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代表弁護士 中川 浩秀

資金決済法を分かりやすく。仮想通貨やポイント、電子マネーについても紹介

仮想通貨(暗号資産)や電子マネー、アプリ内での課金システムなど、近年のITベンチャー企業が多数参入しているサービスですが、これらのサービスには必ず知っておかなければならない法律があります。
それが「資金決済に関する法律」(以下、「資金決済法」と言います。)です。

この記事では資金決済法とはどんな法律なのか、その義務と罰則、資金決済法対象の各サービスを展開する上でのポイントなど、資金決済法に関する情報を広くご紹介していきます。

資金決済法についてきちんと理解し、ぜひサービスを展開する参考にしていただければと思います。

資金決済法とは

まずは資金決済法とはどのような法律なのかについて解説していきます。
分かりにくい解説の多い資金決済法なのですが、どこよりも分かりやすく説明いたします。
資金決済法は「資金移動」「前払式支払手段」「資金清算」の3つを対象とした規定が設けられている、2010年4月に施行された比較的新しい日本の法律です。
ここではITベンチャーに関係の強い「資金移動」と「前払式支払手段」について、この2つの説明も含めながら資金決済法を解説していきます。

1. 資金移動業

資金移動業とは文字通りの言葉なのですが資金(お金)を移動する業のこと、つまりは送金サービスのことです。
資金決済法に資金移動業に関する規定が盛り込まれているのは、送金中の消費者のお金を保護するためです。

資金決済法上の「資金移動業」の定義については、「銀行等以外の者が為替取引(少額の取引として政令で定めるものに限る。)を業として営むことをいう(資金決済法2条2項)」とされており、銀行が行う送金サービスは資金決済法の対象外となります。

また、「少額の取引として政令で定めるもの(資金決済法施行令2条)」との規定もあり、銀行以外の事業者は100万円(に相当する額)以下での送金サービスとしなければならないとされています。

2. 前払式支払手段

資金決済法に前払式支払手段に関する規定が盛り込まれているのは、消費者からお金を受託し、変換されたお金(電子マネー)を保護するためです。
前払式支払手段というと分かりづらいのですが、基本的には「広い意味での電子マネー」とお考え下さい。

電子マネーというとSuicaやPASMOなどの交通系電子マネー、nanacoやWAONなどの企業が自社店舗での利用を前提とした電子マネーサービスなどが思い浮かぶと思います。
ですが、ここでいう「広い意味での電子マネー」は、現金を電子的な数量に変換するすべてのサービスを対象としています。

資金決済法の対象となる事業とは

では具体的にどのような事業が資金決済法の事業として該当するのか、代表的な事業を紹介していきます。

  • 金券
  • プリペイドカード
  • テレホンカード
  • 電子マネー
  • 仮想通貨(暗号資産)
  • 国際キャッシュカード
  • エスクロー
  • 投げ銭サービス
  • ポイントサービス

資金決済法の事業者として登録されている会社とサービス例

さらに具体的なイメージを持っていただくために実際に資金決済法の事業者として登録されている会社とそのサービスについてみていきましょう。

LINE株式会社「LINE COIN」

日本で8000万人以上がアクティブユーザーとして利用している(参照:2019年12月期第1四半期決済説明会)LINE株式会社の「LINE」。
もう説明する必要もないほど大人気のSNSです。

このLINEの中でスタンプや着せ替えなど購入するには「LINE COIN」という電子マネーを購入する必要があり、LINE COINでスタンプなどを購入します。
電子マネーを取り扱う事業となりますので、資金決済法の対象となります。

コインチェック株式会社「仮想通貨(暗号資産)サービス」

2018年に仮想通貨(暗号資産)流出事件を起こしたコインチェック株式会社も資金決済法の対象事業者となっています。
資金決済法が施行された2010年に仮想通貨(暗号資産)を扱っている事業者は非常に少なく、世間としても認識している人はごくわずかな投資家のみでしたので、資金決済法の規制対象には含まれていませんでした。
ですが、世間的にも認知され始め、事業者が増加していた2016年に「改正資金決済法」により、仮想通貨(暗号資産)事業も資金決済法の対象事業として追加されました。

株式会社セブン・カードサービス「nanaco」

電子マネーで取り上げた通り、nanacoのサービスを提供する株式会社セブン・カードサービスも資金決済法の事業者として登録されています。

このように電子マネーを扱う事業者は資金決済法に基づいたサービスを提供しなければなりません。

資金決済法上の義務と罰則について

では資金決済法の義務や罰則はどのような規定があるのかを見ていきましょう。

1. 資金決済法上の義務

資金決済法対象の事業者には2つの義務を負うことになります。

1つ目が取引時には本人確認を行う、疑わしい取引があった際には取引の届出を行う義務です。
こちらは第三者により利用者が不利益を生じることのないように事業者へ取引の健全性を担保させるための義務です。
本人確認を行わない、不正と思われる取引も見て見ぬふりしているサービスがあると、マネーロンダリング(資金洗浄)や犯罪組織に利用されてしまうことは言うまでもないでしょう。
それらを防止するため、取引時にはこれらの義務が発生します。

