商取引・契約法務CATEGORY
商取引・契約法務
投稿日: 更新日: 弁護士 瀧澤 花梨

支払督促に対する異議申立が可能な期間は?理由の典型例も解説

裁判所から支払督促が届いた際、期日内に督促異議の申立てを行わないと、強制執行により財産を差し押さえられる可能性があるため迅速な対応が必要です。しかし、「異議を申立てるためには正当な理由が必要なのでは?」「資金不足で支払いができない場合は無視するしかないのでは?」などという疑問を持ちながら放置してしまう方も少なくないようです。

今回は、支払督促に対する異議申立ての概要や法的効果、督促異議申立ての理由の必要性と典型例、督促異議申立てのタイミングと期日、督促異議申立て後の流れと留意点などについて解説します。

支払督促に対する異議申立てとは

支払督促の内容に不服がある場合、受け取った人は支払督促に異議を申し立てることができます。ここでは、異議申立てがどのようなものなのかご紹介します。

1.支払督促とは

支払督促は、債権者の申立てに基づき、簡易裁判所の書記官が債務者に対して金銭等の支払いを命じる略式の法的手続です(民事訴訟法第382条以下)。申立書に不備がなければ、債務者の意見を聞くことなく、金銭等の支払いが命じられます。そして、債務者からの異議申立てがない場合、裁判所に出向くことなく通常訴訟の確定判決と同じ法的効果を得られ(民事訴訟法396条)、強制執行により債務者の財産を差し押さえることも可能なため、便利な債権回収の手段として広く用いられています。

2.支払督促に対する異議とは

法律上の異議とは、相手の行為に対する不服の意思を示すことにより、法律上の効果を生じさせないことをいいます。そして、支払督促に対する異議とは、支払督促を受けた側が、支払督促の申立てに対して納得できないという意思を示すことです。

3.督促異議申立ての法的効力

支払督促は、債務者の意見を聞くことなく、債権者からの一方的な申立てにより行われるため、債務者保護の観点から、債務者側の不服申し立ての手段として、督促異議申立ての機会が確保されています(民事訴訟法第386条2項)。督促異議には、支払督促を失効させる法的効力があり(同法第390条)、督促異議申立て後は、通常の訴訟手続に移行し、債権者が原告、債務者が被告となります。

督促異議申立ての理由の必要性と典型例

督促異議を申立てる際は理由を述べる必要があるのでしょうか。また、どのような理由で、督促異議の申立てが行われるケースが多いのでしょうか。督促異議申立ての理由の必要性と典型例について説明します。

1.督促異議の申立てに理由は不要

異議を申立てるからには、正当な理由が必要なのではないかと思われる方もいらっしゃるかと思いますが、督促異議の申立ての際に理由を示すことは求められていません。また、理由を示す場合、法的根拠や証拠などは一切必要ありません。つまり、特に理由がなくても、債権者による支払督促の申立てに対して、督促異議の申立てにより「納得できない」という意思を示すことで、支払督促を失効させることが可能なのです。

2.申立て内容に誤りがある場合

督促異議申立ての典型的な理由の一つは、支払督促の申立ての内容に誤りがある場合です。具体的には、以下のようなケースが挙げられます。

  • 身に覚えのない債務が記載されている
  • 未払いの債務はたしかに存在するけれど、金額が間違っている

支払督促は利用者の一方的な申立てにより裁判所に出向くことなく未払金等の支払い請求ができる便利な制度ですが、その便利さゆえに、出会い系サイトの利用料などの支払いを求める架空請求等に悪用されることもあるようです。そのため、身に覚えのない内容が記載されている場合でも、無視してはいけません。支払督促では、架空請求であるか否かは当事者の主張に基づき判断されるからです。悪質な組織による架空請求であっても督促異議の申立てを行わずに放置していると、強制執行により財産を差し押さえられるおそれがあるため、必ず期日内に督促異議の申立てを行って下さい。

