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投稿日: 弁護士 藤川 新

取引先が倒産した際の未払い代金回収法|売掛金などの債権回収に必要な対策とは

帝国データバンクの調査によると、新型コロナウィルスの影響による倒産件数は、全国で540件を超えました。飲食店やホテル旅館業を筆頭に、負債総額は2630億円を超えています。倒産件数の増加に伴い、取引先が受ける影響は大きくなる一方です。

また、新型コロナウィルスの影響に限らず、昨今の不況や不安定な経済状況の中、倒産した取引先から未払い代金が回収できない等の理由で、経営状況に支障が生じた会社も少なくありません。未払い代金を回収するためには、十分な情報収集と迅速な対応が求められます。
今回は、取引先が倒産した場合に、売掛金などの債権を回収する方法や、連鎖倒産等の悪影響を最小限に抑えるための対策などについて解説します。

取引先が倒産した際に確認すべき3つの事項

通常、企業が倒産した場合、その企業に対して債権を持っている債権者が、一斉に対応を開始します。適切な対応を迅速に取るために、まずは、正確な情報を得ることが重要です。取引先が倒産した際、速やかに確認すべき事項について説明します。

1.取引先が事業を続けているかどうか

取引先が倒産したらしいという話を聞いた場合、まずは、その真偽を確認する必要があります。経営状況の悪化を倒産と勘違いしている場合もあるので、倒産手続きを申し立てているのかを調べましょう。倒産といっても営業を続けているか否かでその後の法的手続が異なるので、現在の営業状況について確認することが大切です。取引先の本社や事務所などを訪問する、代表者や担当者に連絡をするなどして、正確な情報を収集して下さい。

2.倒産手続きが再建型か清算型か

倒産には複数の方法があります。取引先が選択した倒産方法により、未回収債権を回収する方法が異なります。倒産は、大きく分けると以下の2つの種類があります。

  • 再建型(会社更生、民事再生など)
    営業を継続し、債権者への支払いを猶予してもらいながら再建を図る方法
  • 清算型(破産、特別清算など)
    営業を停止して清算を図る方法

再建型の倒産方法の場合、一般的に営業が継続されます。そのため、取引先との取引継続を前提に、未回収の債権を回収することになります。

清算型の倒産方法の場合、取引先は会社の全財産を換金して、債権者や株主に分配し、消滅するのが通常です。しかし、配当金は僅少であることが多く、未回収債権の全額を回収することは難しい場合が多いです。「当社は本日をもって事業を停止し、近日中に裁判所に破産手続きを申し立てる予定です」などという破産予定通知や、支払停止する旨の通知が送られてくる場合もあります。

取引先の限られた資産から可能な限り多くの未回収債権を回収するためにも、倒産方法を確認し、その方法に応じた対応を行うことが大切です。

3.未回収の債権の額

取引先が倒産したという事実を確認したら、速やかに未回収債権の内容をリストアップします。リストには以下の内容を必ず含めて下さい。

  • 債権の種類(売掛金か手形か)
  • 金額
  • 発生日
  • 担保の有無

債権には時効があるので、発生日は必ず確認して下さい。また、取引先と締結した売買契約書や請求書などの契約書類もまとめておくとよいでしょう。

倒産後に未払い代金を回収する6つの方法

倒産後に、未回収の債権の全額を回収するのは難しいのが実情ですが、法的手段を尽くして可能な限り多く回収しましょう。未払いの債権を回収するための具体的な方法について説明します。

1.買掛金などがある場合は相殺する

取引先に対して買掛金などの債務がある場合には、債権と債務を相殺することによって結果的に債権を回収するのと同様の効果を得ることができます。

相殺は、相手方である取引先に対して相殺の意思表示をすることで成立します。相殺の意思表示は、配達証明付き内容証明郵便で通知する、取引先との間で合意書を作成するなどの方法により行うのが通常です。相殺の意思表示は以下のタイミングで行う必要があります。

  • 再建型の倒産の場合:債権届出期間中
  • 清算型の倒産の場合:破産手続き中

取引先の破産手続の開始が決定した後、支払停止を知った後、破産申立を知った後等に発生した債権・債務との相殺は原則禁止されています。

相殺可能な債権か否か、相殺する債権の範囲、意思表示の時期などを正確に判断し、法的に有効な相殺の意思表示をするためには、専門的な知識が求められるため、弁護士に相談することをおすすめします。

