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代表弁護士 中川 浩秀

業務委託契約の注意点|個人の場合や成功報酬など雛形の契約書で注意すべきポイントとは

昨今、インターネットによる受発注の増加や働き方の多様化によって、業務委託という仕事の形態が増加しています。業務委託は、企業同士の契約だけではなく、フリーランスなど個人との間でも契約されることも多いです。
業務委託契約は、雇用契約と異なり、自由な契約が結びやすく、多様なニーズに対応できる反面、契約内容をめぐって後日トラブルになりやすいという側面があります。
それだけに、業務委託契約を締結する際は、きちんとした契約書を作成することが重要です。

そこで今回は、業務委託契約とは何か、業務委託契約書を作成する際にどのような内容を盛り込むべきかなど、業務委託契約に関する注意点について解説します。

業務委託契約とはなにか?混同しやすい4つの契約を比較

1.業務委託契約とは

業務委託契約とは、自分の会社の仕事を外部に委託する契約のことをいいます。
もっとも、日本の法律には「業務委託契約」という規定はなく、法的性質は、「請負契約」「委任(準委任)契約」となります。「請負型」の業務委託契約は、物を作るなど仕事の完成を目的とする契約、「(準)委任型」の業務委託契約は、事務の処理を目的とする契約です。

業務委託契約では、仕事を頼む側(委託者)が、依頼を受ける側(受託者)に仕事を頼み、受託者がその仕事を自分の裁量と責任で行うのが特徴です。委託者から受託者に対する指揮命令権はありません。

2.請負契約との相違

請負契約は、民法第632条で「請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。」と定められた契約です。

請負契約は、仕事を完成させて成果物を得ることを目的とした契約です。
請負契約には以下のような特徴があります。

  • 納期までに仕事を完成させて成果物を引き渡すこと
  • 請け負った側は労働力を提供するだけでなく設備などを提供して仕事を完成させること
  • 依頼者からの指揮命令を受けず仕事のプロセスは問題にならないこと
  • 成果物を引き渡して初めて報酬が発生すること

具体例として、会社がフリーランスのデザイナーとの間で商品デザインの作成に関する請負契約を締結した場合などが挙げられます。デザイナーは自分のPCや知見を用いて商品デザインを納期までに納入しなければならず、完成したデザインが依頼内容と異なる場合は修正をしない限り報酬を受け取れません。

3.委任契約との相違

委任契約は、民法643条で「委任者が法律行為をすることを受任者に委託し、受任者がこれを承諾することによって効果が生ずる。」と定められた契約です。

委任契約は、業務を行うことを目的とした契約です。
委任契約には以下のような特徴があります。

  • 仕事を行いさえすれば成果の優劣は問題にならないこと
  • 成果物がなくても報酬が発生すること
  • 引き受ける側には「善管注意義務」が課され、細心の注意が求められること

例えば、弁護士に依頼した場合に、法律相談などの弁護業務を行えば、裁判で負けたとしても一定の報酬を受け取ることができるという例があります。

委任契約に似た「準委任契約」は、法律行為を含まない委任契約をいいます。例えば、コンサルタントが企業に助言を行い、その助言に従っても企業が利益を得られなかったとしても基本的に報酬は支払われるといったタイプになります。

4.雇用契約との相違

雇用契約は、企業側(使用者)と従業員側(労働者)が労働契約を結び、労働者が会社の業務に従事して会社に貢献する代わりに、使用者が労働者に対して賃金を支払うことを約束する契約をいいます。
雇用契約には以下のような特徴があります。

  • 労働者は会社の指示監督の下で業務を行い、勤務場所や勤務時間が拘束されること
  • 報酬が、会社に提供する労務の対価という面があること

上記の特徴は、雇用契約の特徴であると同時に、業務委託契約との違いでもあります。

業務委託契約が利用される具体的な契約とは

業務委託契約を締結する際は、成果物の完成を目的とする場合は請負型の契約、業務の遂行を目的として成果を問わない場合は委任型の契約を選択します。
請負型の業務委託契約の具体例としては以下のような契約があります。

  • ホームページ作成契約
  • ITシステム構築契約
  • ソフトウェア開発契約
  • 商品デザイン作成契約
  • 警備契約

委任型の業務委託契約の具体例は、以下のような契約です。

  • 顧問契約
  • 社員研修契約
  • コンサルティング契約
  • 情報提供契約
  • ビル清掃契約

ただし、同じ「ソフトウェア開発契約」でも、ソフトウェア開発の条件を整えるなど相談がメインになる場合は委任型に、同じ「コンサルティング契約」でも一定の仕事の完成や成果を出すことを求めて依頼する場合は請負型になるなど、求める成果や業務内容によって選択するべき契約の型が異なることに注意が必要です。

業務委託契約を結ぶ際の5つの注意点

1.業務委託契約の要素

業務委託契約を結ぶ際は、請負型か委任型のどちらの契約を選ぶのか、求める仕事の目的を踏まえて慎重に決定しましょう。

業務委託契約は、外部に任せられる仕事を外注することで、社内の人材は会社の本質的業務に集中できるようにするというメリットがあります。そのため、請負型・委任型を問わず、委託した業務の管理やフォローをするために社員が余計な負担を負うようでは本末転倒です。

