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代表弁護士 中川 浩秀

金融証券取引法(金商法)とは?対象範囲や事例、留意点を解説

インターネットやスマートフォンの普及に伴い、事業を行うために多額の資本を要する時代ではなくなりました。株式会社の最低資本金の要件も緩和され、以前よりも事業を行うことの資本的な障壁は下がってきました。

しかし、いざ事業を開始するとなると意識しなければならないのが法律の規制です。日常生活を営んでいるとそれほど意識しないかもしれませんが、事業を行うということは、多くの法律と密接に関わっていくことに他なりません。

その中でも、金融証券取引法(以下「金商法」と言います。)は欠かす事のできない法律の1つです。

そこで今回は、事業への資本的な参入障壁が下がった現在だからこそ留意しておきたい、金商法の概要について解説していきます。

金商法とは?

まず、金商法の概要についてです。正式名称は「金融商品取引法」です。

以前は「証券取引法」とも呼ばれていたので、長らくビジネスの現場に身を置かれている方であれば、こちらの名称の方が馴染みあるかもしれません。

金商法とは、金融商品の売買に関する金融商品市場の適切な運営や、そこに関わる投資家の保護、それに伴う有価証券の情報開示制度の整備を目的とした法律です。

2006年に改正された法律ですが、それ以前にも金融商品に関する法律は定められていまして、それらをまとめて規定されました。

また、政府の進める「副業解禁」や「働き方改革」によって、個人レベルでの働き方の改善が検討されていますが、従事する企業での対応は進んでいるでしょうか。
すでに残業時間の短縮や在宅ワークなどの対応が進んでいる企業は多くなってきています。

このような政策の計らいや個人レベルの働き方が注目されている背景もあり、金融市場を取り巻く経済環境は日進月歩で変化しています。

それに伴い、金商法に関しても改正が進んでおり、2019年にも改正が行われています

金商法の目的とは?

近年の私たちを取り巻く金融市場は変化していますが、その変化によってどのような弊害が発生しているのかについて、まずは見てきましょう。

金融市場の利用者の視点からすると、金融技術の発展によって利用者の保護対象になっていない金融商品が出現して被害を受ける方が増えています。
例えば、ブロックチェーン技術の台頭や情報商材はその最たる存在です。

これに伴って、利用者の保護や、安全に投資するための環境が必要になってきます。

また、市場経済を活発化するという視点も重要です。
どういうことかというと、現在日本人の家計金融資産は預金が中心です。現在日本の預金残高は過去最高で1000兆円を超えています
眠った資産を循環させ経済を活性化するためにも、「貯蓄から投資へ」のスローガンのもと法の整備が進められています。

最後に国際化の視点も重要です。
金融市場のグローバル化が進む中、東南アジアをはじめとするいわゆる後進国と呼ばれていた国々が目覚ましい経済成長を遂げています。
それらの国々に遅れを取らないためにも、国内の市場における経済活動を活発にする必要があるのです。

以上の背景があり、金融商品に関する法の整備が必要になってきているという訳です。

金商法の内容

先述したような背景があり、現状への対応のために「金商法」が改正されましたが、その目的は大きく分けると3つ挙げられます。

それでは「金商法」の中身について具体的に見ていきましょう。

1. 金融商品市場の適切な運営

まず、金融商品とは、大きく分けると「有価証券」と「デリバティブ取引」に分類され、これらを取引する市場のことを金融商品市場と呼びます。
これらを正確に取引するためには、金融市場の適切な運営は欠かせません。金融商品の対象については後述します。

2. 投資家の保護

こちらは(1)と同様に、金融商品に対して適正に投資家が出資できるようにするために定義されています。
投資は不確実性の強い事柄であり、値動きのリスクがあるので、投資=儲け、にはなりません。

それに加え、さらに市場において正当な取引が行われない場合、投資する投資家はいなくなってします。
それを避けるため、以前よりも規制の対象となる金融商品が拡大したことで投資家の保護につながっています。

