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投稿日: 更新日: 弁護士 宮地 政和

特約店契約書のひな型と記載事項|代理店契約との違いも解説

特約店契約とは

特約店契約は、メーカーが店舗(特約店)と契約を結び、一定地域における商品やサービスの販売代理権を付与するための契約です。特約店契約は、代理店契約の一種ですが、通常の代理店にはない優遇措置を受けられるという特徴があります。

特約店は、メーカーからの依頼で商品等の販売を代行する外部チームのような役割を担います。昔ながらの街の電気屋や酒店などが典型例です。

特約店制度は日本特有の流通システムの一つで、元々はメーカー側が自社の商品等を全国的に安定して販売することを目的として、店舗を自社の流通経路に組み込む形で主導的に進めてきた業態として知られています。しかし、昨今は、商品数や商品種類の増加、価格競争の激化、販売チャネルの多様化などにより、卸売をする店舗側が力をつけてきたこともあり、特約店制度より自由な販売方式が選ばれることも増えています。

類似の契約との違い

1.代理店契約との違い

代理店契約は、メーカーと契約を結んだ店舗が、特定の商品やサービスの販売を代行する契約のことです。保険代理店が典型例で、保険会社が提供した保険商品を、保険代理店が営業して販売する関係にあります。

2.フランチャイズ契約との違い

フランチャイズ契約は、メーカーと契約を結んだ店舗が、営業活動を行う契約をいいます。コンビニエンスストアや居酒屋チェーンなどが典型例です。メーカー側は有名な大手企業であることも多く、店舗側には、ブランド力を生かせる、広告や宣伝に費用をかける必要がない、運営や経営のノウハウが学べる等のメリットがあります。

フランチャイズ契約も、特約店契約と同様、代理店契約の一種です。ブランド名を利用できる点では、特約店契約とフランチャイズ契約は類似しています。しかし、特約店契約の場合、メーカーから商品・サービス、販売代理権の提供を受けるだけで、販売手法等に関する制約を受けないのに対し、フランチャイズ契約の場合、商品・サービスだけでなくビジネスモデルや運営マニュアルなどのノウハウも提供され、マニュアルに忠実に従って営業しなければならない点が異なります。また、特約店契約を含む代理店契約では独立性が保たれるのに対して、フランチャイズ契約では原則としてフランチャイザーの傘下に入る点、特約店契約の場合よりも高額のロイヤリティが必要になる点でも異なります。

特約店契約のメリット・デメリット

1.メリット

特約店契約を結ぶメリットとしては、経営が安定することがあります。
メーカーの特約店になることにより、広告等に「特約店」であることを記載できるため、販売活動をスムーズに行うことができるというメリットがあります。また、契約内容等によっては、以下のような特典が受けられるケースもあります。

  • 新製品の情報を特別に提供される
  • 資金援助や報奨金が支給される
  • キャッシュバックを受けられる

2.デメリット

特約店契約のデメリットとしては、営業活動の自由度が低下することが挙げられます。
契約内容によっては、競合メーカーの製品の取扱いができない場合もあります。また、通常の代理店から特約店になる際に、割増手数料の支払いや一定以上の契約件数の獲得を求められる場合もあります。

特約店契約締結時の注意点

特約店契約を締結する際は、関連する法律や想定されるリスク等について注意が必要です。特に注意が必要な点について説明します。

1.特約店契約と独占禁止法

特約店契約を結ぶ場合、契約内容によっては独占禁止法に抵触する可能性があるので注意が必要です。
独占禁止法は、正式名称を「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」といい、公正で自由な競争を促進して事業者が自主的かつ自由に活動できるようにすること、一企業が商品サービスを独占販売することで価格が上がり消費者にデメリットが生じることを防ぐことを目的としています。そのため、企業競争を妨げるような市場の私的独占や不正な取引等が禁止されています。

特約店契約に関しては、「独占販売の契約」に該当するかが問題になります。その判断基準としては、価格統制があるか否かがポイントになります。具体的には、特約店側に価格の選択肢等の自由度がない場合に、独占禁止法違反に当たると判断される可能性があります。また、販売先を制限することも独占禁止法に抵触する恐れがあるとされているため、特約店を一社のみに限定すると独占禁止法違反となる可能性があることに注意が必要です。

2.契約上の条件の内容に要注意

特約店契約は、代理店契約の一種で、メーカーと特約店が特約店契約書を締結し、契約内容に従って特約店が営業活動を代行し、その報酬として営業活動に見合う対価を受領します。
ただし、特約店契約には、通常の代理店契約とは異なり、特別な条件が設けられている場合が多いです。例えば、メーカーのブランド名を広告や看板に提示して、特約店だとアピールできるようにすること等があります。特別な条件を付与される代わりに、特約店には一定の売上目標(ノルマ)が課される場合があります。また、フランチャイズ契約のように一定のロイヤリティの支払いを求められる場合もあります。

