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投稿日: 更新日: 代表弁護士 中川 浩秀

企業法務の費用の相場と費用対効果・法務部門と顧問弁護士の費用の違いは?

企業を取り巻くビジネス環境や法規制が目まぐるしく変わる中、企業が抱える法的リスクも多様化しています。法令違反等の不祥事により経営状況が悪化するリスクを防ぐため、社内の法務部門の設置や顧問弁護士との契約により企業法務の強化に取り組む企業も増えています。

しかし、企業法務を強化するためにはコストがかかるため、「企業法務の強化が必要という認識はあるけれど、どの程度費用をかけるべきか、よくわからない」、「社内の法務部門と社外の顧問弁護士にかかる費用の違いを理解しておきたい」という方もいらっしゃるのではないでしょうか?

今回は、企業法務の費用対効果、法務部と顧問弁護士の費用の違い、問題発生時のみ依頼する場合の料金相場とリスクなどについて解説します。

企業法務の費用対効果

経営者としては、本当に企業法務に費用をかける価値があるのか、費用対効果はどの程度見込めるのかという点も気になるかもしれません。しかし、企業法務を担当する法務部門や顧問弁護士は、営業部やマーケティング部とは違い、直接的に利益を生みだすわけではありません。そのため、単純な計算式で費用対効果を算出することはできません。

しかし、法務部門にかけるコストがもったいないからといって企業法務を疎かにすると、個人情報漏洩や商標権侵害等の法令違反による不祥事を起こして取引先や顧客の信頼を失い、会社の経営状況が一気に傾くリスクもあります。また、近年増加している従業員に対するパワハラなどのハラスメント問題や労使トラブル等が発生し、対応のためのコストや慰謝料等の支払いが必要になる場合もあります。そのようなリスクを未然に防ぎ、企業活動による収益と企業の健全な発展を支えるのが企業法務の役割なのです。

法務部門を設置した場合の費用

近年、大企業だけではなく中小企業の間でも社内に企業法務を専門とする法務部門を設置する企業が増えています。日本組織内弁護士協会(JILA)が公開している「企業内弁護士数の推移(2001年~2019年)」という資料によると、2001年時点では全国の企業内弁護士の人数はたったの66名でしたが、2019年には2,418名と、20年弱の間に30倍以上、増加しています。
では、社内に法務部門を設置した場合、どの程度のコストがかかるのでしょうか?社内の法務部門を設置する場合にかかる人件費等の費用について説明します。

1.企業内弁護士を採用した場合の費用

日本組織内弁護士協会が2019年2月に実施した「企業内弁護士に関するアンケート」の集計結果によると、役職がついていない一般従業員として企業に所属している企業内弁護士の年収で一番多かった回答は500万円~750万円未満(47.4%)でした。
企業が正規社員を雇用する場合、給料以外に、雇用保険や健康保険等の社会保険料、福利厚生にかかる費用等を負担する必要があります。そのため、従業員を雇用する際に企業が負担する費用は一般的に年収の1.5~2倍だと言われています。つまり、年収600万円で企業内弁護士を1人雇用するためには年間900万円~1200万円程度の費用がかかるというわけです。

また、弁護士は「弁護士会」という強制加入団体に加入せねばならず、毎月数万円程度の弁護士会費を支払う必要があります。弁護士会費を企業の方で負担しているケースも多く、前述のアンケートで「弁護士会費は誰が負担していますか」という質問に対して、回答企業の84.3%が「所属先」と回答しています。また、給料とは別に弁護士資格手当を支払っている企業もあるようです。

2.弁護士以外を採用した場合の費用

法務部門を設置している企業の多くは、社外の顧問弁護士と契約を締結しています。そのため、社内に法務部門を設けてはいるものの、社内の法務部門の人材には弁護士資格は不要としている企業もあります。弁護士資格保有者以外を採用する場合、ほとんどの企業では、企業法務に関する実務経験を保持することを条件とし、即戦力となる人材を中途採用しているようです。法科大学院修了者、法律事務所等でのパラリーガルとしての法務実務経験所持者、ビジネス法務検定・ビジネスコンプライアンス検定・知財管理技能検定等のビジネス法務関連の資格所持者を対象としたポテンシャル採用を行っている企業も少数ですが存在します。ポテンシャル採用の場合は、年収400万円程度での雇用も可能かもしれませんが、その場合でも、結果として年間600万円~800万円程度の費用がかかります

顧問弁護士に依頼する場合の顧問料の相場

社内に法務部門を設置したいけれど、人件費をかける余裕がないという企業にとって、企業法務全般をアウトソーシングできる社外の顧問弁護士は強い味方です。顧問弁護士と契約を結ぶことで、企業内弁護士や法務担当者を従業員として雇用するよりも大幅にコストを抑えながら、専門家によるクオリティの高い企業法務サービスの提供を実現することが可能です。顧問弁護士と契約をした場合に必要となる顧問料の相場について説明します。