投資は、経済を活性化し、社会をより良くしていくための重要な要素なのです。

3. 有価証券の情報開示制度

まず、有価証券報告書についてですが、こちらは金商法に基づき有価証券を発行する企業が外部への情報開示のために作成する書類のことです。
何らかの形で、投資をするにしても情報開示がされていない場合、その企業のことを知る術がないので、こちらを確認しなくてはなりません。

内容としては、企業の概況・事業の状況、設備の状況・提出会社の状況(株式等の状況や株価の推移等)・経理の状況が書かれています。
これを元に、投資家をはじめとする出資者は出資するかしないか、するとしてその額等を検討します。

もともと企業の先行きというのは不確実性の高い事象です。その上、情報が開示されておらず不透明というのでは出資を行うか行わないかの判断ができません。出資者に出資の判断基準を与え出資を呼び込みやすくするためにも必要な資料です。

金商法の対象範囲は?

金商法の対象となる金融商品の取引は、「有価証券取引」と「デリバティブ取引」がありります。それぞれ見ていきましょう。

1. 有価証券

「有価証券」とは、金商法2条1項に各号として列挙された証券又は証書をいいます。代表的なものとしては、国債証券(1号)、地方債証券(2号)、社債券(5号)などの債券、株券・新株予約権証券(9号)の株式に関するもの、投資信託の受益証券(10号)などの資産運用型のものなどがあります。また、同法2条2項には、投資者の保護の観点から、有価証券とみなされる権利が「みなし有価証券」として定められています。例えば、上場株式では、現在、株券は発行されませんので、株券が発行されていない株式は、株券に表示されるべき権利として有価証券とみなされることになります。

それでは、有価証券のうち、代表的なものについて、以下、詳しく見ていきます。

株式

株式とは、株式会社を設立する際や、事業運営にあたって密接に関係してくる有価証券の1つです。
企業における事業運営のため、さらなる資金調達が必要になってくる場合があり、そんな時に発行されるのが株式です。

株式会社が資金調達のために、株主(出資者)を募って株式を発行し、株主は資金を提供することで収益(リターン)を期待することができます。
さらに、株式は金融機関(銀行)からの融資とは異なり、将来的な返済義務がありません。

つまり、株主は返済保証がない分、単なる融資よりも多額のリターンを期待することができるので、株主になるという仕組みになっています。

企業は、株式を発行することによって、このように返済義務がない出資を受けることができます。

しかし、それと共に実際の現場では株主へのリターンのプレッシャーも抱えることになります。
株式は基本的に、株式会社が存続する限り払い戻されることはなく、資金の回収を図る場合には、株式市場を通して売却する必要があります。

そのため、正確に株式の売買を行うために、適切な金融商品市場の運営が必要です。
そこで、株主(出資者)が留意しておきたい点は、返済を求めない出資の恩恵として、貸付よりも多額のリターンが期待できる一方で、その企業が倒産してしまった場合、株式の価値がゼロになるということです。

つまり、金融機関の融資とは異なり、元本保証がなく出資した金額分の損失を被る可能性があるということになります。

他には、株主総会へ出席する議決権を得ることや、株主優待制度のある企業の株主であれば株主優待制度の恩恵を受けることもできます。

債券

株式が事業における返済義務がなく大きなリターンの期待できる有価証券だったのに対し、債券は定期的に利子を受け取ることができ、満期になると元本が全額戻ってくる有価証券です。
株式と異なり、対象は幅広く、国や自治体、政府機関、金融機関に加え企業も含まれています。
基本的に、元本の返済や利子の支払いが約束されているので、株式よりもリスクが低い金融商品になっています。

しかし、債券には信用リスク(クレジットリスク)が存在するので、発行者である企業目線からすると、信用力が求められる分難易度の高い有価証券になります。

出資者目線では、比較的安定かつ相応の利回りが期待できます。
というのも、債券の中には種類があり、信用リスクの高い有価証券であれば利回りが高く、低い有価証券であれば利回りが低く、自らの意思で求める有価証券を細かに設定できるからです。

