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投稿日: 弁護士 後藤 亜由夢

OEM契約の注意点|ライセンス契約や製造委託契約の違いや記載事項も解説

近年、ビジネスの多様化や市場の拡大により、OEM契約が締結される機会は増えています。「他社の技術力を活用して自社製品を製造したい」、「自社のブランド力を生かして画期的な新製品を発売したい」などのニーズを持つ会社にとって、OEM契約は自社のビジネスを拡大することができる契約です。

実際にOEMの製品を目にする機会も増えていますが、自社で契約する際は、どのような契約内容にすればいいのか、またライセンス契約や製造委託契約とはどのような違いがあるかなど、疑問を持たれる方も多いのではないでしょうか。

今回は、OEM契約の概要、ライセンス契約や製造委託契約との違い、OEM契約書の記載事項とひな形、契約時に注意すべき点などについて解説します。

OEM契約とは何か?

OEM(Original Equipment Manufacturer)契約とは、自社のブランドの製品を販売したい会社が、製造能力がある他社に対し自社ブランド製品の開発・製造を委託し、他社から製造・開発された製品の供給を受ける契約のことをいいます。
製品の販売元の会社(委託者)と製品を開発・製造する会社(受託者)が異なり、完成した製品の所有権は委託者に帰属し、委託者の名義・ブランドで製品を販売できるという特徴があります。

OEM契約のメリット・デメリット

OEM契約は、委託者・受託者双方の特性やニーズに応じて協力体制が組めるなど大きなメリットがありますが、デメリットもあります。委託者、受託者双方にとってのメリットとデメリットについて説明します。

1.委託者側のメリット・デメリット

OEM契約を締結することにより、委託者は、既に設備や技術を有する製造会社(受託者)に対し、製品の製造と供給を依頼することができます。そのため、委託者は、自社で新たに設備投資や技術開発をする必要がなく、コストを抑えて自社ブランドの製品を販売できるというメリットがあります。

反面、受託者に製造を依頼するために自社の技術が育たない、受託者に製品ノウハウが流れるために将来的に受託者が競合になるリスクがある、などのデメリットもあります。

2.受託者側のメリット・デメリット

受託会社にとってのOEM契約を締結するメリットとしては、技術や設備を生かして一定の受注を受けられるので、安定した収益が期待できることがあります。また、受託者が、委託者の知的財産権に反しない範囲で製品のデザインを変えて、自社ブランドとして製造販売することで、受託者の自社製品についても売上増加を図ることができる、という点もメリットといえるでしょう。

反面、受託者にとっては、受託者の名前が市場に浸透しない、委託者側に自社の製造技術やノウハウが流出するおそれがある、などのデメリットもあります。

OEM契約とライセンス契約・製造委託契約との違い

OEM契約と類似する契約に、ライセンス契約や製造委託契約があります。具体的にどのような違いがあるのか説明します。

1.OEM契約とライセンス契約の違い

ライセンス契約とは、自社が保有する商標や特許などの知的財産の利用を他社に許諾する契約をいいます。知的財産の利用を許諾された会社(ライセンシー)は、知的財産を保有する会社(ライセンサー)にライセンス料を支払い、当該契約に基づいて、ライセンシーが自社製品として製造、販売を行います。
この点、OEM契約は、委託者(販売元)が自社の知的財産を使用した製品の製造・供給を受託者(製造元)に依頼する契約であり、製品の所有権は委託者に帰属します。対してライセンス契約では、ライセンシーがライセンサーの知的財産の利用許諾を受け、ライセンシー自らが所有権を有する製品を製造・販売する点が異なります。

2.OEM契約と製造委託契約の違い

製造委託契約は、委託者が受託者に対し、委託者の自社製品の製造・供給を委託する契約をいいます。OEM契約は製造委託契約の一種です。

OEM契約以外の製造委託契約として、ODM(Original Design Manufacturing)契約があります。OEM契約では、委託者が主導権を持ち、委託者が製品を企画して、受託者に製造を発注するのに対し、ODM契約では、受託者が製品の企画・設計から製造までを行う点で異なります。