2つ目は資産保全義務。
送金サービスという特性上、事業者は倒産リスクなどを踏まえて100%の資産保全義務が義務付けられています
資産保全の方法としては「供託」「履行保証全契約」「履行保証金信託契約」の3種類があり、どの方法で保全しなければいけないといった規定は定められていません。

2. 資金決済法の罰則

資金決済法の規定を守らず営業していた場合には懲役、もしくは罰金が課されます。
懲役期間や罰金については違反内容になって異なりますので、以下では3年以下の懲役、もしくは300万円以下の罰金が課される内容をご紹介します。

「第百四条」

次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

  1. 第七条の登録を受けないで第三者型前払式支払手段(第三条第五項に規定する第三者型前払式支払手段をいう。第三号において同じ。)の発行の業務を行った者
  2. 不正の手段により第七条又は第三十七条の登録を受けた者
  3. 第十二条の規定に違反して、他人に第三者型前払式支払手段の発行の業務を行わせた者
  4. 第四十二条の規定に違反して、他人に資金移動業を営ませた者
  5. 第六十四条第一項の規定に違反して、内閣総理大臣の免許を受けないで資金清算業を行った者
  6. 不正の手段により第六十四条第一項の免許を受けた者

法人が違反をした際には代表者に3億円以下の罰金刑が課されることもありますので資金決済法についてはしっかりと遵守し、対策をしておきましょう。

資金決済法対象の事業 、仮想通貨(暗号資産)取引所とは

ここからは近年のITベンチャー企業が多く参入している業種の「仮想通貨(暗号資産)取引所」、及び「電子マネー」の2点に絞ってさらに深堀していきたいと思います。
まずは改正資金決済法によって追加された仮想通貨(暗号資産)の事業所と資金決済法の関係について解説します。

1. なぜ仮想通貨(暗号資産)が資金決済法の対象になったのか

仮想通貨(暗号資産)取引所が改正資金決済法の対象になった背景としては、やはり「マネーロンダリング(資金洗浄)の防止」と「利用者(投資家)の保護」のためです。
資金決済法が施行された大きな理由がこの2点なので、やはり仮想通貨(暗号資産)を資金決済法の対象に含めるというのはごく自然な流れだったかと思います。

その引き金となったのは2014年に世界最大の仮想通貨(暗号資産)取引所であった「マウント・ゴックス」が利用者から預かっていた資金や仮想通貨(暗号資産)と実際の保有額が大きく異なり、倒産したことにより大きな問題となり、2016年に資金決済法に仮想通貨(暗号資産)が含まれるようになりました。

2. 改正資金決済法で仮想通貨(暗号資産)は何が変わった?

仮想通貨(暗号資産)取引所が資金決済法の対象となったことで大きく変わったポイントは2点あります。
1点目が仮想通貨(暗号資産)の定義が法律上で定められたこと、2点目は仮想通貨(暗号資産)取引所の登録制度、規制が導入されたことです。

それまで日本での仮想通貨(暗号資産)は、法的な位置付けが明確にされておらず、サービスを規制する法律も存在しませんでした。そこで、事業所はユーザーを獲得・手放さないために独自に自主規制やルール作りを行っていました。
ですが、2016年の改正資金決済法によって仮想通貨(暗号資産)の定義が設定され、仮想通貨事業に参入したい事業者は登録制になりました。国が、利用者の資産を守ることができないと判断した取引所は、事業を継続したり、新規参入したりすることはできなくなりました。

3. 改正資金決済法で定められた仮想通貨(暗号資産)の定義

では、改正資金決済法によって定められた仮想通貨(暗号資産)の定義とはどういったものなのかを見ていきましょう。
仮想通貨には、資金決済法における規定内容から、1号仮想通貨と呼ばれるものと、2号仮想通貨と呼ばれるものの二種類があります。

1号仮想通貨

  • 不特定の者を相手方として、代金の支払いなどに使用でき、かつ法定通貨(日本円や米国ドルなど)と相互に交換できる
  • 電子的に記録され、移転できる
  • 法定通貨又は法定通貨建ての資産(プリペイドカードなど)ではない

以上の3点が1号仮想通貨(暗号資産)の定義として定められています。

2号仮想通貨

  • 不特定の者を相手方として、1号仮想通貨と相互に交換できる
  • 電子的に記録され、移転できる

以上が、2号仮想通貨(暗号資産)の定義です。
2019年5月に仮想通貨は「暗号資産」に呼称が変更になっています。

資金決済法対象の事業 、電子マネーとは

続いて電子マネー事業について。
冒頭でも触れましたが、資金決済法における電子マネーとは広義での電子マネーですので、SuicaやPasmoなどの交通系電子マネーはもちろん、PayPayやAirPayなどのキャッシュレス決済、ゲームアプリのアプリ内通貨なども電子マネーとして扱われます。
サービスにお金を払ってそのサービス内のお金(お金として扱われる物も含む)を購入したものは電子マネーという認識で良いでしょう。