投資信託

株式や債券を運用するために、専門家が投資家から集めた資金で運用するのが投資信託です。投資信託及び投資法人に関する法律に基づく発行される投資信託の受益証券や投資法人の投資証券が金商法上の有価証券とされています。
運用する株式や債券の銘柄や売買におけるタイミングは、基本的に専門家が情報収集し、それを元に分析して行われます。

投資信託は、1万円前後から購入することができるので、株式や債券に比べるとリスクが低い傾向があります。

債券と同様に、豊富なジャンルから選択することが可能で、専門トレーダーが運用するので比較的運用リスクが低いのが特徴です。

年金・保険

有価証券としての年金・保険は、保険会社と私的に交わす年金保険を指し、特に投資性の強い変額保険年金などが対象となります。
老後の生活費の確保や経済的なリスクの回避に繋がる有価証券で、人生100年時代と言われている昨今は、さらに注目が高まっている有価証券でもあります。

2. デリバティブ取引

デリバティブ取引とは、金融商品から派生した商品で、その元となる株式や外国為替などを原資産として先物取引、オプション取引、スワップ取引などがあります。デリバティブでは、少額の資金で大きな取引ができるため、利益を大きく狙える一方、資金以上の損失を被る可能性がある取引です。

金商法の禁止行為や罰則は?

「金商法」の恩恵を受けるためにも、最低限守らなくてはいけない規制が存在します。
大きく分けて、5つがあげられるので順に解説していきます。

1. 標識の提示

まずは、標識の提示に関する規則です。営業所や事務所の見やすい場所に標識を提示しなくてはいけません。
見やすいと言っても抽象的なので、留意しておかなくてはいけません。

2. 広告規制

次が、広告に関する規則です。金融商品を販売・勧誘する場合は、業者等の商号、名称又は氏名、金融商品取引業者である旨及び登録番号、顧客の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものを記載しなくてはいけません。

利益の見込みや事実に反する表示は虚偽の取引になるので、注意しましょう。
また、以前、金融商品の広告において、商品リスクを極端に記載して顧客を惑わす問題が発生しました。
リスク情報はもちろん、手数料など取引に関わる事柄を明瞭に記載することが義務付けられています。

具体的には、リスク情報を広告中の文字と著しく異ならないサイズでの記載、事実に反することはもちろん、誤認を生むような記載を避けなくてはいけません。

3. 書面の交付

次が、書面交付の義務です。契約締結前と契約締結時に書面を交付することが求められています。標識同様、商号等や、金融商品取引業者の登録番号等の明記が必要です。
こちらは、金融商品取引契約の概要に加え、手数料等の顧客が支払うべき対価や相場等の変動により損失が生ずる可能性を記載する必要があります。

さらに、書面による説明はもちろん、顧客の知識や経験に照らし合わせて、説明責任が必要になります。

4. 虚偽や不確実性事項等による勧誘

次が、虚偽告知による勧誘行為や、不確実事項について断定的な判断を伝えたり、確実であると誤解させるおそれのあることを告げたりして勧誘することです。
勧誘を求めていない顧客に、訪問したり、電話をかけて勧誘したり、契約を断ったにもかかわらず勧誘を継続してはいけません。

5. 適合性の原則

最後が、適合性の原則です。これは、金融商品取引業者が取引について顧客の知識や経験、財産の状況、契約締結の目的に照らし合わせ、不適当な勧誘を行ってはならないという原則のことを指します。

つまり、顧客の経験や知識不足につけ込んで不当な勧誘を行うなど、出資者保護に欠けることになる行為が禁止されています。

6. 罰則について

ここからは、罰則について解説します。
財産上の利益を得る目的で、虚偽の情報を伝えることや、相場操縦によって相場を変動させ取引を行った場合、10年以下の懲役または、3000万円以下の罰金が課せられます。