メーカーのブランド名を利用できるのは、営業力に自信がない特約店にとっては大きなメリットになりますが、契約上の条件についてしっかり確認することが大切です。

3.相手会社が倒産した場合の回収手段

特約店契約を結ぶメーカーがたとえ大企業であっても、何が起こるか分からない昨今の社会情勢からすると、想定されるリスクに対してはしっかりと事前にヘッジしておくことが肝要といえます。具体的には、メーカーが倒産した場合の途中解約や出荷停止、期限の利益の喪失や相殺、交付を受けている商品の帰属先、担保の確保等について契約書に定めることを検討することが望ましいでしょう。

特約店契約書のひな型とチェックすべきポイント

1.特約店契約書のひな型

こちらは、メーカーが製造した商品を特約店が販売するタイプの特約店契約書の例です。

特約店契約書
株式会社A(以下「甲」という)と、株式会社B(以下「乙」という)は、甲が製造する商品の販売に関する特約店契約(以下「本契約」という)を締結する。
(目的)
第1条 甲は、別紙記載の商品(以下「本件商品」という)の販売に関し、乙を特約店に指定し、乙に対して商品を供給し、第2条に定める地域において独占的に本件商品を販売する権利を与える。乙は、本契約に従い、自己の名と計算で本件商品の販売を行う。
(販売地域等)
第2条 乙が本件商品を独占的に販売できる地域(以下「本件販売地域」という)は、●●県●●市及び同県▲▲市とする。
2 甲は、本件販売地域では自ら本件商品を販売せず、乙以外を特約店に指定しない。
3 乙は、本件販売地域において積極的に本件商品の販売に努め、本件販売地域以外では積極的な販売活動を行わない。ただし、本件販売地域外の顧客から、本件商品の販売を求められた場合、応じることは自由とする。
(個別契約)
第3条 本件商品の数量、単価、代金総額、納期、納入場所、支払期日、発注日そのほかの取引条件は、甲乙協議のうえ、個別契約で定めるものとする。
2 本契約は、甲乙間において締結される個別契約に適用する。
(納入)
第4条 甲は、個別契約にしたがって、納期に、納入場所に本件商品を納入する。
2 甲は、前項の納入をできない事由が生じたとき、またはそのおそれがあるときは、直ちにその事由、納入予定などを乙に申し出、甲乙協議のうえ、対応する。
3 納期に本件商品が納入されなかった場合、甲は乙に対し、乙の被った損害を賠償する。ただし、その損害につき乙の責めに帰すべき事由があるときは、その範囲において甲はその責任を負わず、不可抗力によるときは、甲乙協議のうえ、甲の責任を決する。
(検査・検収)
第5条 乙は、本件商品が納入されたあと、甲乙が別途協議して定める基準に従い、直ちにその品質、数量などの検査を行う。
2 乙は、本件商品が前項の検査に合格した場合、甲に対して検収通知を交付し、これにより本件商品の引渡しは完了し、所有権は移転するものとする。
3 乙は、本件商品が第1項の検査に合格しなかった場合、甲に対し、その理由を記載した書面をもって不合格を通知するものとし、甲は、この通知を受けたときは、無償で修理、代品または数量不足分の納入、そのほか乙の指示する措置をとらなければならない。
4 乙が甲に対して、本件商品の納入後●日以内に、合格または不合格の通知をしない場合、本件商品の納入時に、第2項の定めるとおり所有権が移転したものとする。
(危険負担)
第6条 本件商品の所有権が移転する前に、本件商品の全部または一部が滅失または損傷した場合、乙の責めに帰すべき事由による場合を除いて、その損害は甲が負担する。
(代金の支払)
第7条 乙は甲に対して、毎月●日までに所有権が移転した本件商品の代金を、翌月●日までに、甲指定の下記口座に振り込む方法で支払う。振込手数料は、乙の負担とする。
【銀行名】××銀行 ××支店 【口座種類】××預金 【口座番号】×××××
【口座名義人】株式会社A
(契約不適合責任)
第8条 乙が、本件商品の引渡しを受けたときから6か月以内に、引渡時の検査では容易に発見できなかった瑕疵を発見したときは、甲は乙の指定にしたがい、無償で、修理、代品の納入、または代金減額の措置をとらなければならない。
(権利の譲渡禁止等)
第9条 甲及び乙は、事前に相手方の書面による承諾を得ないで、本契約に基づく権利または義務の全部または一部を第三者に譲渡し、承継させまたは担保に供してはならない。
(解除)
第10条 甲または乙が、以下の各号のいずれかに該当したときは、相手方は催告および自己の債務の履行の提供をしないで、直ちに本契約または個別契約の全部または一部を解除することができる。
(1)本契約または個別契約の一つにでも違反したとき
(2)監督官庁から営業停止または営業免許もしくは営業登録取消等の処分を受けたとき
(3)差押、仮差押、仮処分、強制執行、担保権の実行としての競売、租税滞納処分そのほかこれらに準じる手続が開始されたとき
(4)自ら振出しまたは引受けた手形・小切手が不渡りや支払停止状態に至ったとき
(5)破産、民事再生、会社更生または特別清算の手続開始の申立てをした/されたとき
(6)解散、合併、事業の全部または重要な一部の譲渡を決議したとき
(7)そのほか、資産、信用または支払能力に重大な変更を生じたとき
(合意管轄)
第11条 甲および乙は、本契約に関し裁判上の紛争が生じたときは、●●地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
(協議事項)
第12条 本契約に定めのない事項については、甲乙誠意をもって協議し、決定する。
本契約締結の証として、本書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ、各1通を保有する。
××年××月××日
甲  ○○県○○市○○町○丁目○番○号
株式会社 A
代表取締役  ○○ ○○
乙  ○○県○○市○○町○丁目○番○号
株式会社 B
代表取締役  ○○ ○○

