマーへの対応に悩まされる企業は多いようです。こういった人たちは、カスタマーセンターに何度も執拗に電話をかけてきて何時間も同じような話をして担当者を責め続けたり、いきなり会社に押しかけてきて居座り続けたりするなど、適切に対処しなければ業務に支障をきたすケースがあります。
国民民主党が2019年2月に発表した「消費者対応業務関連特定行為対策の推進に関する法律案」(通称:悪質クレーム対策推進法案)では悪質クレームについて次のように定義しています。

従業者等に対し、その消費者対応業務に関連して行われる行為のうち、著しく粗野又は乱暴な言動を行うことその他の行為であって当該従業者等に業務上受忍すべき範囲を超えて精神的又は身体的な苦痛を与えるおそれのあるもの

2019年12月現在、悪質クレーム対策推進法案が可決されるかは不明ですが、以下のような行為は法律違反になる可能性があります。

  • 同じ内容のクレームで1日に何十回も電話をかけてくる行為:威力業務妨害罪
  • 正当な理由なく会社に押しかけて居座る行為:不退去罪
  • 土下座など不要なことを相手に強制する行為:強要罪
  • 「殺してやる!」「会社に火つけたろか!」などと脅す行為:脅迫罪

このような悪質クレームを受けた場合、顧問弁護士に相談して法的根拠に基づく適切な対応をしてもらうことで従業員が多大な労力を費やしたり、精神的なダメージを受けたりするのを防ぐことができます。

2.クレーム処理手順の構築支援

顧客から大声で罵倒されたり、土下座を強要させられたりするなどの悪質なクレームを受けた場合、強烈なショックがトラウマとして残ってしまい、精神疾患に罹るリスクもあります。悪質なクレーマーから従業員を守るためには、会社としてのクレーム対応の方針を決めて、クレーム対応手順を明確に記載したマニュアルを整備することが大切です。

悪質なクレーマーの対応を顧問弁護士に依頼して、従業員が悪質なクレーマーと遭遇した際は、できる限り早めに対応を切り上げることが理想的です。例えば、カスタマーサポートや営業部などで働く従業員が悪質なクレームを受けた際は「このような件につきましては弁護士に依頼しておりますので、弁護士から折り返しご連絡させていただきます」などと回答し速やかに対応を切り上げると決めてマニュアル化しておくことで、従業員が悪質なクレーマーから受けるダメージを最小限に抑えることができます。

民事・刑事訴訟対応

企業経営の場面では、元従業員や他の企業などから訴訟を起こされることがあります。訴訟対応ということになると顧問料とは別料金になる場合が多いですが、顧問弁護士に依頼して会社の代理人として法廷に立ってもらうことも可能です。
具体的にどのようなケースがあるのか説明します。

1.パワハラ被害の慰謝料等請訴訟

職場でのパワハラやいじめによりうつ病などの精神疾患を発症したとして元従業員から訴えられる企業が増えています。従業員が業務内で行ったパワハラについて、会社は使用者責任に基づく損害賠償責任を負います。また、会社側の責任として、従業員のために良好な職場環境を整える職場環境配慮義務や従業員を安全に働かせる安全配慮義務があります。会社がこれらの義務に違反していないかを厳しく追及される場合もあります。

損害賠償責任を免れるためには、パワハラの事実に反する証拠や業務との関連性を否定する証拠、職場環境配慮義務や安全配慮義務を十分に果たしていたと証明できる資料などを集めて反論する必要があります。

これらの訴訟に対応する場合、顧問弁護士に相談・依頼することで、どのような主張を行うべきか、どのような証拠が有用かを的確に判断でき、代理人として有用な主張や証拠の提出をしてもらえるので、裁判で勝訴する可能性も高まります。

2.従業員が刑事事件で逮捕された場合

会社の従業員や役員が窃盗、痴漢、暴行、器物損壊などの被疑事実で逮捕されるというケースもあります。その場合、その行為の業務との関連性、犯罪の悪質性、業務上の支障の度合い等を総合的に考慮して、会社として関わるべきか否か、関わるとしてどのように関わるのかを判断する必要があります。
本人の話を聞いてから判断したいという場合は、顧問弁護士に接見を依頼してもよいでしょう。ただし、顧問弁護士に従業員や役員の刑事事件の弁護を依頼するのはなるべく控えてください。逮捕された従業員に対して懲戒解雇などの処分を検討することになった場合、会社と従業員の間に利益相反(*)が生じる可能性があるからです。

*利益相反とは
依頼者と利害が対立することにより当事者の利益や弁護士の職務の公正を害する危険のある行為を意味し、法律相談や依頼を受けることが禁止されている(弁護士法第25条、弁護士職務基本規程第27条、第28条)。

知的財産の保護に関する法的サポート

企業の収益力や競争力の基盤として非常に大切な知的財産を保護することも顧問弁護士の重要な役割の一つです。また、知的財産を侵害したとして他社から訴えられそうになった場合にも顧問弁護士のアドバイスを受けることで自社が受けるダメージを最小限に抑えることができます。

