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投稿日: 更新日: 代表弁護士 中川 浩秀

企業法務の相談先と費用の相場・早めの相談が必要なケースとは?

近年、「コンプライアンス(倫理・法令遵守)」という概念が社会に浸透し、法改正や新法の成立も急速に進む中、企業内における法務部門の設置や外部の顧問弁護士との契約等により企業法務の強化に取り組む企業は増えています。

企業法務の重要性は認識しているけれど、どこに相談するべきか、どの程度費用をかけるべきかわからないというという方もいらっしゃるのではないでしょうか?

今回は、企業法務に関する問題の相談先、相談時にかかる費用、企業法務に関する相談事例、早めの相談が必要なケース、相談先を選ぶ際の注意点などについて解説します。

企業法務に関する問題の相談先

企業が法律に関する問題やトラブルに直面した際、どこに相談すればよいのでしょうか?企業法務に関する問題の相談先について説明します。

1.顧問弁護士に相談

顧問弁護士というと大企業をイメージする方もいらっしゃるかもしれませんが、最近は中小企業の中でも顧問弁護士と契約を結ぶ企業が増えています。2016年に日本弁護士連合会が実施した「第2回中小企業の弁護士ニーズ全国調査」では、弁護士を利用したきっかけという設問に対する回答のトップは「顧問弁護士」(46.6%)でした。

顧問弁護士と契約を結ぶと、日頃からコミュニケーションを取れるため、自社のビジネスや方針などを理解した上で、専門家の視点から適切なサポートやアドバイスを受けられるというメリットがあります。法的なトラブルに直面した際にも気軽に相談ができるという安心感もあります。また、自社が抱える法的リスクを指摘してもらった上で、契約書や社内規則を整備するなど法的なリスクマネジメントを実現できるという点も大きなメリットです。ただし、月額の顧問料がかかるという点において、企業にとっては「固定費」という形で負担が発生します。

2.タイムチャージ制の法律事務所

顧問弁護士と契約をしていない企業が法的なトラブルに直面した際、タイムチャージ制で企業法務に関する相談ができる法律事務所に相談するという方法があります。顧問弁護士のように毎月の固定費がかからないという点はタイムチャージ制のメリットと言えるでしょう。ただし、法的な問題を期待通りに解決するためには、自社のビジネスの内容や問題が発生した背景などをできる限り正確に伝える必要があります。日頃からコミュニケーションが取れている顧問弁護士なら自社のビジネスや状況を理解しているため、期待通りの対応をしてもらえる可能性が高いですが、初めて話をする弁護士の方に問題の全容を正確に説明して理解してもらうのは難しいです。説明に時間がかかり、多額の費用がかかったのに期待通りの結果が得られないかもしれません。また、顧問弁護士の場合は、月額の顧問料の範囲内でサポートを受けられますが、タイムチャージ制を利用して単発で相談する場合は、実際にトラブルが発生した際にどの程度の料金がかかるか予測できないというデメリットもあります。タイムチャージ制ですと、相談が発生しなければ当然費用も発生しませんが、相談が発生した場合の費用は顧問契約に比べて割高になるのと、都度費用が発生するとなると、企業内で決裁を仰ぐ必要がある場合もあるため、相談すること自体に二の足を踏んでしまうというデメリットがあります。

相談・依頼時の費用

企業法務に関する問題について弁護士に相談する際、どの程度の費用がかかるのか気になるという方も多いかと思います。顧問弁護士と契約する場合の顧問料、問題が発生した際に相談する場合の料金について説明します。

1.顧問料は会社の規模やプランにより異なる

顧問弁護士の顧問料は法律事務所が自由に設定できるため、法律事務所によって異なります。会社の規模やサポート内容に合わせて、複数の料金プランを設定している法律事務所も多いです。2004年4月に弁護士費用が自由化される以前は、日本弁護士連合会により事業者向けの弁護士顧問料の最低金額が月額5万円と規定されていたため、月額5万円を必要最低限のサポートを提供する顧問料として設定しているケースが多いですが、月額1万円~3万円程度という格安の顧問料を設定する法律事務所も存在します。ただし、顧問料が安い場合、顧問料の範囲内で受けられるサポートの範囲が限定されていることも多いです。範囲外のサポートを受ける場合は追加料金を支払う必要があるため、注意が必要です。顧問料が安いからという理由だけで選ぶと、結果的に必要なサポートを受けられず、「安物買いの銭失い」になってしまう可能性があります。