さらに、業務委託契約では、業務遂行のプロセスは任せることになるため、依頼する業務の遂行に必要なデータを提供する必要があります。会社の本質に関わるデータを安易に渡さないよう、依頼する業務の内容は事前に精査しておきましょう。

2.業務委託契約を結ぶ相手

業務委託契約は、雇用契約と異なり、勤務条件や業務遂行のプロセスの指揮監督をすることができません。そのため、外注する際の契約相手は次のことに注意して選ぶことをおすすめします。

①請負型の業務委託契約

請負契約は、成果物が完成しないと報酬が発生せず、修正が必要な場合は、受託者が修正する義務を負います。しかし、いい加減な契約相手だと、納期を守らなかったり、修正への対応が遅かったりすることも考えられます。
業務遂行のプロセスを監督できないだけに、迅速・丁寧に対応する相手を選びましょう。

②委任型の業務委託契約

委任契約は、事務処理を依頼するにあたり、一定の情報を提供することが避けられません。そのため、委託した会社の守秘義務をきちんと履行すること、情報漏洩のリスクがないことが重要です。また、請負と異なり、成果物の完成がなくても報酬が発生するので、業務の過程で手を抜かずに真摯に業務を行う相手を選びましょう。

3.請負か委任か、業務委託の性質別の責任の範囲

業務委託契約では、契約書のタイトルよりも、その契約内容によって、請負型か委託型か判断されます。そして、どちらのタイプかによって責任の範囲が異なります

請負型の場合、受託者は成果物を引き渡すまで報酬を請求できず、仕事にミスや欠陥があった場合には、委託者に対して修理や損害賠償、契約解除の責めを負う「瑕疵担保責任」を負います。一方、委託型の場合は、受託者は「善管注意義務」を負うものの、業務を遂行すれば委託者に報酬を請求することができます。

このように、業務委託契約では、業務型か委任型かで責任が異なるので、求める業務がどのようなものなのかを精査し、双方の認識を一致させて契約を結ぶことが重要になります。

4.偽装請負の注意点

特に請負型の業務委託契約の場合、仕事を遂行するプロセスは、仕事をする場所を含めて受託者の自由です。しかし、業務の性質上、依頼した会社内に常駐して仕事を行う場合もあります。その場合、委託者側はつい指示命令を出してしまいがちですが、指示の内容によっては指揮監督関係があると認められる可能性があります。受託者が委託者の指揮監督下にあるとされると、実質的な雇用関係にあるとされ「偽装請負」として問題になるおそれがあります。

雇用関係であれば、労働者は、労働基準法などの保護を受け、雇用保険・健康保険・労災保険などの社会保険制度の利用や、年次有給休暇の取得、残業代の請求などの権利を持ち、強い身分保障を受けることができます。しかし、業務委託契約では、労働者性がないため、このような保護を受けません。偽装請負は、実際は労働者と評価されるのに、法の保護を受けない点が、労働者保護の観点から問題視されています。

過去の裁判例では、会社の子会社にパートとして雇用され、業務委託契約に基づいて親会社で業務に従事した原告が、子会社と親会社の請負契約終了を理由に雇止めされたケースで、原告は実質的には親会社の指揮監督下で業務に従事して親会社が賃金を払っていたと言え、勤務開始時点で原告と親会社の間に黙示の労働契約が成立していたとして、原告は親会社に労働契約上の権利を有する地位にあると判断されましたケースがあります(ナブテスコ事件 神戸地明石支部平成17年7月22日判決)。
偽装請負に当たると判断されると、企業側が処罰を受けることもあるので注意しましょう。

5.再委託の注意点

業務委託契約が委任型の場合は、業務の委託を受けた受託者は自分でその業務を遂行しなければならず、他人に回す再委託は認められないとされています。
一方、業務委託契約が請負型の場合は、受託者は再度別の相手にその業務を委託できるとされています。しかし、業務委託契約は受託者のスキルや実績も、業務を任せる上で大きな意味を持つことが少なくありません。請負型の業務委託契約を結ぶ場合は、契約書で再委託を禁止する旨を明記しておくなど、対応をしておきましょう。

成功報酬の支払い型別・業務委託契約の3類型

1.定額型の業務委託契約

毎月、一定額の報酬を支払うタイプの業務委託契約です。具体的には、清掃業務、保守点検業務、コンサルティング業務などで多いタイプです。

2.成果報酬型の業務委託契約

受託者があげた業務の成果に応じて、報酬が変わるタイプの業務委託契約です。具体的には、受注件数によって報酬が変わる営業代行業務、売上の増減に応じて報酬が変わる店舗運営委託業務などでよく用いられます。