インサイダー取引規制違反や有価証券報告書の不提出・有価証券届出書の不提出の募集等による取引においては、5年以下の懲役または、500万円以下の罰金が課せられます。

最後が、重要事項に虚偽記載のある有価証券届出書などの提出は、10年以下の懲役または、1000万円以下の罰金が課せられます。

基本的に人道的に反する行為は、当然罰則が与えられます。

法人としての金商法との関わりについて

法人として株式や債券の発行をするとなると、先述した事柄が絡んできます。
逆に事業投資を受ける場合でも、これらは密接に関係してくるので、注意が必要です。

例えば、私募であっても開示責任は発生しますし、適用されるのでその点を留意しましょう。

具体的には、発行総額又は売出総額が1億円未満で1000万超の場合は有価証券通知書の事前提出義務があり、発行総額又は売出総額が1億円以上の場合は有価証券届出書の事前提出義務があります。

また、最近台頭が目覚ましいクラウドファンディングでの資金調達に関しては、「電子募集取扱業務」に該当し、金商法に基づく登録の必要性も出てきます。

というのも、クラウドファンディング も金商法は改正後に登録制になり、自発的に内閣に申請、登録を行わなければ業務を行なってはいけないからです。

証券取引法から金商法へ

金商法の概要について解説してきましたが、以前の証券取引法からの変更点について解説していきます。
平成19年9月末に施行され、名称は「証券取引法」から「金融商品取引法」へと変更されています。

法律の改正に関しては、金融先物取引法、外国証券業者に関する法律、有価証券に係る投資顧問業の規則等に関する法律、抵当証券業の規則に関する法律が廃止され統合されました。

また、以前は証券取引所、金融先物取引所と呼ばれていたものが、金融商品取引所に改名されました。

取引業者名に関しては、証券会社、金融先物取引業者、商品投資販売業者、信託受益権販売業者、投資顧問業者などが金融商品取引業者に改名されています。

これらが変更されることによって、以前は複雑だった金融商品の選定が体系化され法の隙間をかいくぐって取引されてしまうということが減少しました。

しかし、テクノロジーの台頭は顕著で、仮想通貨など新規性のある金融商品が次々に登場してきており、その流れは今後も予想されます。その都度金商法の改正や法整備が求められます。

また、金融商品を取り扱う事業者が金融商品取引業者として明確に規定されたので、内閣総理大臣に申請・登録した業者以外は取引を行う権限がありません。

そうすることで、より透明性のある取引が行われるようになりました。

さらに、様々なルールが強化され、リスクや手数料の表示の明確化によって比較的誤認のない取引が行われるようにもなりました。
また、対象者が投資を専門にしている特定投資家か、一般投資家かによって保護ルールが異なるようになりました。

これによって特定投資家は利用者保護のルールが適用されなくなりました。
特定投資家に移行できる一般投資家(金融商品取引業者等との一年以上の取引経験と純資産額が3億円以上かつ金融資産の合計額が3億円以上と見込まれる個人)を除いて、個人は全て一般投資家とされています。

まとめ

以上が、金商法に関する概要、目的、対象範囲、禁止事項や罰則等についてでした。
インターネットやスマートフォンの隆盛は、確実に我々の生活を豊かにして、事業を行う際のハードルも下げています。

金商法は事業を行う際には密接に関係してくる法律です。
また次々に新規性のあるビジネスが台頭し、それに対応する法改正・法整備が必要になってきています。

金商法を知ることで、事業を優位に進められることは間違いありません。
今回の記事をご自身の事業に役立てていただけますと幸いです。
また、金商法が問題となりそうな場面では、専門家である弁護士に相談しておくと良いでしょう。

代表弁護士中川 浩秀 東京弁護士会
2010年司法試験合格。2011年弁護士登録。弁護士法人東京スタートアップ法律事務所の代表弁護士。同事務所の理念である「Update Japan」を実現するため、日々ベンチャー・スタートアップ法務に取り組んでいる。