2.法的な問題の相談料の相場

顧問契約を締結していない場合、法的な問題に直面して専門家への相談が必要な時に、その都度、弁護士に相談することになります。顧問契約を結んでいない場合の相談料は法律事務所によって異なりますが、所要時間によって課金されるタイムチャージ制が採用されている場合が多く、1時間3万~5万円程度が相場です。
相談後に訴訟や示談等の代理を依頼した場合、着手金と成功報酬を支払う必要があります。着手金と成功報酬の金額は事案によって大きく異なります。訴訟に発展する場合の着手金は30万~50万円程度が相場で、成功報酬は得られた利益の10%~15%程度に設定されているケースが多いです。

企業法務に関する相談事例

企業法務に関する相談として具体的にどのような事例が多いのでしょうか?特に相談が多い事例について説明します。

1.労使トラブル・問題社員の解雇

企業法務に関する相談事例として、最近増加傾向にあるのが、従業員や元従業員からの訴訟の提起、労働審判の申立てに関する相談です。近年、職場内のパワハラ、モラハラなどのハラスメント行為による精神的なダメージ、残業代の未払い、不当解雇などの問題で従業員や元従業員から訴えられる企業が増加しています。2016年に日本弁護士連合会が実施した「第2回中小企業の弁護士ニーズ全国調査」の結果、法律に絡む困りごとのトップは「雇用問題」(37.1%)でした。2008年度に実施した同調査の結果では、「雇用問題」(27.2%)は「債権回収」(40.6%)に次ぐ2位でしたが、2016年には債権回収を上回りました。労使トラブルは当事者同士での解決は難しく、労働者保護の観点から企業側が不利な立場に陥る可能性も高いので、早めに信頼できる弁護士に相談して進めることが大切です。

また、ハラスメントの被害が増加する中、従業員へのパワハラを理由に解雇された元社員が企業に対して、不当解雇を理由に慰謝料の支払いを求めるケースも増えています。パワハラなどの問題を起こした従業員を解雇したいと考えるのは、被害にあった従業員を守るためにも企業として当然のことですが、従業員の解雇は労働基準法などで厳しい制限が設けられているため注意が必要です。問題のある社員に円満退職してもらうためには、将来的な法的リスクを回避することが大切です。そのためには、弁護士に相談しながら適切なステップを踏むことが望ましいでしょう。

2.法的手段による債権回収

前述の「第2回中小企業の弁護士ニーズ全国調査」の調査結果で、法律に絡む困りごととして「雇用問題」に次いで多かった回答は「債権回収」(30.3%)でした。2008年度の調査時より減少したものの依然として件数の多い相談内容となっています。

売掛金が回収できないと自社で費やしたリソースに対する対価が支払われず、企業の財務状況に直接的なダメージを及ぼすため、企業にとっては深刻な問題です。特に大きなウエイトを占める取引先の売掛金が回収できない場合、経営難に陥る可能性もあるため、早めに弁護士に相談して対策を講じる必要があります。

3.契約書のリーガルチェック

労使トラブルや債権回収と並んで、弁護士が企業から相談や依頼を受けることが多い内容として、契約書の作成やリーガルチェックが挙げられます。「第2回中小企業の弁護士ニーズ全国調査」の調査結果の法律に絡む困りごとのランキングでも「契約書相談・作成」(24.9%)は第3位にランクインしていました。

企業同士が契約書を締結する際、規模が大きく立場が強い側の企業が契約書を提示する場合が多いですが、契約書の内容に自社に不利な内容が含まれている可能性もあります。法律の専門知識がないと、自社に不利な内容を見抜くのは難しいですが、弁護士に契約書のリーガルチェックを依頼すれば、自社に不利な内容を指摘してもらうことが可能です。また、相手側の企業に対して、法律のプロである弁護士の視点から指摘を受けたことを伝えた上で修正を依頼することが可能になります。