3.単発業務型の業務委託契約

原則1回の業務を委託する際に、報酬の額を決めて支払うタイプの業務委託契約です。具体的には、社内研修業務、デザイン作成業務、商品開発業務などで多いタイプです。

業務委託契約書に記載すべき 10 のポイントと注意点

1.業務委託契約の目的

委託者が、受託者に業務の遂行を委託するための契約だということを明記します。

2.業務委託契約の内容と履行の方法

委託する業務の内容や工程については、できるだけ具体的に明記して、受託者が守るべき手順やルールについて記載しておきましょう。また、特殊な業務については追加資料をつけるなどしておきましょう。

3.業務の再委託について

受託者が、委託された業務を再委託できるかどうかを記載しましょう。特に、請負型の業務委託契約で、受託者の技能や実績を重視する場合は、再委託を禁止する旨を明記しておきます。

4.業務委託契約の期間や更新の有無

業務委託契約の期間、契約期間満了時に自動更新されるかどうかについて記載します。

5.報酬

報酬の金額と内訳、支払時期と支払方法を記載します。成果物1つにつき何円、1日あたり何円というように、算定方法についてできるだけ詳細に決めておきましょう。

また、請負契約の場合は、民法第632条で報酬の支払いが契約の必須の要素とされる一方、原料費や光熱費など業務の遂行にかかった費用は受託者が負担するのが原則です。

しかし、不測の事態で想定より多くの費用がかかった場合はトラブルに発展しやすいので、その点も記載しておくとよいでしょう。

6.業務中に発生した権利

委託した業務で発生した成果物が、いつ、だれに帰属するのかを明記します。形があるものについては引き渡し時期と引き渡し相手を、形のない権利などについては受託者が契約後に利用できるかなどについても記載します。特に、著作権等の知的財産権は、契約後に問題となりやすいので、もれなく記載しておきましょう。

7.禁止事項・守秘義務

業務遂行に際しての、禁止事項について記載します。また、委託者が受託者に開示した情報等について、秘密保持を求める旨も明記しましょう。秘密保持については、業務委託契約書とは別に秘密保持契約書を作成し、万が一違反した場合の損害賠償についても厳しく規定するケースも少なくありません。

8.損害賠償請求について

委託者・受託者に契約違反があった場合等の損害賠償については明記しておく必要があります。契約書に損害賠償の記載がない場合は、委託者が契約解除した場合に委託者側に損害賠償の責任が発生する恐れがあります

9.契約の解除

委託者・受託者に契約違反があった場合等の契約の解除について明記します。

請負型の業務委託契約の場合は、委託者は、「仕事を完成しない間」であれば自由に契約の解除ができます(民法第641条)。また、成果物に欠陥があり、契約の目的を達成できない場合も原則契約解除が可能です(同法第635条)。一方、受託者側からは、委託者が「破産手続き開始を受けたとき」しか解除できません(同法第642条1項)。

委任型の業務委託契約の場合は、委託者・受託者双方がいつでも契約を解除できます(同法第651条1項)。

10.裁判所の合意管轄

業務委託契約についてトラブルが発生し、裁判に発展した場合にどこの裁判所で審理するかについて記載します。

業務委託契約書の作成を弁護士に相談するメリット・デメリット

業務委託契約書を作成する際は、まず業務の内容が請負型か委任型かを見極め、その上で責任の範囲を明確にしなければなりません。インターネットでダウンロードできる雛形をそのまま利用すると、報酬を想定より多く支払わなければいけなくなったり、成果物の権利を取られたりする恐れがあります。

弁護士に業務委託契約書の作成を相談することで、まずは、ご自身の委託する業務の性質を明らかにし、それに沿った契約書を作成できるメリットがあります。また、生じた成果物の権利の所在を明確にすることで、後で成果物の価値が上がった場合の財産的価値を保全し、情報漏洩を防ぐことも期待できます。さらに、損害賠償や裁判の合意管轄など、将来のリスクに備えた対策を取っておくことも可能です。

反面、弁護士に業務委託契約書の作成を相談するデメリットとしては、費用がかかることがあげられます。定型的な契約書もあれば、非定型的で複雑な契約書もあるため、契約書の作成にかかる弁護士費用は、数万円から数十万円程度までと、様々です。まずは、法律相談等で、弁護士に作成したい契約書の概要を伝え、弁護士費用の見積りを出してもらうことをおすすめします。

まとめ

業務委託契約は、委託者側からすれば、長期・短期を問わず、ニーズに応じて外部に業務を委託することで、本業をスムーズに遂行することができるというメリットがあります。他方、受託者側からすれば自由度の高い働き方で報酬を得ることができるというメリットがあります。両者にとって自由度が高い契約だけに、契約の合意内容に漏れがあると、後々トラブルになりかねません。円滑な企業運営のために、業務委託契約でお悩みの方は、まずはお気軽に弁護士にご相談ください。

私たち東京スタートアップ法律事務所では、業務委託契約書のみならず、お客様のニーズに合った、様々な契約書を作成しております。
契約書作成でお悩みの方は、是非、ご相談ください。

代表弁護士中川 浩秀 東京弁護士会
2010年司法試験合格。2011年弁護士登録。弁護士法人東京スタートアップ法律事務所の代表弁護士。同事務所の理念である「Update Japan」を実現するため、日々ベンチャー・スタートアップ法務に取り組んでいる。