3.時効が過ぎている場合

「未払いの債務は確かにあるけれど、長期間支払いをしていないため、既に時効が成立していて支払い義務はないはずだ」という場合もあるでしょう。この点、消滅時効期間が経過している過去の借金について支払督促の申立てが行われることも珍しくはありません。
この場合、放置しているだけで自動的に時効消滅の効力が生じるわけではないという点に注意しましょう。時効援用の手続をして時効を成立させるために督促異議の申立てを行う必要があります。

4.支払いが困難な場合

返済が難しい状況の場合に、強制執行を阻止して交渉の場を設けるために督促異議の申立てが行われるケースも多いです。具体的には、以下のようなケースが挙げられます。

  • 一括払いは難しいので、分割払いに変更してほしい
  • 資金繰りが悪化しているから支払いを待ってほしい

上記のような理由でも、督促異議の申立てを行うことは可能です。
一括で支払えないから致し方ないと無視をすることは避けましょう。

督促異議申立てのタイミングと期日

督促異議をする主な機会は2回あり、それぞれに期日が設けられています。支払督促を放置したまま期日が過ぎると、強制執行により財産を差し押さえられる可能性があるので、迅速に行動することが大切です。督促異議申立てを行うべきタイミングと期日について説明します。

1.支払督促受領後から2週間以内

督促異議を申立てる最初の機会は、支払督促を受領してから2週間以内です。2週間以内に督促異議申立書を裁判所に提出することにより、支払督促を失効させることが可能なので、迅速に対応しましょう。
支払督促は、裁判所名が記載された封筒で特別送達により配達されます。特別送達とは、裁判所から訴訟関係人などに必要な書類を送達し、その送達の事実を証明する特殊な郵便で、郵便受けに届くのではなく、郵便配達員から直接手渡しされます。
書類を受けっとったら、まずは支払督促に記載されている「請求の趣旨」と「請求の原因」を確認してください。「請求の趣旨」の欄に申立人(債権者)の請求金額が、「請求の原因」の欄に申立人の言い分が記載されています。
そして、支払督促の書類には、督促異議申立書という用紙と異議申立ての方法等に関する説明が記載された書類も同封されています。同封されている督促異議申立書に以下の必要事項を記入して、速やかに郵送して下さい。

  • 作成日
  • 債権者名
  • 債務者名(自分の氏名)
  • 住所
  • 電話番号
  • 異議申立ての言い分

裁判所公式サイトに掲載されている督促異議申立書の書式では、異議申立ての言い分欄に「分割払いの話し合いを希望します」というチェック項目があります。一括での支払いは難しいけれど、分割払いには応じたいという場合は、この項目にチェックを付けて、毎月支払い可能な金額を記入します。異議申立ての言い分は必ずしも記載しなければいけないわけではないので、空欄でもかまいません。裁判所公式サイトには、督促異議申立書の書式や記載方法が掲載されているので、参考にするとよいでしょう。

なお、督促異議申立書は普通郵便で郵送することも可能ですが、書留郵便等の記録が残る方法で郵送することをおすすめします。普通郵便で郵送した場合には、裁判所に到着しているか否かの確認を電話でしてみるのもよいでしょう。

2.仮執行宣言申立後から2週間以内

督促異議を申し立てる次の機会は、仮執行宣言付支払督促を受領してから2週間以内です。1でお話しした、督促異議の最初の機会である支払督促を受領してから2週間以内に督促異議の申立てをしなかった場合、債権者は30日以内に仮執行宣言の申立てすることが可能となります。そして、債権者の申立てが裁判所に認められると、支払督促に仮執行宣言が付され、債権者は直ちに強制執行手続きをとり、債務者の財産の差しおさえができるようになります。
そのため、仮執行宣言付支払督促を受領したら、支払督促に同封されている異議申立書に所定の事項を書いて、速やかに裁判所に提出してください。