2.商品の引き上げをする

取引先が買主である売買契約において、買主である取引先が代金を完済するまで、商品の所有権を売主に留める取り決めをしている場合があります。その場合は、取引先が倒産して、代金が未払だった際に、商品を引き上げることが可能です。これを「所有権留保」といいます。

ただし、商品の引き上げをする際には、取引先の了解を得ることが必須です。所有権留保付きの売買契約を締結していた場合でも、勝手に商品を引き上げると、窃盗罪に問われるおそれがあります。将来的なトラブルを回避するためには、引き上げの合意を書面化しておくことが大切です。

3.担保権を実行する

取引先に対する債権に担保権をつけている場合、倒産手続の中でも考慮してもらえることが多く、担保権を持たないその他の一般債権者よりも優先して債権を回収することができる可能性があります。取引先の破産手続開始決定後も、原則として担保権は制限なく行使できます。ただし、会社更生手続の場合は、担保権の実行が制限されるので注意が必要です。

担保権には、抵当権、根抵当権、先取特権、留置権、譲渡担保権、質権などがあります。代表的なのが、債務者の不動産を担保にする抵当権ですが、抵当権を実行して債権を回収する際は、抵当権の設定登記に関する登記簿謄本を用いて裁判所に競売の申立てを行います。

担保がなくても、保証人がいる場合、保証人から債権を回収できる可能性があります。取引先が倒産した場合は、担保権と保証人の有無を確認することが大切です。

4.差押え・強制執行を行う

破産の申立等の法的手続が取られる前であれば、取引先の財産に対して仮差押え等の保全手続をすることが可能な場合もあります。

取引先と作成した公正証書に基づいて強制執行するなどの方法を検討してもよいでしょう。具体的には、公証人が作成した公正証書を取引先と交わし、契約書に「期日までに代金を払わず未回収の債権が発生した場合は、強制執行手続きを受けることを同意する」旨を記載することにより、訴訟手続きを経ることなく、取引先の財産を差し押さえて回収を図ることができます。

ただし、取引先が、破産などの法的手続を行った場合は、強制執行や保全手続の効力は消滅するので、注意が必要です。

5.動産売買先取特権を利用する

動産売買先取特権とは、動産を売却した人が代金と利息を優先的に回収できる権利のことをいいます。動産売買先取特権は、倒産手続の中で優位性があり、他の債権者よりも優先的に弁済を受けることができます。また、取引先が破産手続を取った場合でも、別個に行使することが可能です。

動産売買先取特権は、動産が買主である取引先のもとにあるか、既に転売されているかで法的手続が異なり、売買契約や納品の事実の証明が必要となります。必要な書類を探した上で弁護士に相談してください。

6.債権譲渡を行う

倒産した取引先が、第三者に対して金銭債権を持っている場合、その債権を譲り受けて第三者に行使することを検討してもよいでしょう。債権譲渡を受ける場合は、債権譲渡をしたことを、取引先から第三者に確定日付ある証書で知らせてもらう必要があります。

ただし、取引先が、支払停止や、破産申立てをする直前・直後に債権譲渡を行い、その後、破産するなどした場合には、注意が必要です。他の債権者から、不平等だとして詐害行為取消権や否認権を行使され、債権譲渡の効果自体が否定される場合もあります

取引先から債権を回収できる見込みがない場合には、取引先に対する債権を債権回収会社等の第三者に譲渡することも検討しましょう。債権額より低い金額で譲渡することになりますが、多少なりともプラスになります。また、自分で債権回収に奔走する必要がなくなるというメリットもあります。

未払い売掛金が回収できない場合の対処法

上記のような方法によっても未払い代金や売掛金が回収できない場合、自社への影響を最小限に食い止めて連鎖倒産のリスクを回避することが重要です。具体的な対処法について説明します。

1.税金負担を軽減させる

取引先が倒産して、売掛金が未回収になった場合でも、未回収の売掛金は、売上として計上されるため、税金がかかります。事実上、売掛金を回収できる見込みがない場合には、売掛金の放棄・損金処理をすることで、税金がかかることを回避することが可能です。