1.商標登録、特許権取得のサポート

社内で独自に開発した商品やサービスを模倣されると、企業の競争力が低下して収益にも悪影響を及ぼす可能性があります。そのような事態を避けるためには、商標登録や特許権の取得が有効です。顧問弁護士と相談しながら、自社のビジネスに必要な知的財産権保護の方法を検討するとよいでしょう。
また、商標登録や特許権取得の際には、過去に類似した商標や特許が登録されていないかの確認作業や申請書類の作成作業を顧問弁護士にサポートしてもらうことも可能です。

2.他社から差止請求を受けた際の対応

他社から商品名の類似性や商標権侵害などを理由に、販売中の商品の販売差止請求を受けるケースも珍しくはありません。
「販売を停止しない場合は商標権侵害で訴える」などと記載された警告文書が内容証明郵便として届く場合もありますが、顧問弁護士に相談すれば、慌てずに冷静な対処ができます。
顧問弁護士のサポートを受けることで、相手が主張する商標権の有効性、相手方の権利業者としての適格性を確認し、相手の主張に正当性が認められた場合は相手に使用料を払い、ライセンスを受けるなど、自社の利益をできるかぎり保護する方法を検討することが可能になります。

内部通報制度の社外窓口

コンプライアンス向上のために内部通報制度を設ける企業は増えています。
顧問弁護士が内部通報制度の社外窓口としての機能を果たすことも可能ですが、利益相反のリスクにも注意が必要です。

1.顧問弁護士が内部通報窓口となるメリット

内部通報窓口としては、法律のプロであり厳格な守秘義務を負う弁護士が所属する法律事務所が相応しいと言われています。人事部や総務部など社内の窓口では、上司の不正行為やパワハラを通報したくても、自分が通報したことを本人に気づかれてしまうのではという不安から通報できないというケースもあり得るからです。

2016年に消費者庁が公開した「公益通報者保護法を踏まえた内部通報制度の整備・運用に関する民間事業者向けガイドライン」には、以下のような記載があります。

通報窓口を設置する場合には、例えば、以下のような措置を講じ、経営上のリスクに係る情報を把握する機会の拡充に努めることが適当である。

・法律事務所や民間の専門機関等に委託する(中小企業の場合には、何社かが共同して委託することも考えられる)等、事業者の外部に設置すること

・労働組合を通報窓口として指定すること

・グループ企業共通の一元的な窓口を設置すること

・事業者団体や同業者組合等の関係事業者共通の窓口を設置すること

普段からコミュニケーションがとれている顧問弁護士に窓口として機能してもらうことができれば、より安心です。

2.利益相反の問題には要注意

顧問弁護士に内部通報制度の窓口として機能してもらう場合に注意が必要なのが、利益相反の問題です。上司によるセクハラやパワハラなどの相談は、企業と従業員の利害が対立する場合も多く、顧問弁護士が利益相反の立場に立たされる可能性があります
従業員からの相談の途中で利益相反が明らかになった場合、相談を中止してもらうよう事前にお願いしておきましょう。

顧問弁護士の費用の相場

顧問弁護士の顧問料は各法律事務所によって異なりますが、相場は月額5万円~30万円程度です。
月額1万円以下という低料金を売りにしている法律事務所も存在しますが、顧問料が安い代わりに受けられるサポートの範囲が限定されていて、それ以外のサポートを受ける場合は高額な料金を別途支払うという料金体系になっている場合もあります。
顧問弁護士を選ぶ際は、顧問料だけではなくサポート内容やサポート体制(一人の弁護士のみで対応するのか複数の弁護士が対応するのかなど)、オプションとしてかかってくる費用もしっかり確認するようにしましょう。
また、固定費の支払いはできるだけ抑えたいという企業向けに、利用時間に応じて課金するタイムチャージ制を採用している法律事務所もあります。

まとめ

今回は、顧問弁護士の役割や具体的な業務内容などについて解説しました。

今回は主な業務内容を取り上げましたが、それ以外にも、新規事業やサービスを立ち上げる際や海外進出時の法的リスクマネジメント、M&Aの際の法的サポート、株主総会の対応、財務状況悪化時の法的再建支援など、顧問弁護士が活躍する場面は多岐にわたります。

法律の主治医とも言われる顧問弁護士は、法的トラブルから企業や従業員を守り、安定した経営と企業の将来的な発展を支えてくれる頼れる存在と言えるのではないでしょうか。

我々東京スタートアップ法律事務所は顧問弁護士として各企業のビジネスに適したサポートを提供しています。顧問弁護士の契約をご検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください。

代表弁護士中川 浩秀 東京弁護士会
2010年司法試験合格。2011年弁護士登録。弁護士法人東京スタートアップ法律事務所の代表弁護士。同事務所の理念である「Update Japan」を実現するため、日々ベンチャー・スタートアップ法務に取り組んでいる。