1.顧問料は会社の規模やプランにより異なる

顧問弁護士の料金体系は法律事務所によって異なりますが、法律事務所の多くは会社の規模やニーズに合わせて、複数のプランを用意しています。
2004年4月に弁護士費用が自由化される以前は、日本弁護士連合会が報酬基準規定の中で事業者向けの弁護士顧問料の最低金額を月額5万円と定めていました。その流れから、月額5万円を必要最小限のサポートを提供する顧問料として設定している法律事務所が多いです。現在は、報酬基準規定の廃止されており、月額1万円~3万円程度という格安の顧問料を設定する法律事務所も存在します。ただし、顧問料が安い場合、顧問料の範囲内で受けられるサポートの範囲が非常に限定されていて、それ以外のサポートを受ける場合は追加料金が必要というケースも多いため注意が必要です。

2.追加料金が必要な依頼

顧問料の範囲内で受けられるサポートの範囲は法律事務所や選択したプランの内容によって異なりますが、訴訟や示談交渉などの代理を依頼する場合は顧問料の範囲外となり、追加料金が必要になる場合が多いです。ただし、多くの法律事務所では、顧問契約を結んでいる企業に対して、訴訟の際の着手金が割引になる顧問割引制度を導入しています。割引率は法律事務所やプランによって異なりますが、10%~30%程度の割引となる場合が多いようです。

顧問弁護士の費用の相場と料金体系・費用対効果向上のポイントは?

法務部と顧問弁護士の費用の違い

社内に法務部門を設置する場合と社外の顧問弁護士と契約する場合の費用の違いについて説明します。

1.固定費の差は大きい

顧問弁護士と契約を結ぶと月額の固定費がかかりますが、中小企業で最低限の内容をカバーするプランを選択した場合は月額の固定費は5万円程度です。内容が充実したプランを選択した場合でも月額費用は30万円程度で、年間で360万円程度となります。前述の通り、法務部門の人材を雇用した場合は、年収400万円でも年間600万円~800万円程度の費用がかかり、弁護士有資格者の場合はさらに高額なコストがかかります。人件費を抑えるためにポテンシャル採用で企業法務の実務経験を持たない人材を採用した場合、人材育成のための費用や時間がコストとして必要となります。他方、顧問弁護士の場合、弁護士資格を保有し、すでに複数の会社と顧問契約を結び、日々の活動の中で企業法務の実務経験を積んでいます。そのため、コストを抑えながら、社内の法務部門よりもクオリティの高いサポートを受けられる可能性が高いです。

また、顧問弁護士への報酬は企業経営における必要経費として認められており、「支払報酬」または「支払手数料」として経費計上することが可能です。さらに、雇用した場合に発生する給与計算や社会保険料の支払い等も、顧問弁護士の場合には不要ですので、顧問弁護士との契約は大幅なコストカットに繋がります。

2. 紛争案件対応の費用の違い

社内に法務部門がある場合、訴訟などの紛争案件を社内で対応できるためコスト削減になるのではと思われる方もいらっしゃるかと思います。しかし、前述の日本組織内弁護士協会によるアンケートでは、「あなたは勤務先の訴訟代理人となることがありますか。」という質問に対して「ある」との回答は24.6%でした。訴訟代理人として確実に自社に有利な結果を得るためには、法律に関する知識だけではなく、十分な実務経験が必要とされるため、法務部門の従業員が担当するのではなく、社外の弁護士に依頼するケースが多いというのが現状のようです。
顧問弁護士と契約を結んでいた場合、前述の通り、通常は紛争案件の対応については別途料金が必要となりますが、顧問割引制度により10%~30%程度の割引が適用されるケースが多いです。

問題発生時のみ依頼する場合の料金相場

「法務部門の設置や顧問弁護士との契約で固定費を支払うよりも、法的トラブルが発生した時だけ法律事務所に相談した方がコスト削減につながるのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。そこで、法的なトラブルが発生した場合のみ、法律事務所に相談する場合の料金について説明します。

1.法的な問題の相談料の相場

社内に法務部門がなく、顧問弁護士もいない企業の場合、法的なトラブルに直面した際に法律事務所に相談することになります。顧問契約を結んでいない場合でも、企業法務に強い法律事務所に相談すれば、法的手続を代理してもらうことは可能です。例えば、近年増えているネット上での風評被害なども、法律事務所に相談することにより、削除請求、発信者情報開示請求、名誉毀損による損害賠償請求等の法的手段で解決を目指すことができます。顧問契約を結んでいない場合の相談料は法律事務所によって異なりますが、1時間3万~5万円程度に設定されている場合が多いです。