損金処理をすると、処理した分は課税所得から外れ、課税を避けられます。売掛金を放棄する場合は、「債権放棄通知書」を作成して、債務者である取引先に通知するのが一般的です。書面を送って意思表示したことを証拠化するために、内容証明郵便を利用して通知することが望ましいでしょう。具体的な書き方については、以下のテンプレートを参考にして下さい。

債務者(取引先)の住所
株式会社××
代表取締役××××
※※年※月※日
※※年※月※日
自社住所
株式会社●●
代表取締役●●●●
債権放棄通知書
株式会社●●(以下甲とする)は、株式会社××(以下乙とする)に対して有する売掛金債権について、諸般の事情に照らし、本書面をもって債権の全額を放棄します。
契約日:▲▲年▲月▲日
契約内容:商品▲▲
売掛金額:金▲▲▲万円
引渡日:▲▲年▲月▲日
売掛金支払期限:▲▲年▲月▲日
以上

なお、売掛金放棄や損金処理をした後は、取引先から債権を回収することができなくなるため、確実に売掛金が回収できない状況であることを確認してから行うようにしましょう。ただし、判断が難しい場合も多いので、事前に弁護士や税理士などの専門家に依頼して、取引先の財産状態について調査することをおすすめします。

2.公的融資を利用する

取引先が倒産した影響を受けて自社の資金繰りが困難になった場合、公的融資の利用を検討しましょう。主なセーフティネットを3つご紹介します。

①セーフティネット貸付

セーフティネット貸付は、日本政策金融公庫が運営している貸付制度です。取引先が破産・再生・会社更生の手続開始の申立てをした場合、手形の不渡りを出して取引停止処分になった場合などに利用でき、以下の利用条件を満たす場合に最大1億5000万円までの融資が受けられます。

  • 倒産した取引先に50万円以上の売掛金債権などがある場合
  • 倒産した取引先に対する取引依存度が10%以上の場合
  • 倒産した取引先に貸付金や差入保証金などの債権がある場合
  • 倒産した取引先の債務を保証している場合
  • 倒産した取引先の商業施設に入居し、業況悪化の影響を受けるおそれがある場合
  • 倒産した取引先から受注予定の商品等が、倒産したために取り消された場合

返済は8年以内に行う必要がありますが、一時資金を得て資金繰りを改善することができるため、検討の価値があるかと思います。

②セーフティネット保証制度

セーフティネット保証制度とは、中小企業が、経済産業大臣が指定する大型倒産事業者に売掛金等を有していることが原因で資金繰りが悪化した場合に、信用保証協会の保証付き融資を受けられる制度です。中小企業者は、事業所がある市町村長等の認定を受け、認定後に信用保証協会に融資を申し込むことができます。

③中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)

経営セーフティ共済は、中小企業基盤整備機構が運営する貸付制度で、共済に加入している中小企業を取引先の連鎖倒産から保護することを目的としています。

対象は1年以上継続して事業を行っている中小企業者で、毎月5,000円~20万円まで5,000円単位で選べる掛け金を払います。加入から6か月以上後に取引先が倒産して売掛金等が回収できなくなった場合、無担保・無保証で、掛け金の最高10倍(上限8,000万円)の貸付を受けることが可能です。一時貸付金や解約手当金もあり、税金の優遇措置を受けることもできます。

取引先の倒産の影響による連鎖倒産の予防策

取引先が倒産した際に、速やかに対応できるよう準備しておくことは非常に重要ですが、取引先の倒産の影響を受けて連鎖倒産しないためにも、事前に対策を講じておくことが大切です。具体的な対策について説明します。

1.取引内容を明確にした契約書の作成

取引先との関係が長期に渡っている場合、契約書を作成せず口頭での約束で契約するケースもあります。しかし、口頭での契約で、契約内容が不明確な場合、取引先が倒産した際に債権回収が困難になるおそれがあります

契約する際は、契約金額や支払期限以外にも、取引先の支払いが遅れた場合の遅延損害金の規定や管轄裁判所の合意なども記載した契約書を作成しておきましょう。以下の項目は必ず記載して下さい。

  • 契約内容(商品の売買か、役務の提供かなど)
  • 契約日
  • 契約金額
  • 契約対象の数量や品質
  • 商品等の納期や役務の提供日
  • 代金の支払期限、遅れた場合の遅延損害金
  • 代金の支払方法
  • 特約条項(期限の利益喪失条項・契約解除条項・損害賠償条項)
  • 管轄裁判所の合意