1. 電子マネーの定義

ここまで電子マネーについて分かりやすくするためにかみ砕いた表現をしていましたが、法律ですので、一度電子マネー、つまり前払式支払手段の定義についてご紹介しておきます。

  • 金額又は物品・サービスの数量(個数、本数、度数等)が、証票、電子機器その他の物(証票等)に記載され、又は電磁的な方法で記録されていること。
  • 証票等に記載され、又は電磁的な方法で記録されている金額又は物品・サービスの数量に応ずる対価が支払われていること。
  • 金額又は物品・サービスの数量が記載され、又は電磁的な方法で記録されている証票等や、これらの財産的価値と結びついた番号、記号その他の符号が発行されること。
  • 物品を購入するとき、サービスの提供を受けるとき等に、証票等や番号、記号その他の符号が、提示、交付、通知その他の方法により使用できるものであること。

以上が電子マネー(前払式支払手段)の定義です。

少しわかりやすくすると以下のような内容です。

  • 消費者の支払った金額、もしくはサービス内容を記載、電磁的に記録してあること
  • 記録された内容と同等の対価が支払われていること
  • 記録された内容と同等のなにか(※)を発行していること
  • サービスを受けるときや購入時にそのなにか(※)を利用できること

※なにか:現金と相当額の電子マネーやアプリ内通貨などのことです

2. 未使用残高によって扱いが異なる

資金決済法における電子マネーの扱いは少し特殊で、消費者が保有している電子マネーの未使用残高が「1,000万円」を超えるといくつかの義務が発生します。
まずは、未使用残高の50%以上にあたる保証金を供託所に供託しなければならない義務、管轄の財務局に届け出の提出・および定期的な報告義務、消費者への一定以上の情報提供をする義務が発生します。この規制は、新規参入を試みる資金力のないベンチャー企業には、非常に高いハードルと言えます。

3. 後払いは資金決済法の対象にはならない

クレジットカードのリボ払いや、コンビニ後払いなどのサービスは割賦販売法の対象事業なので、資金決済法の前払式支払手段には該当しません。
自社のサービスがどの法律のどの条項の規制対象になるのか、どのようなことに注意が必要かなどをインターネット上の情報だけで情報収集するのは難しいと言えます。行き着いた答えが正解なのかの判断も難しいと言えます。起業する際や新事業を始める際には弁護士に相談することをお勧めします。

資金決済法上の「資金移動業」に該当しないためには

ここまで解説してきたように資金決済法は、預かっている料金の一定割合に相当する金銭を担保として用意しなければならないなど非常にハードルの高い法律で、中でも「資金移動業」への規制は特に厳しく、実際に登録されている資金移動業者は64社のみとなっています(令和元年6月30日現在)。
そこで、現在では資金決済法に抵触しないサービスの仕組みを作り出す動きがみられおり、その対応をうまくしているのが動画配信サービスの「SHOWROOM」です。

SHOWROOMの取り組み

SHOWROOMは動画配信サービスを通して視聴者が配信者にお金を送金するいわゆる「投げ銭」サービスを行っています。
投げ銭サービスは送金にあたるので資金移動事業者として登録が必要になるのですが、SHOWROOMは資金移動事業者として登録はされていません。

では、SHOWROOMはどのようにして資金決済法における資金移動業の規定に抵触しないシステムを作り上げたのでしょうか。
実は、SHOWROOMで投げ銭を行うには、事前に「Show Gold」というポイントを購入し、そのShow Goldでアイテムを決済できるというシステムを採用しているおり、このシステムであれば資金決済法における資金移動業には該当しません。資金移動ではなく前払式支払手段として事業を行っています。

資金移動事業者は64社と紹介しましたが、前払式支払手段事業者として登録されている事業者は1,920社と、資金移動業よりもハードルが低いことが見て取れます。(令和元年6月30日現在)

このように、一見ハードルの高い資金移動のサービスとして事業を行っているように見えても、実は前払式支払手段事業としてサービスを展開している事業者は少なくありません。
保証金の確保などが難しいITベンチャー企業は法令を遵守することはもちろんですが、法律に則った上で柔軟な対応をとることも必要であるということをSHOWROOMの例から学習することができます。

まとめ

資金決済法は「資金移動」、「前払式支払手段」、「資金清算」の3種類に加え、改正資金決済法によって「仮想通貨」(暗号資産)が追加された計4種類の事業が該当し、それぞれに規定が設けられています。
資金決済法が問題になる事業を行う際は、法律を遵守するということは重要ですが、時として法律をクリエイティブに解釈し、柔軟なサービスを作っていくということも非常に重要です。まずは法律の壁があることを認識し、その壁をどうクリアしていくかを考えて実行していく姿勢が、ベンチャー企業には求められます。
弁護士といっても様々なタイプがいるので、事業のパートナーとなってくれる弁護士をビジネスの初期の段階から味方につけておくと良いでしょう。

代表弁護士中川 浩秀 東京弁護士会
2010年司法試験合格。2011年弁護士登録。弁護士法人東京スタートアップ法律事務所の代表弁護士。同事務所の理念である「Update Japan」を実現するため、日々ベンチャー・スタートアップ法務に取り組んでいる。