ODM契約は、OEM契約の進化版ともいわれています。ODM契約では、受託者の中にはマーケティング戦略を立案し、複数のブランドの企画製造のみならず物流や販売まで担当する企業もあります。

OEM契約書の記載事項とひな形

OEM契約で契約書を作成する際は、製品の帰属先と製造元が異なることから、所有権の移転や危険負担について特に注意する必要があります。OEM契約書に記載すべき内容について説明した後、契約書のひな型をご紹介します。

1.OEM契約書に記載すべき事項

OEM契約書に記載すべき内容は契約によって異なりますが、主な項目は以下のとおりです。

①取引内容

OEM契約の内容になる製品の製造委託の内容を記載します。詳細について、別紙で説明する場合もあります。

②商標

商標の取り扱いについて、商標権は委託者に帰属すること、委託者の指示する方法で商標を表示すること、受託者が商標を第三者に譲渡等しないこと、及び受託者が商標を当該契約の達成目的以外で使用しないことなどを記載します。

③発注

発注の時期や方法を記載します。毎月の最低発注数を決め、契約書に明記することも多いです。

④所有権と危険負担

危険負担とは、契約成立後に、当事者に責任のない理由で目的物が破損して契約を達成できなくなった場合に、当事者のどちらが損害を負うかという問題です。例えば、受託者が製品を完成させて納品の準備までできた時点で、受託者の倉庫に雷が落ちて製品が全焼した場合に、委託者は代金を支払う義務があるかが問題となります。危険負担は所有権とも関わるため、所有権がいつ移転するかともに、危険の移転時期を明確にすることも大切です。

⑤検査と不合格品の対応

委託者が、納入された製品の仕様や品質があらかじめ当事者間で決められた基準に適合するかどうかにつき、委託者が検査する旨を記載します。不合格だった場合の対応方法についても事前に決めておくことが望ましいでしょう。

⑥契約不適合責任(瑕疵担保責任)と品質保証

検査後の一定期間、委託者が製品の仕様や品質につき契約の内容と違うことを発見した場合に、受託者に対し修補や代金減額などの請求ができる旨を規定します。

⑦製造物責任

製品が原因でユーザーに損害が生じた場合の対応方法を規定します。通常は、まず自社製品に関して生じた損害として委託者が責任追及されますが、原因追及のための受託者との協力体制や、受託者への求償についても定めておくことが大切です。

⑧秘密保持

契約期間中及び契約期間終了後に、相互に知り得た秘密情報を漏えいしないことを約束します。

⑨再委託

受託者が下請けに製造を委託できるか、再委託を認めるかどうかを決めます。

⑩契約解除

当事者の倒産や不正行為など、契約を解除する理由やその方法を記載します。

⑪期限の利益喪失、損害賠償

債務不履行の場合についての期限の利益喪失(金銭支払債務の場合は一括返済する旨)、及び損害が発生した場合の賠償等に関する内容を規定します。

⑫有効期間

契約の有効期間や、延長される場合の手続について記載します。

⑬合意管轄

当事者で紛争になった場合、どこの裁判所で争うかを決めて記載します。自社の本店所在地を管轄する裁判所など、利便性の高い裁判所を定めることが多いです。

2.OEM契約書のひな型

OEM契約書のひな型をご紹介します。OEM契約書に必要な記載事項は、事案によって大きく異なります。ひな型を参考にしながら、特に盛り込みたい事項や特に明らかにしておきたい合意事項を加えるなど、事案の内容や性質に応じてアレンジして下さい。