2.訴訟対応にかかる費用

相談後に訴訟等の法的手段による解決を依頼した場合、原則として、着手金と成功報酬が必要となります。着手金と成功報酬の金額は、トラブルの内容や法的手段によって大きく異なります。着手金は、示談交渉のみで解決できる場合は10万円~20万円程度の場合もありますが、訴訟に発展する場合は30万~50万円程度が相場です。また、成功報酬は、得られた利益の10%~15%程度に設定されているケースが多いです。
例えば、500万円の売掛金回収を依頼した場合、示談交渉のみで解決したとしても着手金と成功報酬の合計で最低60万円は必要ということになります。

問題発生時のみ依頼する場合のリスク

問題発生時のみ法律事務所に相談する場合にはリスクが潜んでいるので注意が必要です。具体的にどのようなリスクが内在しているのか説明します。

1.手遅れになる・期待する結果が得られない

問題発生時のみ法律事務所に相談する際のリスクとして、一番に挙げられるのは、手遅れになる場合があるということです。例えば、取引先の経営状況が悪化して売掛金が回収不能な状態に陥っている場合、早い段階から適切な対応を行わないと手遅れになり、売掛金が回収できない可能性があるため注意が必要です。

また、元社員から残業代未払いやパワハラなどを理由に労働審判の申立てを受けたという場合も、企業側は第一回の期日に間に合うように必要な証拠を集めて答弁書を作成する必要があるため、時間との戦いになります。

しかし、労働審判の申立てを受けてから慌てて法律事務所を探した場合、すぐに対応してもらえるとは限りません。労働審判の対応等の企業法務を得意とする法律事務所は複数の企業と顧問契約を結んでおり、顧問契約を結んでいる企業の案件が優先されるからです。
また、すぐに対応してもらえる法律事務所が見つかったとしても、問題の経緯や自社の状況や方針等について一から説明して理解してもらうためには労力や時間が必要となります。顧問契約を結んでいる場合は、顧問弁護士が自社のビジネスの状況や方針などを十分に理解しているため、迅速かつ的確な対応が期待できますが、問題が発生してから慌てて法律事務所を探した場合は十分な説明をする余裕がない場合が多いため、期待通りの結果を得られない可能性が高いのです。

2.予防法務を実現できない

問題発生時のみ法律事務所に相談する際のリスクとして、「予防法務が実現できない」という点もあります。予防法務が実現できないと、労使トラブルや法令違反等によるトラブルが発生するリスクも高まります。法令違反等の不祥事があれば、取引先や顧客からの信用を失い、一気に経営が傾く可能性もあります。一度不祥事が起きてしまうと元の状態に戻すことはほぼ不可能なので、予防法務は企業法務の中でも重要視されているのです。

紛争が起きてから事後的な対応をする場合、訴訟代理人の依頼や裁判所への予納金等で多額なコストがかかります。コスト削減の観点からも、できるかぎり未然に防ぐことは非常に重要なのです。法的トラブルを事前に回避することができれば、トラブル解決のために経営者や従業員が費やす時間や労力の削減にもつながります。

まとめ

今回は、企業法務の費用対効果、法務部と顧問弁護士の費用の違い、問題発生時のみ依頼する場合の料金相場とリスク、社内の法務部門と顧問弁護士の違いについて解説しました。

法的なリスクを事前に回避するための予防法務を実現して、健全な企業活動の基盤を作るためには、企業法務の強化が不可欠です。自社に法務部門を設置するのはコスト面での負担が大きいですが、顧問弁護士を活用することにより、コストを抑えながら、専門家によるクオリティの高い企業法務を実現できます。

「社外の顧問弁護士だと社内の法務部門のように気軽に相談できないのでは?」と思われるかもしれませんが、そうとは限りません。我々東京スタートアップ法律事務所は、チャットワーク(ChatWork)やスラック(Slack)といったチャットツールや、ズーム(ZOOM)やウェアバイ(Whereby)、ベルフェイス(BellFace)といったオンライン会議ツールをフル活用し、法務担当だけではなく現場で働く従業員がいつでも気軽に相談できる環境を用意し、企業法務のプロとして日々、様々な企業のニーズに合わせたサポートを提供しております。
企業法務に関する相談等がございましたら、是非お気軽にご連絡いただければと思います。

代表弁護士中川 浩秀 東京弁護士会
2010年司法試験合格。2011年弁護士登録。弁護士法人東京スタートアップ法律事務所の代表弁護士。同事務所の理念である「Update Japan」を実現するため、日々ベンチャー・スタートアップ法務に取り組んでいる。