2.担保を確保する

取引先と契約する際に、あらかじめ担保を確保しておくことで、取引先が倒産して未払いの債権がある場合に、担保権の実行によって回収できる可能性が高まります。
担保には、抵当権や根抵当権のような物的担保の他、連帯保証などの人的担保があります。

取引先が銀行等から借金している場合には、会社の土地建物には既に金融機関の抵当権がついていることが大半です。このような場合、取引先が倒産したら銀行が抵当権を実行して債権を回収します。また、社長が連帯保証人になっている場合、社長も同時に破産することも少なくありません。

担保を確保する際には、債権をカバーできるか調査し、必要に応じて社長以外の役員や親族等に保証人になってもらうなどの方法を検討するとよいでしょう。ただし、強引に話を進めると、強迫・強要、威力業務妨害罪などの犯罪行為に該当するおそれもあるので、慎重に進める必要があります。

3.時効期間の調査

売掛金は、いつまでも請求できるわけではありません。債権には時効があり、一定期間を経過すると消滅します。債権の消滅時効は、支払期限の翌日から数えて5年が原則です(商法第522条)。ただし、債権の中には、以下のように短い期間で消滅するものがあるので注意が必要です。

  • 1年:運送費、宿泊料、飲食代金(民法第174条)
  • 2年:製造・卸売・小売業の売掛金、月謝や教材費(民法第173条)、弁護士報酬(民法第172条)
  • 3年:診療費、建築代金、設計費、工事代金(民法第170条)
  • 5年:上記以外の売掛金(商法第522条)

債権の消滅時効は、債務者が時効を援用することによってはじめて効果が生じます。債権者としては、援用される前に時効を中断させることが重要です。時効を中断させることができれば、経過した時効期間がリセットされ、ゼロから時効期間が始まることになります。時効の中断を行うには、以下の3つの方法があります。

①請求

請求は、債権者が裁判上の請求を行うことをいいます。具体的には、訴訟の提起、支払督促、和解又は調停の申立、破産・再生・更生手続への参加を行い、債務者に対して債権の支払いを求めます。

口頭や書面で支払いを請求しても時効は中断しませんが、催告という手続により、6か月間時効の進行を停止させることが可能です。この間に、訴訟の提起など、上記の請求に該当する行為をすることで、時効を中断させることができます。時効の中断は何度でも行うことができますが、催告は一度しかできないという点には注意して下さい。

②差押え・仮差押え・仮処分

債務者である取引先の財産(不動産や動産、債権等)を強制的に回収して換価する差押えや、差押えの前段階である仮差押え・仮処分を行うことでも、時効は中断します。

差押え等をする場合は、裁判所に書類を提出する等の手続きをした後で申立てが許可され、裁判所によって指定された期間だけ時効を延長できます。

③債務承認

債務承認とは、債務者が債務の存在を認めることをいいます。債権の残高金額を認めてもらう必要がある場合などに行われます。債務承認が行われると、経過した時効期間はリセットされます。

債務承認は既に消滅時効期間が過ぎている場合も可能です。裁判上の請求をすると、債務者が消滅時効を援用しそうな場合でも、先に債務者が債務を承認すれば時効は中断し、消滅時効が完成したという主張ができなくなります。そのため、時効を中断させたい場合は、わずかでも返済してもらうこと等により、債務承認の方法を取ることが効果的です。

まとめ

今回は、取引先が倒産した場合に、売掛金などの債権を回収し、連鎖倒産等の悪影響を最小限に抑えるための対策などについて解説しました。

取引先が倒産した場合に迅速な対応がとれるよう、事前に準備しておくこと、倒産した場合を想定して事前に適切な対策を講じることにより、自社への影響を最小限に抑えることが可能になります。

取引先の倒産後に、消滅しそうな債権の時効を中断させる、担保権を行使するなどの方法により債権を回収するためには、専門的な知識が求められます。他の債権者と競合することも多いため、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

東京スタートアップ法律事務所では、豊富な企業法務の経験を持つ弁護士が、取引先の倒産時の売掛金の回収や取引先の倒産に備えた対策等のサポートを行っています。お電話やオンライン会議システム等での対応も行っておりますので、お気軽にご相談いただければと思います。

弁護士藤川 新 東京弁護士会
【得意分野】 一般民事事件(離婚、各種損害賠償請求等) 刑事事件 一般企業法務