早めの相談が必要なケース

企業法務に関するトラブルを弁護士に相談したいけれど、どのタイミングで相談するべきかわからないという方もいらっしゃるかと思います。トラブルの内容にもよりますが、早めに相談した方が迅速な解決につながる可能性が高いです。特に早めの相談が必要なケースについて説明します。

1.債権回収は早めの相談が成功の鍵

企業法務に関する相談の中で最も早めの相談が必要となるのが債権回収に関するトラブルです。売掛金の入金遅延が発覚しても、しばらく待ってみようなどと考えて放置する企業もあるようですが、取引先の財務状況が悪化して支払いが困難になっている可能性もあるため注意が必要です。取引先が倒産寸前の状況に陥ってからでは売掛金が回収できない可能性があるため、早い段階から適切な対応を行う必要があります。債権回収は状況や取引先との関係などを考慮して、内容証明の送付や法的手段を含めた複数の手段の中から最適な手段を選択する必要があるため、経験豊富な弁護士に早めに相談することが成功の鍵となります。

2.労働審判への対応は時間との勝負

元社員から残業代未払いやパワハラなどを理由に労働審判の申立てを受けたという場合も、できる限り早めに弁護士に相談する必要があります。労働審判は個別労働紛争の迅速な解決を目的とした制度ですが、基本的には労働者の保護を目的としているため、使用者側である企業が不利な状況に追い込まれるケースも多いです。労働審判の申立てを受けた場合、企業側は第一回の期日に間に合うように必要な証拠を集めて答弁書を作成する必要があるため、時間との戦いになります。答弁書の内容に不備があると、申立人の要求通りに高額な慰謝料の支払いを余儀なくされる場合もあるため、できる限り早く労使問題を得意とする弁護士に相談することが望ましいでしょう。

専門家に相談しない場合のリスク

企業が法的なトラブルを抱えた際、専門家に相談しないで自分達で解決したいと思われる場合もあるかもしれません。しかし、法律のプロに相談しないと予想外の不利益を被る可能性もあるため注意が必要です。専門家に相談しない場合、具体的にどのようなリスクが想定されるのか説明します。

1.手遅れになる場合がある

専門家に相談しない場合のリスクとして一番に挙げられるのは、手遅れになる場合があるということです。例えば、取引先の経営状況が悪化して売掛金が回収不能な状態に陥っている場合、前述した通り、放置せずにできるだけ早い段階から適切な対応を行わないと、売掛金が回収できずに直接的な不利益を被る可能性があります。

また、労働審判の申立てを受けた場合、期日までの短期間に必要な証拠を集めて答弁書を作成する必要がありますが、法律に関する専門知識がないと法的根拠に基づいた答弁書を作成するのは至難の業です。答弁書に不備があると、会社が不利な立場に追い込まれ、申立人の要求通りに高額な慰謝料を支払わなければならない状況に陥る可能性もあります。

2.予防法務が実現できない

日本では、法務部門の設置や顧問弁護士との契約などにより企業法務の強化に積極的に取り組む企業と、「法務は収益に直接影響しないので後回し」という企業の間で法務格差が広がっていると言われています。企業法務の強化に取り組む企業は、予防法務の重要性を認識し、予防法務の強化に取り組んでいます。予防法務というのは、自社が抱える潜在的な法的リスクを洗い出し、リスクを未然に回避する予防策を講じることを意味します。具体的には、債権回収を確実にするための与信管理や売掛金管理の体制を整える、訴訟等のトラブルに備えた契約書の雛形を用意する、社員の不正行為を防止するためのコンプライアンス教育を実施する等が予防法務の基本となります。経済産業省が公開している「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書」には以下のような記載があります。

“企業にとっては、単に法律問題をクリアするだけではなく、その行動が「社会的に受け入れられるか」という視点が一層重要となっている。”
企業として常に社会に認められる行動をするためには、社内のコンプライアンス教育や啓蒙活動を積極的に行い、従業員一人ひとりの意識を高める必要があります。そのためにも、企業法務の専門家に相談しながら、自社の状況に適した予防法務に取り組むことが望ましいでしょう。予防法務に取り組むことは、法的トラブルに巻き込まれる可能性を最小限に抑えて、健全な企業活動の基盤を構築することにつながります。予防法務が実現できていない企業は、ある日突然、従業員や取引先から訴えられるなどの法的トラブルに巻き込まれる可能性もあり、訴訟への対応にかかる支出や慰謝料等の想定外の費用負担を負うリスクもあるのです。さらに、ネットやSNS上で悪評を流されて、取引先や顧客からの信頼を失い、ビジネスに大きな悪影響が及ぶ可能性もあります。