なお、仮執行宣言付支払督促に異議を申し立てても、強制執行の手続きは停止しません。そのため、強制執行を止めるためには強制執行停止の申立てを行う必要があります。

督促異議申立て後の流れと留意点

前述した通り、督促異議申立て後は通常の訴訟手続に移行します。訴訟手続に移行した後の流れや留意点について説明します。

1.通常の訴訟手続への移行

適法な督促異議申立てがあった場合、支払督促を発した簡易裁判所またはその所在地を管轄する地方裁判所に訴えの提起があったものとみなされます(民事訴訟法第395条)。請求金額が140万円以下なら簡易裁判所、それ以上の金額の場合は地方裁判所で裁判が行われることになり、裁判所から「口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告状」という書類が届きます。この書類には、裁判所へ裁判の期日や法廷番号(裁判が行われる法廷の場所を示す番号)が記載されているので、しっかり確認して下さい。裁判所へ出廷する日付は、通常は2週間~1ヶ月程度先の期日となっています。原則として、期日の1週間前までに答弁書を提出する必要があるので、期日までに必ず答弁書を提出して下さい。裁判所からの書類の中に、答弁書の用紙と書き方に関する説明書が同封されていますので、確認の上作成してください。また、答弁書の記載方法がわからない場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

裁判当日は、支払督促の内容について当事者間で争いがない場合は(例えば、未払い債務があることは間違いないが、分割でしか払えない等)、裁判所から和解での解決を勧められることが多いです。分割払いを希望する場合は、事前に債権者に連絡して、分割払いの内容に関する希望を伝えておくとスムーズに和解が成立する可能性が高まります。和解が成立した場合、後日、裁判所から和解の内容をまとめた和解調書が届きます。その後は、和解調書の内容に従って支払いをすれば問題ありません。

2.債権者から督促異議取下を依頼された場合

一度行った督促異議は、取り下げることができます。督促異議の取り下げは、法律に明記されているわけではなりませんが、実務上は認められています。
督促異議の申立てにより訴訟に移行すると、当事者双方にとって時間的・金銭的な負担が発生します。債権者は、追加で裁判手数料を納付する必要が生じ、裁判が終了するまで時間がかかる可能性が高くなります。そのため、督促異議の申立てを受けた債権者側から、督促異議の取下を求められる場合があります。督促異議の取下を行う際は、裁判所の公式サイトに掲載されている支払督促申立て取下書を利用するとよいでしょう。

債権者側から、督促異議の取下を求められる場合、債権者は当事者同士の話し合いによる解決を希望している可能性が高いです。当事者同士の話し合いで和解ができれば、訴訟を行うよりも、少ない負担で解決が実現します。債権者に対して、分割払い等の希望がある場合は内容をまとめて、伝えるとよいでしょう。
ただし、督促異議を取り下げると、元の支払督促の手続きが復活するため、安易に異議の取り下げに応じるのではなく、債権者とよく話し合うことが必要です。

まとめ

今回は、支払督促に対する異議申立ての概要や法的効果、督促異議申立ての理由の必要性と典型例、督促異議申立てのタイミングと期日、督促異議申立て後の流れと留意点などについて解説しました。

財産に対する強制執行を回避するためにも支払督促を受領後は速やかに督促異議申立書を提出することが大切です。督促異議申立書の記載方法がわからない場合、裁判所から届いた支払督促の内容に関して疑問がある場合などは、早めに弁護士に相談することをおすすめします。また、通常訴訟に移行した場合、答弁書の作成、和解交渉などで法律の専門的な知識が求められる場合もあるため、弁護士のサポートを受けることが望ましいでしょう。

東京スタートアップ法律事務所では、豊富な経験を持つ弁護士が、督促異議の申立てに関するサポートや、訴訟に移行した場合の答弁書の作成や和解交渉などに柔軟に対応しております。お電話やオンライン会議システム等での問い合わせも受け付けておりますので、お気軽にご相談いただければと思います。

弁護士瀧澤 花梨 東京弁護士会
約5年の間、一般民事を担当。その経験の中で、弁護士に対する敷居の高さを感じ、抱えているトラブル以前に、弁護士に相談することに大きな緊張や不安を抱えている人が少なくないということを学ぶ。この経験から、相談者にとって親しみやすく、どんなことでも安心して話しせる弁護士を目指す。