OEM契約書
株式会社●●(以下「甲」という。)と株式会社▲▲(以下「乙」という。)は、××(以下「本製品」という。)のOEM取引につき以下のとおり合意する。
第1条(取引内容)
1 甲は、別紙仕様書による仕様の本製品の製造を乙に委託する。
2 本製品の仕様について変更する場合は、甲乙協議のうえ別途定めるものとする。
第2条(商標)
1 乙は、甲の指示する方法により、本製品に甲の商標を表示する。
2 乙は、甲の商標を表示した本製品を、本契約で別段の定めがない限り、第三者に譲渡、販売、または貸与しない。
3 乙は、甲の商標を、本契約の目的以外に使用しないものとする。
第3条(発注)
1 本契約の発注は、甲が納入を希望する日の●日前までに、注文書を乙に送付して行う。
2 前項の注文書には、納入期日、数量、発注金額、納入方法等を記載する。
3 甲は、乙に対し、本製品につき、毎月最低●単位の注文をすることを保証する。
第4条(所有権と危険負担)
1 本製品の所有権は、第5条の検査合格により、乙から甲に移転する。
2 本製品の所有権が甲に移転する前に本製品の全部または一部が滅失、毀損、変質したときは、甲の責に帰すべき事由による場合を除いて、乙の負担とする。
第5条(検査)
1 甲は、本製品納入後、ただちに別途定める品質基準に従い本製品の検査を行い、納入日から●日内に結果を書面で乙に通知する。
2 甲が乙に対し、前項の期間内に何らの通知もしないときは、本製品は検査に合格したものとする。
3 検査の結果、不合格となった製品は、乙は、甲乙協議のうえ別途定める期間内に代替品を納入するか、または甲の品質基準を満たすように改善して再納入する。
4 検査の結果、不合格となった製品は、乙は自己の費用と責任で製品を引き取る。
第6条(契約不適合責任と品質保証)
乙は、本製品の検査合格日から起算して●日間、本製品の品質を保証し、当該期間内に本製品の品質、規格などにつき本契約の内容と適合しないこと(以下「契約不適合」という。)が発見された場合は、甲の修補請求および代金減額請求に応じるものとする。ただし、本製品の納入後の甲の重大な過失により契約不適合が発生した場合はこの限りでない。
第7条(製造物責任)
1 本製品の欠陥により第三者の生命、身体または財産に損害が生じ、甲がかかる第三者より損害賠償等の請求を受けまたは受けるおそれが生じた場合には、甲は乙に対しその旨を通知し、甲乙協力して問題の解決に努めるものとする。
2 前項の場合、甲が第三者に損害賠償責任を負担した場合は、甲は乙に対し、被った自己の損害を求償することができる。
第8条(秘密保持)
甲および乙は、相互に、本契約の有効期間中または本契約終了後においても、本契約において知りえた相手方の業務上または技術上の秘密を漏洩してはならない。
第9条(再委託)
乙は、甲に対し、本製品の製造につき乙を補助するすべての下請者の名称、住所および下請者が実施する業務の内容を書面で通知をし、甲の承諾を得なければならない。
第10条(解除事由)
1 甲または乙は、相手方に次の各号の事由の一が生じたときはなんらの催告なしに、本契約をただちに解除することができる。
・重大な過失または背信行為があったとき
・銀行取引停止処分を受けたとき、手形の不渡りが生じたとき
・第三者から仮差押え、仮処分、差押え、滞納処分その他の強制執行処分を申し立てられたとき、破産、民事再生手続き、会社更生手続きまたは特別清算手続きの申立をなし、あるいは申立をなされたとき
・反社会的勢力との関係性を疑わせる事由があったとき
・その他著しく不正な行為があったとき
2 甲または乙は、相手方の債務不履行につき、相当期間を定めてした催告後も是正されないときは、本契約を解除することができる。
第11条(期限の利益喪失事由)
甲または乙について、前条に該当する事由が生じたときは、甲または乙は相手方に対し負担する一切の債務につき期限の利益を失い、ただちに債務の全額を相手方に弁済する。
第12条(有効期間)
本契約の有効期間は、本契約締結の日から●年間とする。ただし、期間満了の●か月前までに、甲乙いずれからも、本契約を終了する旨を書面によって通知しない限りは、更に● 年間延長されるものとし、以後も同様とする。
第13条(専属的合意管轄裁判所)
本契約に関する紛争は、●●地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
本契約の成立を証するため本契約書を2通作成し甲乙各記名押印の上各1通を保有する。
××年×月×日
甲:●●●●印
乙:××××印