企業法務の相談先を選ぶ際の注意点

企業の法的トラブルに関する相談先を選ぶ際、どのような点に注意して選べばよいのでしょうか。選び方のポイントをご紹介します。

1.弁護士以外の相談先を選ぶ際の注意点

企業が法律絡みの問題に直面して法律の専門家に相談したいと考えた時、「弁護士ではなく、司法書士や行政書士に相談してもいいのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。たしかに、司法書士や行政書士も試験科目に法律科目か入っているので、多少の法律の素養はありますが、原則として、弁護士以外が訴訟事件や和解等の法律事務を取り扱うことは法律で禁止されています(弁護士法第72条)。行政書士や司法書士に、債権回収の際の内容証明郵便の作成等を依頼することは可能ですが、代理人としてその行政書士や司法書士の氏名を書くことは原則としてできませんし、内容証明郵便を送付したあとの相手との交渉や訴訟は、弁護士法第72条に抵触するため、対応することができません。代理人名義で内容証明郵便を送付し、送付後の交渉や訴訟対応を含めた確実な債権回収を行うためには、弁護士に相談して、適切な法的手段を講じてもらう必要があります。司法書士の中で特別な試験に合格した認定司法書士の場合は、140万円までの簡易裁判所における民事事件を取り扱うことが可能ですが、140万円を越える事件を取り扱うことはできません。弁護士にはこのような制約はなく、数百万円から場合によっては数億円単位の事件を取り扱う必要がある企業法務という分野においては、弁護士が最適と言えるでしょう。

2.企業法務の実績も必ず確認すること

企業の法的トラブルに関する相談先を選ぶ際、弁護士資格以外にも必ず確認すべきポイントがあります。それは企業法務の実績が豊富かという点です。単に弁護士資格を持ち、法律の専門知識を持つだけでは企業法務の相談相手としては不十分です。法的なリスクマネジメントはもちろん必要ですが、企業法務の専門家には経営的な視点やビジネスセンスも求められます。例えば、契約書をチェックする際を例に挙げると、法的なリスクを最小限に抑えることだけを至上命題にリーガルチェックに取り組む弁護士がいます。もちろん予防法務の観点からリスクを抑えることは重要です。自社に不利な内容が含まれていないか、自社にとって大切な知的財産権等の保護は十分かなどという観点から時間をかけて一言一句を確認し、詳細なレビューを提出してくる弁護士もいます。しかし、事業は時にスピードが重要です。また、契約相手との関係性もあります。必ずしも全リスクをつぶす詳細なレビューが必要ないという場面もあります。そこで、企業法務の実績が十分にあり、ビジネスに対する理解のある法律事務所を選ぶことが大切です。

まとめ

今回は、企業法務に関する問題の相談先、相談時にかかる費用、企業法務に関する相談事例、早めの相談が必要なケース、相談先を選ぶ際の注意点などについて解説しました。

日頃から顧問弁護士とコミュニケーションをに取り、些細な問題や疑問についても気軽に相談できるような体制及び信頼関係を構築しておけば、ある日突然法的なトラブルに直面した際も安心です。また、顧問弁護士に相談しながら、契約書の作成やチェック、社内規定の整備やコンプライアンス教育を実施することにより、法的トラブルの未然防止策を講じることも可能です。

私たち東京スタートアップ法律事務所は、企業法務のプロとして、最新の法規制はもちろん最新のビジネスモデルについても学び、各企業の良きビジネスパートナーとなれるよう研鑽を重ねています。各企業のニーズや予算に合わせた顧問契約プランも提供しておりますので、企業法務に関するご相談がございましたら、ぜひお気軽にご連絡ください。

代表弁護士中川 浩秀 東京弁護士会
2010年司法試験合格。2011年弁護士登録。弁護士法人東京スタートアップ法律事務所の代表弁護士。同事務所の理念である「Update Japan」を実現するため、日々ベンチャー・スタートアップ法務に取り組んでいる。