2.チェックすべきポイント

特約店契約書を作成する時や特約店契約書にサインする時に、特に注意が必要なポイントについて説明します。

①独占的な販売店か

商品サービスを販売できるのが、特約店が販売を行う一定地域において、その特約店に限られるか(独占的な特約店)、複数の特約店が販売できるか(非独占的な特約店)を確認しましょう。また、メーカー自身が販売できるかという点も確認してください。

②販売方法

特約店が商品やサービスを販売するにあたり、商品をメーカーから買い取るのか、販売の媒介をするだけなのか、詳しく確認しておきましょう。商品を買い取る場合は特約店側が在庫を抱えるリスクが生じる反面、独占禁止法で販売代金の拘束を受けにくいというメリットがあります。

③ブランドロゴの利用の確認

特約店は、メーカーの特約店であることを広告等に表示できる点に大きなメリットがありますが、商品のロゴやブランド名等をどの程度利用できるのか確認しておきましょう。通常、ブランドの価値を維持したいメーカー側から細かい指定がされることが多いですが、販売店側も販売方法の工夫をするのにロゴを使用したい場合に備えて、事前通知の方法などを定めておくことをおすすめします。

④製造元との直接取引の可否の確認

メーカーとしては、販売する特約店が製造元と直接取引をすることを阻止したいのが通常です。契約書には、その旨の記載や違反した場合のペナルティが記載されるので、特約店側としても確認しておきましょう。

⑤競合製品の取り扱いの確認

特約店が扱う商品を、本契約のメーカーの商品に限定するのか、他社の競業商品の取り扱いを認めるのか確認します。類似商品を扱うことでラインナップを増やして販売先を拡大するのか、一定の商品に絞ることでブランド価値を挙げて販売力を高めるのか、販売戦略によって希望する対応が異なるため、十分検討した上で合意しましょう。

まとめ

今回は、特約店契約の概要、代理店契約等の類似の契約との違い、特約店契約締結時の注意点、特約店契約書のひな型と記載事項などについて解説しました。

「相手は大企業だから」などという理由で内容を十分に精査しないまま特約店契約を結ぶと、将来、予想外の不利益を被るおそれもあります。契約内容に不明な点がある場合、専門家に相談して疑問点を解消しておくことが重要です。

東京スタートアップ法律事務所では、豊富な企業法務の経験に基づいて、各企業の状況や方針に応じたサポートを提供しております。特約店契約書等のリーガルチェック、特約店契約以外の代理店契約やフランチャイズ契約に関するご相談等にも対応しておりますので、お気軽にご連絡をいただければと思います。

弁護士宮地 政和 第二東京弁護士会
弁護士登録後、都内の法律事務所に所属し、主にマレーシアやインドネシアにおける日系企業をサポート。その後、大手信販会社や金融機関に所属し、信販・クレジットカード・リース等の業務に関する法務や国内外の子会社を含む組織全体のコンプライアンス関連の業務、発電事業のプロジェクトファイナンスに関する業務を経験している。