OEM契約について弁護士に相談するメリット

OEM契約は、委託者側にとっては自社ブランドの製品の製造を他社にまかせる契約であり、受託者側にとっては自社のノウハウや技術を他社のために使用する契約です。したがって、双方の権利や技術の秘密性や価値が流出するリスクがあります。また、前述のとおり、製造した製品の所有権がいつ移転するのか、及び危険負担や契約不適合責任の問題などについて、問題になる点も多いです。

そのため、OEM契約を締結する場合は、委託者、受託者どちらの立場であっても、自社の権利や技術を守り、不利な条件で契約をしないように、弁護士に相談することが望ましいでしょう。弁護士に相談するメリットについて具体的に説明します。

1.リスク回避の可能性を高めることができる

OEM契約の委託者は、受託者に類似製品を製造されるなどのリスクを負うことになります。そのため、事前に弁護士に相談して、契約書に類似製品製造の禁止などの規定を盛り込むことにより、そのようなリスクを回避することができます。

また、受託者は、自社が製造した製品が委託者に移転することにより、独自の技術やノウハウを吸収されるリスクを負うことになります。そのため、弁護士のアドバイスを受けながら、契約書に秘密保持の条件や技術の転用禁止等の規定を定めることにより、自社の技術の独自性を維持することができます。

2.不利な契約内容を修正してもらえる

OEM契約では、時として一方に不利な契約内容になることがあります。特に受注者側にとっては、委託者から受託者に対する最低発注数を少なく抑えられる、コストダウンを要求されて利益率が低下するという場合があります。弁護士に契約書の内容をチェックしてもらうことにより、事前に不合理に不利な契約内容を見抜き、公平な内容になるよう相手方と交渉することが可能になります。

3.法律違反の契約を回避できる

OEM契約の内容によっては、独占禁止法違反が問題になる場合があります。特に特許や商標を伴うOEM契約では、独占禁止法との関係で問題が生じる可能性があります。弁護士に相談すれば、過去の判例などを参考にしながら、契約内容の妥当性についてチェックを受けることができます。

4.トラブルが発生した場合の対応を依頼できる

OEM契約では、製品にトラブルがあった場合の製造物責任、不可抗力で製品が壊れた場合の危険負担、類似製品の製造等に関するトラブルなど、様々な損害が発生するリスクがあります。また、一定の期間にわたり一定数の発注が行われるため、発生する損害賠償も多額になりがちです。弁護士に相談して代理人として交渉してもらうことにより、自社が不利な立場に陥ることを防ぐことが可能になります。

まとめ

今回は、OEM契約の概要、ライセンス契約や製造委託契約との違い、OEM契約書の記載事項とひな形、契約時に注意すべき点などについて解説しました。

OEM契約を締結する際は、契約内容を精査しておかなければ、将来、多額の損害賠償責任等のリスクを負う可能性もあります。それだけに、事前に起こり得るトラブルを想定し、漏れのない契約書を作成することが求められます。

東京スタートアップ法律事務所では、豊富な企業法務の経験に基づいて、各企業の状況やニーズに合ったOEM契約の締結などのご相談に対応しております。また、OEM契約の相談にとどまらず、契約書の作成や、相手方との間でトラブルが発生した場合の対応など、全面的なサポートが可能です。OEM契約の締結や契約書の作成等に関する相談がございましたら、お気軽にご連絡いただければと思います。

弁護士後藤 亜由夢 東京弁護士会
2007年早稲田大学卒業、公認会計士試験合格、有限責任監査法人トーマツ入所。2017年司法試験合格。2018年弁護士登録。監査法人での経験(会計・内部統制等)を生かしてベンチャー支援に取り組んでいる。